新世紀エヴァンゲリオン リナレイさん、本編にIN   作:植村朗

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今回レイさんは写真でしかINしてません。


18、リツコさん&3バカトリオさん、ミサトさん宅にIN

中層マンション・コンフォート17。葛城ミサトの部屋。

夕食の鍋には、焦茶色の水っぽい何かが満たされている。

 

「なによこれー!?」

ミサトの親友、赤木リツコの叫びが全てを現していた。

 

「ミサトさんお手製のカレーです…

トウジ、ケンスケ…ご飯は大盛りでいい?」

死んだ魚のような目で配膳するミサトの同居人、碇シンジ。

女性の手料理が食べられる、という事で

ウキウキしながら正座待機していた友人達はというと…

 

「い、いや!俺は少な目でお願いするよ!

俺、わりと食が細いし、残しても悪いしさ!ハハハ…」

声と顔を引きつらせた、相田ケンスケ。

 

「ワシも…なんちゅうか…スマンかったな…シンジ…」

テンションお通夜状態の鈴原トウジ。

 

「ク…クァァ…」

ペット用の皿に盛られたカレーライス()()()を前に、

弱弱しく鳴き声を上げるのは、

葛城家のもう一羽(ひとり)同居鳥(どうきょにん)たるペンギン…

 

「あ、シンちゃーん!私はここにカレー入れちゃって!どっぷゎぁ~っと!」

「正気ですか!?」

一人ご満悦なのは、このカレー()()()()()の作成者…

サイズ1.5倍(当社比)のカップラーメンを差し出したミサト。

 

混沌が、そこにあった。

…少なくとも、夕食の前までは平和だったのだ。

そう、この時までは…

 

 

**2時間半前・下校途中**

「シンジー!いい加減白状しろよ。

あんな美人と一緒で、何もない訳ないだろ?」

「お、大人の階段を昇ってしもうたんか…センセェ!」

「だから何にもないってば!もう、二人ともしつこいなぁ~」

 

**2時間前**

「お帰りなさいシンジくん。相田くんと鈴原くんも、ゆっくりしていってね?

仲直りしてくれて私も嬉しいわ。これからも、シンジくんをよろしくね!」

「「はい!ミサトさんっ!」」

「はぁ…」

 

**1時間半前**

「クェー?」

「なんか…二足歩行の鳥がおりまっせ?」

「あぁ、彼?新種の温泉ペンギンよ。名前はペンペン!可愛いでしょー?

シンジくんってば、始めて家に来た夜…お風呂で鉢合わせちゃって…

ぷぷっ、真裸(マッパ)で慌てて飛び出してきたっけー?」

「ミサトさんっ!?」

「センセェ…(しょ)(ぱな)から露出プレイとか…飛ばしすぎやろ…」

「ちなみに普通サイズだったわよ?」

「ミサトさんっ!!」

「シンジはふつーサイズ。ちぃ、おぼえた」

「ちぃって誰やねん…」

 

**1時間前**

「あの、やっぱり僕が作りますよ…」

「いいのよー、シンちゃんは座ってて?ふふーん♪

せっかくのお客様だし、ちょーっち腕をふるっちゃうわよん♪」

「嫌な予感しかしない…」

 

**30分前**

「お邪魔するわね。あら、シンジくんのお友達?こんばんは」

「どうも、リツコさん、こんばんは」

「金髪のクールビューティー…これは絵になるぞぉー!

すいません!写真撮らせて頂いてもいいですか!

全身とバストアップを!それと後でミサトさんとの2ショットも!」

「はァ~…ホンマNERVは美人(べっぴん)さん揃いやな…

こりゃあ華やかな夕食になりそうやなぁ!」

「悪い気はしないけれど、褒めても何も出ないわよ?フフフッ」

 

 

**そして、現在**

 

「「「「う゛っ」」」」

 

スプーンを口に運んだリツコ、シンジ、トウジ、ケンスケの呻きが重なった。

カレーの風味は、ほんのりと残っている程度。不自然に甘くて、苦くて、しょっぱい。

 

「ミサト…レトルトを原料に何故こんな味になるの!?」

 

「んー?量を確保する為にお水でしょー?味が薄くなるからお醤油でしょー?

元が甘口カレーだからお砂糖入れてー…隠し味に飲みさしのビール!

ラーメンに入れる時は、スープとお湯を少な目にしとくのがコツよん♪

行けるのよーこれが!最初からカレー味のラーメンじゃ、この深みは出ないのよ!」

 

「ミサトさん…隠し味が隠れてないです…

カレーの甘口と、砂糖の甘さは別物です…

あと、そのラーメンが『行ける』のは人工の旨味です…

カップラーメンの科学調味料でマシになってるだけです…」

 

「ど、独創的なカレーですね!

初めての味でっ、お、俺、なんか、涙がっ…!」

 

「ケンスケ、顔真っ青でフォローせんでええって…

ワシ、次来る時はシンジが当番の時に頼むわ…」

 

ズルズルと美味そうにカレーラーメンを啜る家主。消沈する他の面々。

ドサ、と何かが倒れる音に、シンジが様子を見にいくと…

 

「あぁっ、ペンペン!ペンペェーン!!」

「グ…グァ…」

 

一口食ってそのまま横倒しになり、ヒクヒクと痙攣する哀れなペンギンがそこにいた。

リツコは深い溜め息をつき、困ったような笑みを浮かべる。

 

「シンジくん、やっぱり引っ越しなさい?

ガサツな同居人のせいで、人生を棒に振ることはないわよ?」

「もう慣れました…それに、普段の食事は僕が作りますから」

「この分だと、普段の掃除もシンジくんの担当ね?」

「はい…初めて来たときは『ちょっち』散らかってました…

ビールの空き缶と、カップラーメンの容器と、ゴミ袋で」

 

なんとか息を吹き返したペンペンを撫でながら、シンジは淡々と答える。

リツコは悟った。ミサト基準の『ちょっち』はゴミ屋敷だ。間違いなく。

 

「赤木博士、人間の環境適応能力を侮ってはいけないわ!」

魔窟を創り出す本人(ダンジョンマスター)が言う事じゃないわよ、もう…」

失礼(しっつれい)ねー。それに引っ越すったって、手続き面倒よ?

シンジくん、正式(ホンチャン)のセキュリティーカードもらったばっかりだもの」

「カード…そうだわ、忘れてた!」

 

むくれるミサトを他所に、リツコはバッグを探って一枚のカードを取り出した。

 

「レイの更新カード、渡しそびれたままになってたの。

シンジくん、明日NERV本部に行く前に、彼女の所に届けてもらえるかしら?」

「あ、はい…ん?」

 

IDカードを見たまま、シンジの動きが止まる。

綾波レイの顔写真…その表情は、まるで人形のように冷たく、

ある意味、ゾッとするような美しさがあった。

 

「なんやセンセェ、綾波の写真、ジーっと見おってからに」

「いや…綾波さんらしくない表情だな、って」

「俺とトウジが見慣れてるのは、こっちの綾波だよ。

そうだ、ミサトさんとリツコさんがいるんだし、聞いてみようぜ?」

 

級友達の言葉は、肩越しにシンジの手元を覗きながらのもの。

状態異常:毒から回復し、ようやく、本来の目的を思い出した所だ。

 

「あぁ、それはね…」

 

リツコは機密に触れぬ範囲で、レイが変わった時の事を話し出した。


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