新世紀エヴァンゲリオン リナレイさん、本編にIN   作:植村朗

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TV版第一話Aパートほぼそのまんま
時間はほとんど進んでません(´・ω・`)


2、シンジくん、第3新東京市にIN

 時は少々遡る。

 

「公衆電話もダメか…緊急時でも携帯よりは繋がりやすいって聞いたのに」

 

回線不通を知らせる抑揚のない音声に少年…碇シンジは受話器を置き、溜め息をつく。

父の職場にも、迎えに来るという女性とも連絡は取れそうにない。

 

父、碇ゲンドウからの手紙には、一言『来い』とだけ書かれていた。

うだるような暑さの第3新東京市に到着したまでは良かったが、

突如発令された特別非常事態宣言に、全交通機関が麻痺。

 

モノレール、バス、タクシー…あらゆるものが動かねば行くも戻るも立ち行かず、

途方にくれたシンジは、手紙に同封されていた一枚の写真を取り出した。

 

『シンちゃん江☆ 迎えに行くから待っててネ☆』

 

マジックで書かれたメッセージの下、グラビアのように胸の谷間を強調し、

ウインクする妙齢の美女は、父の部下だという。

 

「待ち合わせは無理か。仕方ない、シェルターに行こう」

シンジは自分に言い聞かせるように、周囲を見回し…ふと、誰かの視線を感じた。

 

道路の真ん中に、いつの間にか、透き通った白磁肌の美しい少女がいた。

まるで幻想世界(ファンタジー)の住人のように淡い水色の髪、赤い瞳。

灰色のプリーツスカートに、クリーム色の袖なしベストから

赤いネクタイと白いシャツを覗かせる、シンジと同世代と思われる女の子…

 

 

「あ!やっほぉーい!」

 

 

 

彼女は笑顔を浮かべ、底抜けに明るく、シンジに手を振っていた。

 

「へ!?え、ぼ、僕?」

 

まったく面識のない美少女の行動に、間抜けな声をあげてしまうシンジ。

 

 

時を同じくして、さえずりと羽ばたきの合唱を残して飛び去る雀の群れに、

シンジは気を取られ、視線を一瞬、空に向ける。彼が目を戻した時…

 

「あ、あれ!?」

 

少女は、どこにもいなかった。…静寂は、数秒だけ。

 

 

 

轟音。 

 

 

そして 

 

 

振動。 

 

 

「うわぁっ!」

 

民家のシャッターがガタガタと震え、電線が激しく波打った。

シンジは咄嗟に両耳を塞ぎ…ギュッと閉じていた目を恐る恐る開く…

 

「あ、あ、ああぁ…!」

 

その轟音は足音。その振動は重量。

 

街中を歩く首のない巨人が、それを取り囲むVTOL戦闘機の編隊が…

怯えるシンジの眼に映った。

 

 

【挿絵表示】

 

 

そして、時は交わる。

国連の戦闘機達が、首なし巨人…使徒に薙ぎ倒される()の時に。

 

 

戦闘機のうち一機は、シンジの前に堕ちてきたのだ。

 

(死ぬ!)

 

思考と身体が凍り付いたシンジを救ったのは、

その車体で爆発を遮ったスポーツ車…青のアルピーヌ・ルノー。

 

「おまたせっ!緊急事態だから、乱暴なのは勘弁してね!」

「のわぁっ!?」

 

そして、空け放った運転席からパワフルに腕を伸ばして

シンジを()()()()、助手席へと()()()()()紺のノースリーブにサングラスの女。

 

さすがにグラビア水着スタイルではなかったが、写真に映っていた彼女。

不敵な笑みを浮かべる美女、NERV作戦部長、葛城ミサト一尉その人だった。

 

ミサトはギアをバックに入れ、使徒に踏みつぶされそうになるのを回避。

車を反転させてギアを戻し、猛スピードでその場を離脱していく…

 

「すいません、助かりました、葛城さん」

「ミサト、でいいわよ。碇シンジくん」

凄まじいスピードで流れていく風景を見ながら、二人は言葉を交わした。

 

「ミサトさん、この街はなんなんですか?さっきの化け物といい、幽霊といい…」

「あの化け物が私達の敵よ。『使徒』と呼ばれているけど、正体は解らない。

幽霊の方は知らないけど…なに、そんなのいたの?『うらめしやー』って?」

「古いですよその表現。セカンドインパクト世代ですね」

「うぐっ、可愛い顔して遠慮ないわね」

世代格差(ジェネレーションギャップ)を指摘され、ミサトは呻く。

 

「…『やっほー』って、手を振ってました」

「フレンドリーな幽霊ねぇ。見間違いや気のせいならいいけど、

逃げ遅れた市民の可能性があるから保安部には連絡しておかないと。

外見を教えてくれる?」

「女の子だったと思うんですけど、すぐに消えちゃったから詳しくは…

…あれ、ミサトさん。飛行機が化け物から離れてってますよ?」

 

バックミラーに映る光景に気づくシンジ。ミサトは顔色を変え、更にスピードを上げる。

 

「ちょ、ちょっとミサトさん!?速すぎ!」

「チンタラ安全運転してたら私ら焼け死ぬわよ!

国連上層部(うえ)の頭でっかち共め!NN(エヌツー)地雷を使う気だわ!

シンジくん、しっかり掴まってて!」

 

ミサトが毒づいた直後、使徒が巨大な火柱に包まれる…

リアウインドウがひび割れ、突きあげるような衝撃波が二人の乗るルノーを襲った。

 

 

同時刻

 

「っ何?地震!?」

 

ケージに向かう途中の廊下で、突然起こった揺れ。

綾波レイを支えていた看護師は、自分と患者が倒れないよう、足を踏ん張った。

 

「違う、国連軍の爆弾だよ。…ったく偉い人はせっかちだねー。

あたしは怪我人なんだから頭痛に響くっつーの。急ごう、看護婦さん」

「綾波さん…動じないわね」

 

恐怖をまるで感じさせないレイの言葉。

(性格が完全に変わったように見えて、根本は残っているかもね)

看護師はそんな事を思いながら、レイと共にエレベーターへと乗り込んだ。

 




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