新世紀エヴァンゲリオン リナレイさん、本編にIN   作:植村朗

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前回までのあらすじ

ゲンドウ「実験開始」

耐熱プラグスーツ(プシュー ドスコーイ)

シンジ「……」
職員一同「「「「「……」」」」」

「…プフッ」

冬月「デデーン。ゲンドウ、アウトー」
シンジ「裏切ったな、父さん!僕の気持ちを裏切ったなぁ!?」


41、リナレイさん、NERV内の大プールにIN

ここ数日、疑似操縦席(テストプラグ)での戦闘シミュレーション、シンクロテスト、およびハーモニクス・テストに、通常時と膨張式耐熱服(どすこいプラグスーツ)作動時のデータ差分を記録する過程が加わっている。

それだけでもアスカを不機嫌にするには充分だったが、余計に彼女を荒れさせる出来事があった。

 

第壱中学の二年生一同が沖縄へ修学旅行に行くことが決まったものの、

有事対応のためにエヴァパイロット達は本部待機が命ぜられたのである。

 

「せっかく加持さんに買い物つきあってもらったのにぃ!

シンジ、バカナミ、アンタ達もなんとか言ったらどうなの!?」

「いや、僕はなんとなく、こうなる気がしてたから…」

「葛城三佐の言う事にも一理あるしねー。

使徒の出現場所とか時間が解るなら、苦労はしないってさ」

「ハン!これだから日本人は!

()()()()のイエスマンばっかなのよね、情けない!」

 

聞き分けの良いレイとシンジを前に、アスカは言葉も荒々しい。

 

命令を出した葛城ミサト作戦部長本人としても、

修学旅行ぐらい行かせてやりたいのは本心であったが、

使徒という正体不明の敵生体が不定期に攻めてくるこのご時世、

そうも行かないのが現状である。

 

ミサトは少し考えて、改めて三人を見回した。

 

「ごめんね、みんな。せめてNERV本部内の大プールを貸し切りにしてあげるわ。

沖縄の(ちゅ)(うみ)とはいかないけれど、邪魔されず伸び伸び泳げるから、それで我慢してちょうだい」

「潮の匂いも眩しい日差しもない、()()()()()()()()で埋め合わせになるとでも思ってんの!?」

「んー、あたしは泳げるんならどこでもオッケーかな。

沖縄の美味しいものが食べられないのは残念だけど、

ヒカリちゃん達がお土産買ってきてくれるって言ってたし」

「バカナミ!アンタ塩素くさいプールで満足なわけ!?」

「わりと好き。あの塩素消毒(カルキ)のにおい」

「はァ…やっぱアンタ変だわ。仕方ないわね、今回は折れてやるわよ」

 

アスカも何もしないよりは気が紛れると判断したのか、プールへと歩き出す。

女子達のやりとりを前に、シンジは虚空に視線を泳がせていた。

 

「あ、あの、ミサトさん。

僕は次の、物理・化学(リカイチ)のテストが不安なんで、自習したい…んですけど…」

 

第七使徒戦後、発令所にいたNERV職員達の前で泳げない事をカミングアウトしてしまったシンジは歯切れの悪い口ぶりで逃げようとするも、ミサトの楽し気な笑みに身を固まらせた。

 

「シンちゃーん?これは逆に弱点を克服するいい機会じゃないのー?

そ・れ・に♪水着の美少女ふたりに手取り足取り()()()()()()取ってもらって、

泳ぎを教えてもらうなんて、世間の野郎共が羨むシチュエーションよん♪

こーの幸せもの♪」

「なんですか、色んなところって!」

 

素面(シラフ)のはずのミサトだが、シンジを弄るときは常時酔っ払いテンションである。

ミサトの言葉に合わせ、()()()()()()を取るようにレイは両手をワキワキさせており、

シンジは、背すじに冷たいものが走るのを感じた。

 

 

 

泳げない人間が海パン一丁になる、というのは中々に不安なものだ。

屈伸、伸脚、跳躍…。レイの勧めで、シンジは念入りに準備運動する。

 

MAGIにより適切な温度管理をされた温水プールは冷たすぎず、ぬる過ぎず、心地よい。

シンジはまず水中歩行で身体を水に慣らし、それから水泳指導を受ける事になった。

 

 

レイの水着は、彼女の髪色と同じライトブルー単色のパレオ付きビキニ。

休み時間にお喋りしている女子グループ…レイを「アヤナン」だの「レイちょん」だの多彩な仇名で呼ぶ少女達…と一緒に選んだ水着は、健康的な色気で彼女の白肌を際立たせている。

 

アスカの水着もまたビキニタイプだが、こちらは紅白の横縞模様(ストライプ)にフロントファスナーという大胆なデザインで、彼女の抜群のプロポーションを強調していた。

加持リョウジ一尉のエスコートで買いに行ったという話だが、デパートの女性用水着コーナー周辺を連れまわされた加持が気まずい思いをしたのは想像に難くない。

 

パイロット達にとって、見慣れたプラグスーツはボディラインがくっきりと見える代物だし、レイに至ってはシンジと身体の隅々まで見合った仲だが、それでも水着というものは()()

やはり別の刺激があった。

 

「碇くーん、バタ足バタ足~、がんばってー」

「バカシンジー、全然進んでないわよー」

(うぅ…恥ずかしい…)

 

問題は、その刺激的な姿をした彼女達に()()()()()()()()()()()を受けるという二重(ダブル)の恥ずかしさだ。

レイの両手に掴まって、水中で両足をバタつかせるシンジ…

アスカが呆れるのも道理で、シンジの足はまるで推力になっていなかった。

 

「諦めるなよーぅ。出来る出来る気持ちの問題だって!」

「泳ぎの得意な綾波さんならともかく、僕の身体は浮くようには出来てないんだよ…」

「泳げないなんて、ただの自己欺瞞じゃないの。

シンジ、アンタ息を止める前に、ちゃんと吸い込んでる?

水に顔つける前に、肺を膨らませるのよ」

 

シンジは言われるまま、息を深く吸い込む…そして顔を水に浸け…

(…え?あ…あれ!?なんでこんな簡単に!?)

あっさりと()()()()()()自分に驚く。

 

今までは溺れまいと息を止める事ばかりに意識が向いていた。

僅かな空気を守るために、身体の各所に余計な力を入れ、もがいていただけで、

『泳ぐ』レベルまで行っていなかったのだ。

 

非常にゆっくりではあるが、手助け無しに水の中を進むシンジを見て、

レイは我が事のように顔を明るくほころばせ、拍手していた。

 

「大進歩だよ碇くん!アスカっち先生のおかげで泳げるようになったじゃん!」

「気づきさえすれば、後は簡単なもんでしょ?

要は浮力よ、()()。石ころは水に沈むし、風船は水に浮くのと同じってね。

肺に空気を溜めれば、原理は風船と同じ…()()()の初歩よ。

『テストが不安』なんて逃げ口上を使うまでもないわ」

「うん、ありがとう、綾波さん、アスカ。

でも、理科Ⅰのテストが不安だっていうのも確かでさ」

 

礼を向けつつも、シンジは申し訳なさそうに肩を縮こまらせた。

 

シンジとて決して不真面目ではないのだが、

物理・化学における()()()

理論や数式にするのは不得意だったのだ。

 

「次のテスト範囲って、確か熱膨張とかでしょ?

ずいぶん幼稚な事を…としかアタシには思えなかったわ」

「あれは割と単純な話だと思うけどなー。

物は暖めれば膨らんで大きくなるし、冷やせば縮んで小さくなるってヤツよ」

 

アスカが小さくため息をつく。

そしてレイは、自分の眼前に向かい合わせた掌を広げ、狭めを繰り返した。

 

「バカナミー?アンタの小振りな胸も、暖めれば少しは膨らむんじゃないのー?」

「ほーぅ?言う(ゆー)たなアスカっち?

それ思うだけならともかく、口に出したら戦争だろがっ!

よろしいッ、ならば戦争だ!大きさが自慢だというなら、

あたしが暖めて膨らましてくれるわーッ!」

 

アスカが、禁句に触れた瞬間。

レイは彼女の背後に回り、紅白縞の膨らみを揉みしだく。

揉む揉む。もにゅんもにゅん。

 

「きゃあああぁっ!なにすんのよバカナミーッ!アタシにそっちの気はないわよっ!」

絶叫で抗議するアスカを物ともせず、レイはノリノリで両手を動かした。

 

「おぉ~っ?ドイツのお菓子はバームクーヘンみたいな()()()()()ばっかかと思ったら、なかなかどうしてフワッフワな()()()()()()()じゃーないですか!」

「やめなさ、あんっ!そこはダメだってばっ!

シンジッ!アンタの彼女でしょ!どうにかしなさいよ!」

「ご、ごめんアスカ!こうなった綾波さんは、僕にはどうにもできないんだ!

というか、僕も、ヤバいっ…!」

「ちょっとっ!逃げるなバカシンジ!いやぁ!助けてー加持さーん!!」

 

美少女ふたりの痴態から背を向け、慌てて水から飛び出て逃げ出すシンジ。

とある一か所が()()()してしまったゆえの緊急事態(?)であった。




保険ながらガールズラブタグ追記。もにゅんもにゅん。

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