新世紀エヴァンゲリオン リナレイさん、本編にIN 作:植村朗
シンジ「ペ…ペンペーン!!」
ペンペン「(ヒクッ…ヒクッ…)」
リツコ「毒よッ!毒にやられているわ!」
トウジ「なんちゅうことを…(憤怒)」
ケンスケ「衛生兵!衛生兵ーッ!!」
ミサト「(*´3`)~♪」
『事故…ですか?』
『そう、あの時…彼女は頭を打って…それからよ。にわかには信じ難いけれど』
『野菜惑星出身の戦闘民族が、頭を打って穏やかになった例もありますからねぇ』
『それマンガの話やろ?で、実際、大丈夫なんでっか?』
『前は、ちょーっち意思疎通に問題あったし、むしろプラスだと思うわよ?
今の方が話しやすいしねん♪』
…
……
………
ダンッ……ダンッ……
建築作業らしき、工事の打音が響く。
碇シンジが向かっているのは、街外れの団地区画。
今日も今日とて朝から暑く、
ドミノのように並んだ灰色の建物群が、陽炎に揺られていた。
メモ用紙に書かれた住所は、綾波レイのマンション…
建物の外壁は、ところどころ崩れていて、
窓ガラスに穴が開いた部屋まである。
ここに来るまでの道路も、アスファルトがひび割れており、
シンジは、どうしようもなく不安になった。
「一応、エレベーターは動いてる…
電気は来てるから、廃墟じゃないんだろうけど…うわっ」
エレベーターの扉が開く。
通路には、紙屑やペットボトルが散乱していた。
少なくとも数ヶ月単位で清掃業者が来ていないらしい。
気を取り直して通路を進み、たどり着いた部屋には、
確かに【402 綾波】という表札があった。
インターホンを押す。
………
……
…
反応がない。
「ごめんくださ…」
バスッ、ボスッ、ドスドスドスッ…!
部屋の中から聞こえる鈍い連続音に、シンジの挨拶が途切れた。
外で聞こえる工事音とは別の、柔らかいモノを叩く音。
何かを、殴る音?
何者かが部屋に押し入って、
レイが暴力事件に巻き込まれたのでは…!?
不吉な想像が、シンジの脳裏をよぎった。
「綾波さん!?」
ドアには鍵が掛かっていなかった。
あっさり回ったドアノブが、シンジを余計に焦らせる。
飛び込んだシンジの視界に、殺風景な部屋の光景が広がった。
打ちっぱなしのコンクリートが露出した壁。
奥には血らしき染みのついた枕を乗せたベッド。
小さなタンスと冷蔵庫…そして…
「っしゃーおらー!」
気合…というには少々不思議な声を上げながら、
スタンドに吊るされたサンドバッグ相手に、連撃を加えている綾波レイがそこにいた。
黄色と白…
ワンツーパンチに合わせて汗の玉が散る。
黒のスパッツからスラリと伸びた足が、鞭の様なミドルキックを決めた。
キィ、キィ…と鎖が鳴き、サンドバッグは左右に揺れる。
シンジは、しばし茫然とレイのモーションに見入っていた。
自分の想像が杞憂だったから安心した、というのもある。
しかしそれ以上に、レイのその動きが、その姿が、美しかった。
「…っふー…あれ、碇くん?なんでここに?
あ、ヤバッ、あたしカギ閉めてなかった?」
振り返りざまの、呑気なレイの声…。
(なんでここに?
そうだ、僕は綾波さんに用があって来たんだ。
なんだっけ。渡すものが。ええっと。
あぁ、綺麗だな、綾波さん。
…違う、そうじゃない。
僕は、なにを、混乱して、考えが、まとまらな…)
「ご、ごごごごめん!なんか、音がしたから!
別に僕は、勝手に上がるつもりじゃなくてっ、その!
カ、カード!カードが、新しくなったから、届けてくれって!
あぁあ!ごめん、靴脱いでなかった!」
トマト色の顔から湯気を噴きながらテンパるシンジ。
べちっ、という痛そうな音を立て、レイは彼の両肩を勢いよく叩いた。
レイの赤い瞳が、シンジの見開かれた黒目を見据える。
「落ーちーつーけー!まず息を整えて!
はい深呼吸ーっ!ひっひっふー!ひっひっふー!」
「そ、それラマーズ法!深呼吸じゃないよ!?」
「はーいどうですかー碇さーん、生まれそうですかー?」
「生まれないよ!?お腹撫でないで!」
「うん、今日もツッコミがキレてるね!
これだけツッコめるなら大丈夫そうだね!
…ツッコめるですって!?碇くんのえっち!」
「僕何も言ってないよ!?」
レイがボケて、シンジがツッコむ。
そんなやりとりが5分ほど続いた後…
「な…なんで僕、こんなに疲れてるんだろ…」
「いやー。碇くんってば良い反応してくれるから、
つい楽しくなっちゃって…メンゴ」
レイは冷蔵庫から2リッターのペットボトルを取り出し、
「で、なんぞ?カードって?」
「うん、綾波さんの新しいID。リツコさんに頼まれて」
「赤木博士から?おー、ありがと!
危うくNERV本部の前で立ち往生するところだったわ!
ま、飲みねぇ飲みねぇ。熱中症対策は大事だから。
水分と必須アミノ酸を身体中に巡らせておきんさい」
カードを受け取ったレイは、コップの中身を一気に飲み干し、
肩に掛けたタオルで顔の汗を拭うと、早々にお代わりを注いだ。
彼女とは対照的に、シンジは喉を湿らせるようにチビチビとドリンクを啜る。
一息つくと、シンジは改めて灰色の部屋を見回した。
「その…綾波さん、凄い所に住んでるね。不便じゃない?」
「電気・ガス・水道…一通りのライフラインは揃ってるし、住めば都だよ。
こんな見た目でもエアコンは効いてるし、Wi-Fi環境もあるしね。
電話一本で
…あと、武骨なコンクリの壁って
ベッドに腰かけ、レイはニヤリと笑う。
5本の指で上から掴んだコップをゆるやかに弄ぶと、
半分ほど残ったスポドリが静かに波打った。
「カッコいいっていうか、ちょっと怖い、かな。
周りの建物は妙に荒れてるし、治安が心配だよ。
それに、さっき鍵、閉め忘れてたじゃないか」
「あー、そこはあたしの不注意だった。
今は
でもまぁ、来たのが碇くんで良かったよ」
「どういうこと?」
「碇くんには、あたしを押し倒すような度胸はないっしょ?」
「お、押したっ…!?」
シンジには短絡的な行動に及ばないだけの理性はある。
だが年頃の男としての欲求もあり、理性のタガが外れる可能性も然りだ。
そういえばレイは、四肢もヘソも露わなスポーツウェア姿のままだった。
仲間として信頼されているのか?
それとも単に無害な存在として見られているのか?
…いや、第三使徒戦の前、エヴァ初号機のエントリープラグの中で
レイはシンジの
体育の授業中も、わざわざプールから挑発するようなことを言ってきた。
レイとてシンジに人並みの性欲がある事は理解しているはずだ。
胸の中のモヤモヤした何かに駆られてシンジは立ち上がり、
ベッドに腰かけたレイを、見下ろす。
「ぼ、僕だって男なんだからさ!
綾波さんの、そんな無防備な姿を見せられたら…」
「
次の瞬間。
シンジは左手首と右肩を掴まれるのを感じ。
ベッドの上に仰向けになって。
レイに、マウントされていた。
「忘れちゃった?
あたしはNERVで年単位の訓練受けてるんだよ?
…無防備なのは碇くんじゃないかなぁ?
丸腰であたしの
彼女の不敵な笑みと、灰色の天井が視界に広がる。
あっ
ここも
知らない天井だ
シンジの思考は、場違いなままに固まっていた。
この後めちゃくちゃ以下略
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