新世紀エヴァンゲリオン リナレイさん、本編にIN 作:植村朗
アスカ「やるな(ガシッ)」
シンジ「お前もな(ガシッ)」
トウジ「おめでとさん!(パチパチ)」
ケンスケ「めでたいなぁ!(パチパチ)」
レイ「( ゚∀゚)o彡゜おっぱい!おっぱい!」
委員長「えっ、なにこれは(ドン引き)」
今となっては日本から夏以外の季節は失われてしまったが、
第3新東京市・第壱中学校では
2年A組出席番号1番・相田ケンスケは、当イベントに向けて熱意を燃やしていた。
エヴァのパイロット3名を擁するこのクラスで、
『地球防衛バンド』なる活動を行うのが彼の望みだった。
「と、いう事で…俺の歌を聴けェ~~ッ!」
元より多趣味なケンスケは音楽関係にも手を伸ばしており、
放課後の空き教室に
自ら作詞・作曲した楽曲を、スピーカーから流しはじめる。
パソコンのフリー音楽作成ソフトとはいえ、
音はなかなかリアルなもので、刻まれる金属質なギターサウンドと、
それに被さるような
セカンドインパクト前、つまり彼らが生まれる前のロボットアニメ…
リアルタイムではなく、
「おっ、悪くない感じやないか」
「ふふっ、なんだか懐かしい曲調ね」
「…ガキ臭い。アタシの好みじゃないわ」
ケンスケの友人である鈴原トウジ、
そしてクラス委員長・洞木ヒカリの感想は、まず好印象。
一方、惣流・アスカ・ラングレーは『子供っぽさ』を一蹴した。
ジャンルがジャンルだけに、評価が割れるのは致し方ない所である。
仮歌はケンスケ本人が歌っている。
特段、美声というわけではないが、喋る時のハイテンションが抑えられ、
丁寧に歌い上げるその歌は、中々に聴きごたえがあるものだ。
吟味するように静かに聞き入っていた綾波レイと碇シンジは、
歌詞の端々に聞こえる単語に、時折眉を動かす…。
『エヴァ』の名はほぼ知れ渡ってしまっているから仕方ないとして。
その正式名称…出撃時の号令…組織名…武器名…そして…
彼らパイロットが、使徒との戦いで聞き慣れたワード。
「ケンスケ…これ、まずいよ。なんでキミがA.T.フィールドまで知ってるのさ」
「ちょっとパパのIDをちょろまかして…」
シンジに問われ、サラリとケンスケは答えた。
NERVデータベースへの不正アクセス…
レイは微笑んでいた。目は…笑っていなかった。
「いい曲だ。感動的だな」
「おぉ、綾波!解ってくれるか…」
「だが無意味だ」
「ギャアアアアッ!?」
次の瞬間、レイの手がケンスケの顔をガッチリ捉えた。
「おっ
「ゆ、指ィーッ!指がコメカミに刺さってる!痛い痛いイタタタ!
も、もう少し手心というかっ!なんというかっ!ア゛ァ゛ァァアッ!?」
「『痛くなければ覚えませぬ』っていうだろーがっ!てゆーか覚えろ!」
シェルター脱走事件に続く大問題に、さすがのレイもブチ切れであった。
ギリギリギリギリ…それはもう締まる締まる。容赦なく締まる。
「このアホメガネ!あんたバカァ!?
予想より遥かに洒落になってない事やらかしてるじゃないの!」
「ごめんなさい相田くん。私じゃフォローしきれないわ」
アスカもヒカリも怒るやら呆れるやら、といった所。
シンジは携帯電話を取り出し、上司兼保護者の番号を呼び出した。
「…ひとまず、ミサトさんに相談してみるよ。
いくら友達でも、これは黙ってるわけにはいかないし。
出来るだけ便宜は図ってもらえるようにお願いするけど…」
「地球防衛バンド、始まる前に頓挫しそうやのぉ…」
トウジは多難な前途を想い、窓の外を見やる。
「ふぅゥ―ッ!がるるるる…」
「……」
獣のように唸るレイと、コメカミからプスプスと煙を上げて横たわるケンスケから、目を反らすように…。
挿入歌:奇跡の戦士エヴァンゲリオン(作詞作曲・相田ケンスケ)
隠れた名曲です