新世紀エヴァンゲリオン リナレイさん、本編にIN 作:植村朗
レイ「アスカっちーアスカっちー」
アスカ「その呼び方やめぇや!」
レイ「めんごめんごー!でさーアスカっちー」
アスカ「ガァーッ!!w(゜皿゜#)w」
国連軍正規空母『オーバー・ザ・レインボー』の上。
エヴァ弐号機パイロット、惣流・アスカ・ラングレーはブリッジの扉を開け、
NERV本部からの来客を中に招き入れた。
彼女達を迎えたのはアッシュグレーの口髭を蓄えた艦長…。
50代後半という年齢ながら、白のブラウスから覗く腕は見事な筋肉を湛えており、
いかにも歴戦の将校、といった風情の男である。
艦長の椅子の横には、彼より一回り年下…40代と思われる副長が立っていた。
白帽の下から値踏みするがごとく、艦長の眼が光る。
軍服に身を包んだNERV作戦部長・葛城ミサト一尉は、敬礼を向けた。
「
「
挨拶もそこそこに、艦長はミサトに伴われた少女の姿に目を奪われ、言葉を失った。
青い髪、赤の瞳…妖精を思わせるその非現実的な容姿…綾波レイは、可憐に小首を傾げる。
…
レイは一歩進み出て、ぺこり、と頭を下げる。
「んー、と…はろー!
マイネーミーズ レイ・アヤナミ!
ザ・パイロット オブ エヴァンゲリオン・ゼロ!
ナイス トゥー ミーチュー キャプテン!」
レイの英語の成績は悪くない。むしろテストでは高得点をマークしている。
が、筆記は出来ても英語を喋るのは片言、という日本人は多いもので、レイはそのタイプだった。
留学経験者であるミサトや
そして飛び級で大学を卒業し、日・独・英の三ヵ国語を滑らかに操るアスカに比べれば、
レイの英語は(元気な声ではあるものの)明らかにたどたどしい。だが…
「
…ここから先は日本語で構わんよ。私は親日家なものでな」
「あ、ありがとーございまーす!さんきゅーべりーまっち!」
不慣れなりに懸命な姿が、逆に艦長の表情を緩めることになった。
屈強な『海の男』の気づかいに、レイは日本語と片言英語を混ぜ、明るく笑う。
「ふふっ、
「あざといわねぇミサト…」
アスカは旧友の呟きに、呆れ気味の小声で突っ込んだ。
………
……
…
ドイツのヴィルヘルムスハーフェンより航行してきた国連軍…
太平洋艦隊の任務は、エヴァンゲリオン弐号機の輸送、
およびそのパイロットであるアスカの護衛である。
その話題が出た時、彼女は得意げに胸を張っていた。
一方、ミサト達がヘリで運んできたのは、エヴァの非常用電源ソケット。
レイを相手に一時は心を解した艦長だったが、
エヴァ弐号機受領書へのサインは渋った。
「上層議会がエヴァンゲリオンに重きを置いている事は、私達も承知している。
しかし、あの人形を海上で起動させる要請を受けてはおらん。
引き渡しは、新横須賀港に陸揚げするまでは待って頂こう。
フン…宅配屋紛いの任務は、我が軍としては不本意ではあるがな。
こういった仕事が増えたのは、いつからだったかな、副長?」
「5年前…
その
軍人たるもの、
『海の上は我らの管轄』…そういったプライドというものも然り。
ゆえに、皮肉の一つも出ようというものだ。
「正直な話、今回は過剰とも言える護衛だ。太平洋艦隊勢ぞろいだからな」
艦長の言い草に眉をしかめたミサト。
三度の使徒戦を経験した彼女からすれば、
エヴァの重要度、および使徒の危険度を鑑みて、
これでも足りない位だ、と言葉が出そうになる。
が、レイに袖を掴まれ、
「葛城一尉、深呼吸深呼吸」
と囁かれ…我を取り戻した。
吸って…吐く。それだけで、心の余裕が生まれる。
(…これじゃ、どっちが年長者か解らないわね)
自嘲的に苦笑しながらも、ミサトは同行者の少女に感謝した。
「…セカンドインパクト後の混乱・紛争の終息は、
わたくしも、それは重々承知しております。
事実、この大艦隊ならば、テロリストの海賊行為程度を相手取るには、
充分すぎる戦力でしょう」
「Ms.葛城。それが解っているなら…」
「ですが」
ミサトは一度彼らのプライドを擽った後、続く言葉を遮った。
「エヴァンゲリオンでA.T.フィールドを中和しない限り、
あの敵生体…使徒に生半可な通常攻撃は無効です。
一時的な足止めは出来るでしょう。しかし、
「…!!」
艦隊の持つ魚雷やミサイルに、そんな威力はない。
仮に有ったとしても、強大な衝撃を伴うNN兵器を海上で使えば、
艦隊を丸々巻き込みかねない大惨事だ。おいそれとは使えない。
それが足止め程度にしかならない、となれば…艦長と副長は、息を飲んだ。
「逆に言えば、A.T.フィールドを中和することで、
通常兵器でもダメージが見込めるのは、先の使徒戦でも確認しています。
…
「…解った。葛城くん、書類を渡したまえ」
NERVと国連軍の共闘の必要性を説かれ、ようやく折れた艦長はペンを手に取った。
ミサトは活路をくれたレイにウインクして見せ、レイは
「よ、葛城。相変わらず凛々しいねぇ?」
「あっ、加持先輩!」
「う゛ぇ゛っ!?」
「加持くん!君をブリッジに招待した覚えはないぞ!」
割り込んだ男の声。
アスカは顔をほころばせ…そしてミサトは、先程までの凛とした言葉とは逆の、濁った呻きを上げた。
艦長の批難と同時に、レイはそちらを振り返る。
「これは失礼、艦長。お嬢様がたをお茶に誘ったら、早々に退散させて頂きますよ」
加持と呼ばれたその男…年の頃は三十前後…ミサトと同世代か。
不精ヒゲに後ろ縛りの髪…整ってはいるが、その顔は「イケメン」というには少々軽薄にニヤついていた。