新世紀エヴァンゲリオン リナレイさん、本編にIN   作:植村朗

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R-18の方で何かやってます(24.5話)
表現をややソフトにして前半の一部分を引用しました。


幕間 「じょ」と「は」の間
幕間1、ミサトさん、リツコさんの執務室にIN


碇シンジは戦いの前に死を幻視し、

綾波レイは窮地の中で一度は生を諦めかけた。

 

少年は少女を守り、少女は少年を助けるために力を振るい、

その末に、使徒から薄氷を踏むような勝利をもぎ取る。

 

二人は死を強く意識したが故に、

命の温もりが、生き延びる力となった事を感じた。

 

 

あの戦いから数日…。

 

シンジとレイは、深く、絡み合うような口づけを交わし合っていた。

 

 

「いつ死んでも悔いが残らないように」

という言葉は、いささか語弊がある。

どんな形であれ、死にゆくものは今わの際に悔いを残し、

残された者は、続く生を後悔するだろう。

 

だがそれでも、それだからこそ、

彼らは、生を、存在を、確かめ合っていた。

 

何度目かの息継ぎの後、レイは一度ついばむような口づけをして、

シンジの左胸に耳を当てた。感じる、彼の鼓動の音。命のリズム…。

 

「碇くん、頭なでて」

「うん」

 

求められるままに、シンジは青く柔らかな髪に掌を置き、

頭頂部から後頭部へ…壊れ物を扱うように…何度も、何度も、撫でる。

レイはその心地よさに溜め息を漏らしながら、

少年の胸に、すりすりと己の頬を繰り返し擦りつける。

 

「ふぁぅ…碇くん、碇くん、いかりくん…

ぽかぽかするよぅ…溶けちゃいそうだよぅ…」

 

女子生徒としての快活な声とも、エヴァを駆る戦士としての姿とも違う。

呂律が怪しくなりながら、何度も自分の名を呼ぶ愛らしい声と、

安心しきって甘える仕草を、シンジは優しく見守った。

 

「綾波さん、なんだか猫みたいだ」

「んー?ふふっ…エヴァのインターフェース、借りてこよっか」

 

シンクロ補助のためのインターフェース・ヘッドセットは、

ちょうど猫耳に似た三角の形だ。

トロンとした瞳のまま冗談めかすレイの言葉に、シンジは笑い返した。

 

レイの部屋…冷たいコンクリートの壁とは裏腹に、熱は高まっていく。

二つの人影は、一つになっていく…。

 

………

 

……

 

 

NERV本部内。

技術一課長室の扉には、白猫と黒猫の絵があしらわれたネームプレート…。

流麗な筆記体で[Ritsuko Akagi]とあった。

 

部屋主である赤木リツコ博士の元を訪れているのは、

作戦部長…である前に、彼女の友人である葛城ミサト。

 

書類の山、怒涛の作業、ひっきりなしの連絡、長丁場の会議、etcetc(などなど)

 

多忙を極める戦後処理の合間。

効率を上げるための休憩時間は重要であり、

ミサトは友人の淹れる美味いコーヒーを目当てに訪れ、

リツコもまた、彼女との雑談を丁度良い気分転換にしている。

 

「ところでミサト?シンジくんが、レイの部屋によく行っているらしいけれど」

 

どこか咎めるような口調のリツコに、ミサトはカップから顔を上げた。

 

休み(オフ)の日の話でしょー?週一回のおうちデートぐらい大目に見てやんなさいよ。

あの子達だって娯楽ぐらいなくちゃ、息が詰まっちゃうわ。

出かける前、私に断りを入れるときの名目も『技術交換』って、なかなか感心な話じゃないの」

「技術交換?」

「シンジくんは料理を教えて、レイは格闘を教えてるみたい。

レイってサンドバッグ買ってたんでしょ?さしずめ『綾波道場』って所ね。

シンちゃんもお料理上手いから、レイの胃袋、掴まれちゃうかもしれないわねー♪」

 

楽し気なミサトに対し、リツコは懐疑的に眉を寄せていた。

あくまで名目上、であり、本音は先に言った通り「おうちデート」なのだ。

 

「あの二人に、何か()()()があったらどうするつもり?」

「大丈夫よ、シンちゃんに避妊具(ゴム)は渡してるわ。

()()()()()()。先人はいい言葉を残したわねぇ?」

「あ、あなたねぇ!?あの二人は中学生なのよ!?

保護者自らが一線を超えることを推奨するとか、何を考えてるの!」

()()()()

 

声を荒げるリツコに対し、ミサトは低い声を返し、コーヒーを飲み干した。

 

「…その中学生に汚い大人(わたしたち)は世界の命運を背負わせてるのよ。

特務機関権限で法を捻じ曲げてまでね。

第五使徒戦だって、偶然や幸運が少しでも足りなければ…

どちらかが、あるいは二人とも死んでたわ。

 

進んで死なせたくはない。

けれど私は指揮官の立場上、あの子達を死地に送らなければいけない。

()()()は、これでも全然足りないくらいよ」

「……」

「コーヒーごちそうさま。会議室、先行ってるわ」

 

スライドドアの向こうに消えるミサトの背中。

 

「不器用なバランスの取り方ね。…人のことは言えないか」

 

自嘲的な部屋主の呟きだけが、その場に残った。




司令室にて

レイ「たのもー!碇司令!息子さんをあたしに下さい!」
ゲンドウ「ブッフォ!?(コーヒー噴出)」
冬月「うわっ、碇、おまっ、汚っ、エンガチョ!」


なお、シンちゃんの料理を食べたリナレイさんの言葉は
「あたしのために味噌汁作ってくれ」
だった模様。

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