新世紀エヴァンゲリオン リナレイさん、本編にIN   作:植村朗

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22、ネルフのみなさん、作戦会議にIN

NERV本部作戦課、第二分析室。薄暗い部屋には五人の人影が集っていた。

採取されたデータを鑑みて、あーでもない、こーでもないと相談の真っ最中である。

 

「エヴァンゲリオン等身大の囮風船(デコイ)…展開当初は無反応。

ですが、模擬銃を構えた途端に加粒子砲で狙撃され、一瞬で蒸発しました」

「先の兵装ビルでの牽制を踏まえると、

目標の行動パターンは一定距離内の外敵を自動排除するものと推測されます。

()()に対して、反撃(カウンター)を加える…といった感じですね」

 

モニターを指さすのは男性オペレーター陣。

情報部より青葉シゲル、作戦部より日向マコト。

 

「ビームで落とされなかったミサイルも、A.T.フィールドで完全に防がれてますね…」

「映像越しに肉眼で見えるレベルって凄いよコレ。ほーら綺麗な六角形!」

 

パイロットの碇シンジ・綾波レイ両名は一度エヴァから降り、

シャワーを浴びたあと制服に着替えてこの場にいた。

腕を組み、映像に映し出された正八面体の使徒を睨むのは葛城ミサト作戦部長。

 

「敵意に対して反撃…ならば私達が攻撃しなければ大人しくしてくれる…

っていうなら良いんだけど…そうじゃないのよね?」

「はい。現在、使徒は我々の直上、第3新東京市のゼロ・エリアにて空中静止。

下部から出た直径17.5メートルの巨大掘削機関(シールド・ドリル)がネルフ本部に向かって穿孔中です。

22層の装甲版を破って地下空間(ジオフロント)に到達するのは、日付変更直後と推定」

 

青葉がキーを叩き、地上カメラの映像を出した。

今まさに地面がリアルタイムで抉られているところだ。

タイムリミットは十時間弱…。重い沈黙が落ちる…

 

「やだ…第3新東京市に(ぶっと)いのが刺さっちゃってる…」

「レイ…あんた本当に変わったわね」

 

両手で朱の差した自分の頬を抑え、クネクネと身体を揺するレイ。

空気を読まない彼女の発言も、この時ばかりは場を緩めるのに役立つ。

ここに伊吹二尉(マヤちゃん)がいなくて良かった、とミサトは苦笑した。

 

「日向さん、遠距離からの射撃は…やっぱり厳しいですか?」

赤木博士(リツコさん)からは試作20式陽電子銃(ポジトロンライフル)のデータを預かってる。

現時点で最高火力のエヴァ専用銃器だけど、

A.T.フィールドを貫通するには出力がまるで足りていないんだ。

よしんば足りたとしても、最低1億8000万キロワットのエネルギーをどう調達するか…」

 

シンジの問いに、日向は首を横に振った。

ミサトは顎にL字にした指をあてて思案する。

 

「A.T.フィールドを中和せず、レンジ外からの超長距離射撃か…。

その線で行くなら、発射装置(ランチャー)のアテは一応あるわ。

戦略自衛隊研究所(センジケン)の自走陽電子砲…そのプロトタイプを借りるのよ。

エネルギーは、それこそ計画停電してでも日本中から掻き集める。

送電網の構築は…急ピッチで進めれば、日が変わる前にギリギリってところかしら」

()()()…というか、NERVの特務機関権限で強制徴発ですか…

背に腹は代えられないとはいえ、関係悪化は避けられませんね」

 

長髪の影で、青葉の眉根が寄せられる。

表向きは人類を守るため、共闘関係にあるものの、

秘密主義のNERVと、現時点で地上最強の軍隊たる戦略自衛隊の仲はよろしくない。

まして多額の費用を掛けた研究者達の努力の結晶を、一瞬で取り上げられれば面白いはずもない。

 

ただでさえ互いの諜報部が水面下で鎬を削っているのだ。

これ以上関係がこじれれば、いつ()()()()()()()()おかしくない状態になるだろう。

大義名分があるとはいえ、ミサトもそこは理解している。

 

「もし他に案があるなら、遠慮なく言ってちょうだい。

三人寄らば文殊の知恵。五人いればもっといい案が出るかもしれないしね」

「「「「……」」」」

「ないのね?じゃあ…」

「ちょっと待ったぁ!」

 

ミサトの言葉に割り込んだのは、ガバッ!と顔を上げたレイだった。

 

青葉二尉(ロンゲくん)!兵装ビルでミサイル攻撃した時の映像!もう一回(っかい)見せて!」

「ロ、ロンゲくんって…」

「いいじゃないかシゲル。僕なんか()()()()()だったぞ?」

 

安直な仇名をつけられた男性オペレーターズは汗を垂らしながらも、

レイの言う通りに動画を再生した。

 

ミサイル群が扇型の軌道をとって使徒へと向かい…

八割方が爆散。残り二割はA.T.フィールドに防がれる…

 

「もう一度!」

 

レイは興奮気味に言った。

映像が巻き戻され…

ミサイル群が扇型の軌道で使徒へ…

八割爆散…二割はA.T.フィールドに…

 

「要はビームを何とかやり過ごせばいいんだよね?

使徒は水平方向(まよこ)からの攻撃には反撃するけど、

垂直方向(まうえ)からの攻撃はA.T.フィールドで防いでる…ってことは…」

「あのビーム…真上には撃てない?」

 

シンジの言葉にレイは「うん」と頷き、ミサトの方へ向き直る。

 

「ね、葛城一尉。エヴァの射出リフトを調整して、使徒の直上に飛ばすって出来ないかな?

相手は地面にドリル刺してるし、身動きはとれないっしょ?

いざ取りついちゃえば、フィールド中和して通常兵器の援護でもダメージ行くんじゃね?」

「…まるで竜騎士ね」

 

冗談半分に肩を竦めつつ、ミサトは答える。

シンジは怪訝な顔をした。

 

「リュウキシ?なんですか、それ」

「セカンドインパクト前の、私が小学生時代にやってたゲームの話。

ジャンプして敵の頭上から攻撃するの。

…レイ、案を出した以上、やれるのかしら?」

「葛城指揮官殿の、ご命令とあらば」

 

性格変化以前は、()()()()()()()()()()()()のレイ。

だが今は、冗談を交える余裕すらあった。

 

「OK、戦自研には援護射撃の要請をしときましょう。

MAGIによる遠隔サポート付きでね。

強権(ムチ)を使わず手柄(アメ)を譲る形になるけど…カードの切り時は、今だわ」

 

ニヤ、と女二人が不敵な笑みを交わした。




ヤシマ作戦は盛り上がるし私も大好きなエピソードですが、今回はあえて外しました。
「笑えばいいと思うよ」ってゆーかレイさん現時点で笑いまくってるっちゅーねん。

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