新世紀エヴァンゲリオン リナレイさん、本編にIN   作:植村朗

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28、アスカさん&リナレイさん、弐号機にIN

綾波レイ、惣流・アスカ・ラングレーの両チルドレンは

兵士の一人に運転手役を頼み、小型ボートで別の艦へ移っていた。

 

冷却用のLCLに満たされたコンテナの中、

ドラム缶に板を張った(イカダ)を足場に、奥へと進む二人…。

アスカが『何やら大きな塊』に掛かったシートをめくってみせる。

 

「へぇー?赤いんだねーエヴァ弐号機は。お目々は4つあるし」

「違うのは、カラーリングやフォルムだけじゃないわ。

これこそが世界初、実戦用に作られた本物のエヴァンゲリオンなの。

正式タイプのね!」

 

目をパチクリさせたレイを尻目に、

アスカは弐号機の赤く大きな頭部に、身軽に駆け上がっていき

振り返ってレイを見下ろしながら、芝居がかった動作で左腕を広げた。

 

「しょせん零号機と初号機は、開発過程のプロトタイプとテストタイプ…

アンタみたいなアーパー女や、ド素人のサードチルドレンに、

いきなりシンクロしたのが良い証拠よ!」

「ふぅーん、へーぇ、ほぉーぅ?」

 

レイは棒読み気味にアスカの言葉を流した後、不機嫌そうに口を尖らせる。

相手が少しでも悔しがる姿を期待したアスカだったが、

小馬鹿にするようなレイの反応に、青い瞳を鋭くした。

 

「なァによバカナミ!喧嘩売る気!?」

「愛機を自慢するのも、あたしがどーこー言われるのも、まぁ良いとしよう。

『バカナミ』ってのも、アスカっちなりの親しみ込めた愛称だと、笑って受け止めよう。

でも、この場にいない碇くんが貶さ(ディスら)れるのは、なんかヤダ」

 

ぷー。両頬を風船のように膨らませたレイに、アスカは「ケッ!」と吐き捨てた。

 

「はいはい碇くん碇くん!さぞかし素敵な王子様なんでしょうねぇ!?

ったく、息するように惚気(ノロケ)てんじゃないわよ…ッ!?」

「おっ…!?」

 

アスカの言葉は、唐突な揺れに遮られた。

レイは足を肩幅に開き、腰を落として体勢を安定させる。

 

「水中衝撃波だわ!」

 

アスカの顔に緊張が走る。

水中衝撃波…すなわち、近くの海域で爆発が起こった事を意味していた。

レイの胸元からコール音が響き、取り出したタブレット端末のスピーカーをONにする。

 

「ハイ、こちら綾波~」

『こちら葛城!レイ、今どこ!?』

「いま別の艦…アスカっち!ここ、名前なんだっけ?」

「オセローよ!輸送艦オセロー!」

『アスカ!?オセローって事は、二人とも弐号機のそばにいるのね?

いま、艦隊が正体不明の敵の攻撃を受けているの。おそらくは…使徒よ!

エヴァの起動、出来る!?』

 

端末から聞こえる葛城ミサトの声に、アスカが獰猛な笑みを浮かべた。

 

「是非もないわ!チャンスが向こうから来てくれたって奴じゃないの!」

『頼もしいわね。ではレイと二人で乗り込んで!個別に避難するより危険が少ないわ。

シンクロ率にも致命的な問題は出ないはずよ!』

「バカナミも?フン、まぁいいわ。予備のプラグスーツはあるし、

どの道、特等席でアタシの華麗な操縦を見せてやるつもりだったから」

「タンデムかー。最初の使徒戦以来だね」

 

出撃許可を取る手間が省けたのは、幸運だったと言えるだろう。

かくして作戦部長とパイロットとのすり合わせが済み、迎撃と相成った。

 

………

 

……

 

 

コンテナの隅で、アスカはバッグから真紅のプラグスーツを二着取り出した。

素肌に直接フィットさせる関係上、二人とも一度全裸になる必要があるわけだが、

女二人では恥ずかしがる事もなく、手早くポイポイと脱いでいく。

 

レイのプロポーションは均整が取れており、胸も決して小さいわけではないのだが、

いざ比べてみるとそこは人種差。アスカの身体は14歳とは思えぬほどにメリハリがあった。

 

「…体型()()大和撫子(つつましやか)ね、アンタ」

「なんだとーぅ?その乳袋にはドイツビールでも詰まってんのかっ!」

「何ですってぇ!?」

 

…そんな()()()()会話を交えつつ、ペアルックに身を包んだ二人は、

弐号機のエントリープラグへと入っていく。

まずはアスカ。彼女の膝の上にレイ。第三使徒戦と同じシフトだ。

 

LCL 満水。(LCL Fullung.)

起動開始。(Anfang der Bewegung.)

神経接続開始。(Anfang des Nerven anschlusees.)

圧着ロック解除。(Ausloses von links-Kleidung. )

 

シンクロ開始(Synchro-start.)

 

アスカが音声による起動シークエンスを進めている最中、

急にビープ音が鳴り、プラグの中は「FEHLER」という赤文字に満たされた。

 

「ねぇ、弐号機ちゃんが『○ェラ』とか言ってんですけど」

()()()!卑猥なこと言ってんじゃないわよエロナミッ!

アンタが日本語で考えてるから、思考ノイズが入ったの!

ちゃんとドイツ語で考えなさいよね!」

「ドイツ語ー?アスカっちは無茶ぶり女王だねー?

…クーゲルシュライバァーッ!!

「あんたバカァ!?もういいわよ!

思考言語切り替え!日本語をベーシックに!」

 

羞恥やら怒りやらで顔を弐号機カラーにしながら、アスカはヤケ気味に叫んだ。

ちなみにレイが言った「クーゲルシュライバー」とは「ボールペン」。

『意味は大したことないのにドイツ語にすると超カッコよく聞こえる言葉』の代表格である。

 

「エヴァンゲリオン弐号機、起動!」

 

アスカの言葉に、赤い巨体が体を起こす。

エヴァンゲリオンによる、初の海戦が行われようとしていた。




「クーゲルシュライバー」って言いたかっただけの回。
次回お魚使徒戦の予定。

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