新世紀エヴァンゲリオン リナレイさん、本編にIN 作:植村朗
紀伊半島沖を哨戒していた
先の第五使徒戦で第3新東京市は、復旧した兵装ビルを含めても、迎撃システムの半分以上を失っており、実戦での稼働率はほぼ期待出来ない状態である。
故に、作戦部長・葛城ミサトは上陸直前の目標を水際で迎撃するべく、エヴァンゲリオン3機を
セカンドインパクトの際、津波や地球規模の水位上昇で水没した沿岸部の都市は多かったが、ここ紀伊半島も例に漏れず、かの災害から15年経った今でも、海からは建物の残骸が覗いている。
生々しく爪痕が残った海辺で、パイロット達はエヴァ各機に搭乗。
地上の輸送部隊が運んできた電源ソケットを装着し、フォーメーションを組んだ。
惣流・アスカ・ラングレーの駆るエヴァ弐号機、および綾波レイの零号機は、ソニックグレイブという薙刀状の武器を手に前衛を担当。
碇シンジの初号機は、第五使徒の加粒子砲のダメージが素体そのものに残っており、格闘戦を行うには機動性に不安が残るため、
「NERV松代支部・MAGI2号の分析では、波長パターン青。
目標は、第七使徒と判明したわ。
国連軍との会敵の結果、ビーム攻撃、およびA.T.フィールドを確認。
どちらも出力は第三使徒と同等。またはそれ以下というデータが出てる。
少なくとも、第五使徒のように難攻不落の要塞ではないわね」
ミサトは後方の通信車両より、データをエヴァ各機へと送りながら言葉を付け加えた。
「楽勝じゃん!アタシ一人で充分ね!」
「なんで急に弱いのが出てくるんだろう?何か、裏があるんじゃないかな」
「はァん?ビビッてんの、ヘタレシンジ?
怖いならバカナミと一緒に第3に帰って、バカップル同士で乳繰り合ってれば?」
「なっ、なんだよ、そんな言い方ないだろ!?
僕は油断しない方が良いって言いたいだけで!」
映像回線で噛みつき合うアスカとシンジ。
その間にレイの明るい青髪が、割り込むようにポップする。
「まーまー碇くん、いい機会だしさ。
あ、あとアスカっち、あたしらは
お気遣いは無用だよん♪」
「ちょっ、綾波さん!?」
「あーそうですかー!お熱いわねぇっ
弄るつもりがカウンターを返され、アスカは
明るく惚気るレイと真っ赤なシンジを、ミサトは呆れ半分、苦笑半分に見やる。
「あんた達ねぇ……まぁいいわ。
バンド練習を通じて、忌憚なくモノを言い合える仲になった、としておきましょう!
アスカ!今回は、そのやる気を買って先鋒を務めてもらうわよ!」
「望むところよ!来たわっ!」
第七使徒は、飛沫を上げて海中から姿を現した。
エヴァと同等の大きさ、そして頭のない二足歩行という点では第三使徒と同じだが、
上半身から伸びる両腕は三日月のように一繋がりでシャープな形だ。
胴体と下半身はヒョロっと細長く、ヤジロベエに近い。
金属質な光沢とは裏腹に、その三日月はゴムめいた柔軟性を持っており、
万歳でもするように、上弦と下弦を行ったり来たりした。
文字通りの
足と海水の接触面にA.T.フィールドの疑似波紋を広げ、弐号機は高速で使徒に迫る。
零号機のフィールドでは水を拒絶しきれず、
浅瀬にエヴァの足首を沈めながら、レイは弐号機を追った。
「くぅー、やっぱシンクロ率80パーが境目か!
さすがにあたしにゃ
レイは使徒の胴体に目をやる。
三日月型の腕の中間点には、赤と青の勾玉を横に重ねたような、
その下には、小さな赤い球体が縦に並んでいた。
「アスカっち!この使徒、コアが二つある!」
「だったら一緒に叩ッ斬りゃいいだけよ!」
使徒が陰陽円から放ったビームを跳躍回避し、弐号機はその流れで大上段から
頭の無い三日月の中心から股下まで、見事な唐竹割りだった。
極彩色のゼリーのような切断面が覗いている。
「ふん、あっけないわね。やっぱりアタシ一人で……なにこれ!?」
アスカは目を疑った。二つのコアはそれぞれ右と左に移動し、刃を
ずるり、と脱皮するように、使徒は姿を変えた。
陰陽円はボーリング玉のような三つ穴のついた円に。
そしてコアは一つに変わっていたが、それ以外は攻撃前と同じ姿の使徒が
「くっ!……えぇっ!?」
アスカは後方に跳んで距離を取ろうとし、バランスを崩す。
相手のA.T.フィールドを中和した時、
赤い機体を後ろから抱き止めるように辛うじて支えたのは、追いついた零号機。
もう片手で突き出したグレイブを、分裂した片方の使徒に突き立てて足止めする。
「バカナミッ!?助けろなんて言ってないわよ!」
「こら!強がってる場合と違うぞアスカっち!複数には複数で……ヤバッ!?」
使徒のもう片方がエヴァ二体に飛びかかる。三日月腕の先端に光るのは、鋭い爪。
「目標をセンターに入れて……スイッチ!」
後衛にいたシンジはスコープ越しにもう一体を睨みつけ、トリガーを引いた。
初号機の
爪の攻撃はギリギリで反らされ、その隙を見て零号機と弐号機は後退した。
薬莢を排出し、シンジはもう一度銃声を響かせたが、
使徒の胸にある赤い光球は、ヒビを見る間に修復していく。
「ミサトさん!コアを直撃してるはずなのに効いてないっ!奴の弱点はどこですか!?」
「いま解析中よ!三人とも、なんとか持たせて!」
「もーっ!なんなのよコイツ!こんなんインチキッ!」
「
不安を交錯させるNERVの面々。
戦いの行方に、暗雲が立ち込めていた。