新世紀エヴァンゲリオン リナレイさん、本編にIN   作:植村朗

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前回までのあらすじ

レイ「アスカっちーアスカっちー」
アスカ「その呼び方やめぇや!」
レイ「めんごめんごー!でさーアスカっちー」
アスカ「ガァーッ!!w(゜皿゜#)w」


26、リナレイさん、お船のブリッジにIN

国連軍正規空母『オーバー・ザ・レインボー』の上。

 

エヴァ弐号機パイロット、惣流・アスカ・ラングレーはブリッジの扉を開け、

NERV本部からの来客を中に招き入れた。

 

彼女達を迎えたのはアッシュグレーの口髭を蓄えた艦長…。

50代後半という年齢ながら、白のブラウスから覗く腕は見事な筋肉を湛えており、

いかにも歴戦の将校、といった風情の男である。

艦長の椅子の横には、彼より一回り年下…40代と思われる副長が立っていた。

 

白帽の下から値踏みするがごとく、艦長の眼が光る。

軍服に身を包んだNERV作戦部長・葛城ミサト一尉は、敬礼を向けた。

 

お会い出来て光栄ですわ、艦長(I'm glad to meet you,Sir.)

我が艦へようこそ(Welcome to"OVER THE RAINBOW")葛城くん(Ms.Katsuragi)

 

挨拶もそこそこに、艦長はミサトに伴われた少女の姿に目を奪われ、言葉を失った。

青い髪、赤の瞳…妖精を思わせるその非現実的な容姿…綾波レイは、可憐に小首を傾げる。

 

輸送ヘリ(Mil55-D)の中でミサトがレイに施した自然な感じの化粧(ナチュラルメイク)は、意外な程の効果を上げていた。

 

レイは一歩進み出て、ぺこり、と頭を下げる。

 

「んー、と…はろー!

マイネーミーズ レイ・アヤナミ!

ザ・パイロット オブ エヴァンゲリオン・ゼロ!

ナイス トゥー ミーチュー キャプテン!」

 

レイの英語の成績は悪くない。むしろテストでは高得点をマークしている。

が、筆記は出来ても英語を喋るのは片言、という日本人は多いもので、レイはそのタイプだった。

 

留学経験者であるミサトや英語圏の人間(ネイティブスピーカー)である艦長…

そして飛び級で大学を卒業し、日・独・英の三ヵ国語を滑らかに操るアスカに比べれば、

レイの英語は(元気な声ではあるものの)明らかにたどたどしい。だが…

 

こちらこそ(Nice too meet you,too)綾波嬢(Miss Ayanami.)

…ここから先は日本語で構わんよ。私は親日家なものでな」

「あ、ありがとーございまーす!さんきゅーべりーまっち!」

 

不慣れなりに懸命な姿が、逆に艦長の表情を緩めることになった。

屈強な『海の男』の気づかいに、レイは日本語と片言英語を混ぜ、明るく笑う。

 

「ふふっ、私達(ネルフ)の秘蔵っ子…せっかくの美少女なんだし、第一印象は大事よねん♪」

「あざといわねぇミサト…」

 

アスカは旧友の呟きに、呆れ気味の小声で突っ込んだ。

 

………

 

……

 

 

ドイツのヴィルヘルムスハーフェンより航行してきた国連軍…

 

太平洋艦隊の任務は、エヴァンゲリオン弐号機の輸送、

およびそのパイロットであるアスカの護衛である。

その話題が出た時、彼女は得意げに胸を張っていた。

 

一方、ミサト達がヘリで運んできたのは、エヴァの非常用電源ソケット。

レイを相手に一時は心を解した艦長だったが、

エヴァ弐号機受領書へのサインは渋った。

 

「上層議会がエヴァンゲリオンに重きを置いている事は、私達も承知している。

しかし、あの人形を海上で起動させる要請を受けてはおらん。

引き渡しは、新横須賀港に陸揚げするまでは待って頂こう。

 

フン…宅配屋紛いの任務は、我が軍としては不本意ではあるがな。

こういった仕事が増えたのは、いつからだったかな、副長?」

「5年前…()()()が結成された頃からだと記憶しています」

 

その某組織(ネルフ)の超法規的措置があるとはいえ、

軍人たるもの、中学生(コドモ)達を矢面に立たせるのは抵抗がある。

『海の上は我らの管轄』…そういったプライドというものも然り。

ゆえに、皮肉の一つも出ようというものだ。

 

「正直な話、今回は過剰とも言える護衛だ。太平洋艦隊勢ぞろいだからな」

 

艦長の言い草に眉をしかめたミサト。

三度の使徒戦を経験した彼女からすれば、

エヴァの重要度、および使徒の危険度を鑑みて、

これでも足りない位だ、と言葉が出そうになる。

 

が、レイに袖を掴まれ、

「葛城一尉、深呼吸深呼吸」

と囁かれ…我を取り戻した。

 

吸って…吐く。それだけで、心の余裕が生まれる。

(…これじゃ、どっちが年長者か解らないわね)

自嘲的に苦笑しながらも、ミサトは同行者の少女に感謝した。

 

「…セカンドインパクト後の混乱・紛争の終息は、

(ひとえ)に国連軍の皆様のご活躍・ご尽力があってのこと。

わたくしも、それは重々承知しております。

事実、この大艦隊ならば、テロリストの海賊行為程度を相手取るには、

充分すぎる戦力でしょう」

「Ms.葛城。それが解っているなら…」

「ですが」

 

ミサトは一度彼らのプライドを擽った後、続く言葉を遮った。

 

「エヴァンゲリオンでA.T.フィールドを中和しない限り、

あの敵生体…使徒に生半可な通常攻撃は無効です。

NN級(エヌツークラス)の攻撃手段があるなら、

一時的な足止めは出来るでしょう。しかし、()()()()です」

「…!!」

 

艦隊の持つ魚雷やミサイルに、そんな威力はない。

仮に有ったとしても、強大な衝撃を伴うNN兵器を海上で使えば、

艦隊を丸々巻き込みかねない大惨事だ。おいそれとは使えない。

 

それが足止め程度にしかならない、となれば…艦長と副長は、息を飲んだ。

 

「逆に言えば、A.T.フィールドを中和することで、

通常兵器でもダメージが見込めるのは、先の使徒戦でも確認しています。

()()()()()()の際には、ご協力をお願いしますわ、艦長」

「…解った。葛城くん、書類を渡したまえ」

 

NERVと国連軍の共闘の必要性を説かれ、ようやく折れた艦長はペンを手に取った。

ミサトは活路をくれたレイにウインクして見せ、レイは親指立て(サムズアップ)を返す。

 

「よ、葛城。相変わらず凛々しいねぇ?」

「あっ、加持先輩!」

「う゛ぇ゛っ!?」

「加持くん!君をブリッジに招待した覚えはないぞ!」

 

割り込んだ男の声。

アスカは顔をほころばせ…そしてミサトは、先程までの凛とした言葉とは逆の、濁った呻きを上げた。

艦長の批難と同時に、レイはそちらを振り返る。

 

「これは失礼、艦長。お嬢様がたをお茶に誘ったら、早々に退散させて頂きますよ」

 

加持と呼ばれたその男…年の頃は三十前後…ミサトと同世代か。

不精ヒゲに後ろ縛りの髪…整ってはいるが、その顔は「イケメン」というには少々軽薄にニヤついていた。


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