新世紀エヴァンゲリオン リナレイさん、本編にIN   作:植村朗

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30、アスカさん、学校にIN

第3新東京市・第壱中学校。

2年A組、朝のホームルーム。

 

「惣流・アスカ・ラングレーです。よろしく!」

 

アルファベットで黒板に書かれた彼女の名。

 

ふわり、と赤毛を揺らし、振り返った転校生の美貌に、

クラスじゅうの目が釘付けになった。

 

「「「おぉぉ…」」」

「あの子、ハーフ?」「クォーターだってさ」

「超可愛い…激マブじゃん!」「スタイルいいなー。うらやましー」

 

 

(『和を(もっ)(たっと)しと為す』…かぁ。

ふふん、ミサトの言ってた事はよく解らないけど、

この称賛と羨望の視線は悪くないわね)

 

上官たる作戦部長・葛城ミサトの言葉を反芻しつつ、

笑顔の下に本音を隠しながら、アスカは胸を張る。

 

ドイツで大学まで出たにもかかわらず、中学校(ジュニアハイ)に通う事になった彼女。

子供(ガキ)にしか見えない同世代の生徒達や、今更な基礎学問…

日本の『義務教育』というシステムに、初めこそ文句をつけていたが、

教室を満たす声に上機嫌になる辺りは、アスカもまた年相応の子供であった。

 

だが、教室の喧騒に混じった()()()()()()()()が、アスカの動きを止める。

 

「やっふー、アスカっちー♪」

「バッ…んぐっ…!?」

 

アスカの視線の先には、先日()()()()()()濃い出会い方をした綾波レイがいた。

窓側の席で、手のひらをグーパーグーパーする青髪の少女に、

アスカは喉から出かけた仇名(バカナミ)を飲み込む。

クラスメート達の前でせっかく被った猫が、危うく引っ(ぺが)される所だった。

 

「あー…惣流さんの席はー…そうですね…

いま、手を振っているー…綾波さんの隣がー…空いてますのでー…

そこでーお願いします…」

「ハ、ハイ…」

 

担任の老教師、ネブカワ先生の間延びした声に促され、

アスカは笑顔を引きつらせて席へと向かった。

 

「よ、よろしくね、綾波さん!

ってっ…なんでアンタが同じクラスなのよぉッ!?

えー、いいじゃーん?仲良くしようよー

 

余所行きの挨拶の後、小声で()に戻るアスカ。

同じく小声で返すレイに「ぐっ」と喉を鳴らし、彼女は憮然として席についた。

 

この先、共同戦線を張る関係上、パイロット同士で親睦を深めておく事はアスカとしても(やぶさ)かではないが…

レイの何とも言えない()()は、どうにも掴みどころがなかった。

 

(やりにくいわね…)

 

戸惑いの中、惣流・アスカ・ラングレーの日本での学校生活は始まった。


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