新世紀エヴァンゲリオン リナレイさん、本編にIN   作:植村朗

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21、リナレイさん、またまたネルフ本部にIN

NERV保安部のメンバー達は、綾波レイ・碇シンジ両チルドレンの出発を確認。

途中コンビニに寄り、軽食と飲み物を買って本部へ向かう彼らを、

無線で連絡を取り合いながら見守る。

 

例の事故以降、能面のような表情がずいぶんと柔らかくなったレイだったが、

シンジと共に歩んでいる今日は、特に顕著だった。

 

レイが積極的に話しかけ、シンジが相槌を打つ、という構図。

笑うレイ、きょとんとするレイ、頬を膨らませてむくれるレイ、再び笑うレイ。

対するシンジは、時折戸惑いながらも彼女に笑顔を返し、または顔を赤くする。

 

更新されたセキュリティーカードを入口のスリットに通し、

ゲートの向こうへ行く二人を見送るまでが保安部の仕事である。

彼らとてプロ。保護対象に多少の変化があっても動じる事はない。

ただ粛々と、任務を遂行するのみ…だが。

 

「…甘酸っぺぇな」

「そうッスね」

 

子供達が本部へ消えた後、そんな言葉が交わされた。

 

 

 

午後二時(ヒトヨンマルマル)。NERV本部第一実験場。

 

元々のタイムスケジュールではレイとエヴァ零号機の再起動実験だったが、

すでに凍結解除が為されていた事もあり、

先の第四使徒戦での起動データ、および戦果をもってこれを省略。

疑似操縦席(デストプラグ)(もち)いた通常のシンクロテストが行われていた。

 

「凄いですよ先輩。二人ともシンクロ率は右肩上がりです。

シンジくんは心理グラフに振れ幅がありますけれど、レイの方は…」

「えぇ。シンクロ率70%台に到達。

天才と言われたドイツの第二の適格者(セカンドチルドレン)にも届こうかという勢いね」

 

伊吹マヤ二尉は幼さの残る両目を大きく見開き、赤木リツコ博士が彼女に答えた。

だが、テストが次のフェイズに移行しようという時…

「警戒」という赤文字がモニターに割り込む。

 

第3新東京市南東の海上より、未確認飛行物体が接近…

オペレーターからの分析パターンは…青。

司令席の傍らに立つ初老の男、冬月コウゾウ副司令が渋い顔をする。

 

「早くも第五の使徒襲来か。碇、周期(スパン)が短すぎはしないか」

「災いは何の前触れもなく訪れるものだ。十五年前と同じようにな。

…シンクロテスト中断。総員、第一種警戒態勢!」

「了解。総員、第一種警戒態勢。繰り返します。総員、第一種警戒態勢」

 

碇ゲンドウ総司令は机の上に組んでいた指から顎を上げ、マヤが指示を復唱する。

長髪の情報オペレーター、青葉シゲル二尉がコンソールを弾いた。

 

「映像、最大望遠で主モニターに回します」

「これはまた…前二つとは随分と毛色の違う奴ね。

第三、第四使徒にあった『生命体(いきもの)らしさ』が全然ないじゃない」

 

それが作戦部長・葛城ミサト一尉の感想だった。

無機質な、美しいコバルトブルーの正八面体が、一定速度で空を飛んでいる。

眼鏡の作戦オペレーター、日向マコト二尉がミサトを振り返った。

 

国連軍(UN)、および戦略自衛隊(センジ)は動かず。

今回は()()()()NERVに作戦権を移すようです」

「ま、第三使徒戦であれだけ被害が出ればね。

意地やメンツでどうこう出来る相手じゃない事は理解したんでしょ」

「そーこーでーエヴァの出番ってわけですよ!葛城一尉~、行っていいー?」

 

レイが通信回線を開いた。

操縦桿(インダクションレバー)を指でリズミカルに叩きながら、

上前方を見上げるような彼女の顔がモニターに映し出される。

パイロット両名は、テストプラグから早々にエントリープラグへと移っていた。

 

「まだよレイ。まずは兵装ビルで牽制を仕掛けるわ」

「え?でもA.T.フィールドで防がれるんじゃ…」

 

初号機のプラグ内で、シンジが疑問を口にする。

使徒に通常兵器は通じないのは、ミサトも知っているはず…

尤もだ、と頷きながらも、ミサトは続ける。

 

「いい、シンジくん?今回は私達(ネルフ)が初会敵よ。

敵のフィールド出力程度のデータを取る事は出来るでしょう?

上手くすれば手の内も見えるかもしれない。

…日向くん!7番ビル!やって!」

「はい!」

 

ミサトの指示を受け、ミサイルの連弾が放たれた。

煙の筋が、扇状の軌道を描く。

レイはそれを見つつ、むぅー、と唸っていた。

 

「なんでー?めんどい事しなくても(チョク)で調べりゃ良くね?

あたしめっちゃ調子いいよ?もう空飛べそう!具体的には月ぐらいまで…」

「目標内部に高エネルギー反応!円周部を加速、収束して行きますっ!」

 

レイのやる気アピールは、青葉の報告に遮られる。

上下に重なった青いピラミッドの接合面が輝き…

そして、発令所の主モニターに光が満ちる。

次の瞬間…ミサイルは花火と化し、7番兵装ビルには()()()()()()()()

 

「か…加粒子ビーム砲…!」

 

リツコが声を震わせ…ところどころから息を飲む音が聞こえる。

融点を迎えたコンクリートが、マグマ状に液化して道路を焼いている。

もしエヴァを直接出していたら…

最終安全装置が外されるまでのタイムラグで直撃を受けていただろう。

ミサトは冷や汗を流しながらも、口の端を上げていた。

 

「なんか()ーな予感してたのよ。私の()()()も、案外捨てたモンじゃないわね。

…どう、レイ?行ってみる?

FLY ME TO THE MOON(私を月まで連れてって)どころじゃなく、

太陽まで行けるかもしれないわよ?」

「…あ、危うくお空の果てにバイバイキーンされるところだったでござる…」

 

レイはそう呟くことしか出来ず、シンジは目を点にしていた…


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