新世紀エヴァンゲリオン リナレイさん、本編にIN 作:植村朗
「えー…南極に大質量の隕石が落下し…
これが世にいう…セカンドインパクトでありまして…その後…」
ホームルームが終わり、退屈な四時間が始まった。
隙あらば授業中にセカンドインパクトの苦労話を挟む老教師がその原因である。
何度も繰り返されるネブカワ担任の話に
それ以上に惣流・アスカ・ラングレーを疲弊させたのがクラスメート達だった。
授業と授業の合間…休み時間のたびに集まってきては、
やれ「趣味は何?」だの、やれ「ドイツで彼氏は居たのか」だの質問攻めだ。
日本語ペラペラの外国人…それもとびきりの美少女とくれば嫌でも目を引くもので、
チヤホヤされるのは悪い気はしないが、度を過ぎればアスカとて苦痛になってくる。
「アスカちゃーん、オレと付き合わなーい?」
「っせぇい!」
「おグほォッ!?」
ヘラヘラ笑いながら近づく軽薄な男子生徒に、ついにアスカの臨界点が振り切れ、
アスカの猫被りは結局ひっぺがされ、皆が
「アスカ様、踏んでください」
「『あんたバカァ!?』はマジで言われたいです」
と真顔で言い放つ
さすがのアスカもドン引きし、「ひっ」と息を飲んだ時…
「不潔よっ!あなた達いい加減にしなさい!惣流さんが困ってるでしょう!?」
2-Aのクラス委員長・洞木ヒカリの叫びに、ようやく人垣は散っていく。
二つ縛りのお下げにソバカス顔…素朴な顔立ちではあるものの、
意思の強さと優しさを併せ持つヒカリの笑顔に、アスカは救われた。
…
……
………
「いやぁモテモテだねぇアスカっち~♪」
「うっさいバカナミ…やっぱ中学校にいるのは、バカとガキだけだわ…
NERVの訓練よりも精神的に疲れるってどういう事よ…」
昼休み。アスカは机にぐったりと突っ伏していた。憎まれ口にも覇気がない。
顔だけ横に向け、笑顔でからかう綾波レイを恨めし気に見る。
「クラスでマトモなの、ヒカリぐらいしかいないじゃない…
この分じゃ期待は出来ないわね。…で、どこ行ったのよ『アイツ』?」
「誰が?」
「あんたバカァ?
億劫そうに身体を起こすアスカ。
出席の時に確認した少年の席には、今は誰もいない。
顎に指先を当て、レイは思案するように天井を見た。
「んーと…多分ね…」
………
……
…
校舎屋上。
「猫も杓子も惣流、惣流…。エラい人気やのぉホンマ」
「あれだけの容姿だ。被写体としても映えそうだしな。
映像には苛烈な性格が出ないのが幸いだね。ぬふふふ…写真、売れるぞぉ~?」
購買部のクリームパンを牛乳で喉に流し込み、
鈴原トウジはレイと同じ感想を口にする。
一方、相田ケンスケはカメラを片手にゼリー飲料を啜り、邪な笑いを浮かべた。
「ケンスケ…せめて惣流さんの許可は取りなよ、トラブルになるよ?」
「解ってないなぁシンジ。身構えてない自然な表情がいいんじゃないか!」
学校では別の意味の
しかし『3バカの良心』でもある碇シンジは、完食した自作の弁当を片づけながら、
いかにもな理由をつけて盗撮を正当化しようとする悪友に溜め息をついた。
「やっぱここにいた!おーい!」
「……」
男所帯に割り込んだのは、ぶんぶんと手を振る青髪の少女と、
仏頂面をした話題の人物…
「お、綾波に惣流やないか」
「おぉっ!?噂をすれば!?」
「
「なんやとぉ!?」
「イヤーンな感じィ!」
憤ったり嘆いたり忙しい男二人をスルーし、ジリジリと歩を進めるアスカ。
ただならぬ雰囲気を察したシンジは後ずさる…。
「あ、あの…惣流…さん?」
「ふぅーん?」
距離は二、三歩、といったところか。
値踏みするようにシンジを睨みあげていたアスカは…突然、足払いを放った。
シンジは顔に緊張を走らせ、腰を落として膝を軽く曲げる。
ガッ…!鈍い打撃音と共に、アスカの蹴り足を
「ハッ!冴えない顔してる割には、やるじゃないの。
無警戒だったらスッ転ばせてやるところだったわ」
「なにするんだよっ!?」
「一緒に戦うパイロットにふさわしいか、試してやるってのよ。
セカンドチルドレンのアタシがね!」
手荒い
「ちゅうことは…あの女…」
「惣流も、エヴァのパイロット!?凄い、凄すぎるっ!」
唐突に始まった生身のバトルと、二人の間で交わされた言葉に、
トウジは茫然、ケンスケは興奮気味にカメラを構える。
「おーおー、アスカっちは中々過激な親愛表現をなさるねぇ。
さて、碇くん。どうしのぐ?」
ニヤリと笑ったレイは彼らを止める事無く、傍観者に徹するように腕を組んだ。
新劇であっさり喰らってた足払いはガードしました。
シンちゃんは名目上だけじゃなく、
綾波道場で格闘訓練はちゃんとやってた設定です。
ベッドの上だけじゃなく、一応。
次回、ステゴロ手合せ回の予定。