新世紀エヴァンゲリオン リナレイさん、本編にIN 作:植村朗
E計画担当責任者、赤木リツコ博士は、綾波レイの病室を訪れる途中、碇ゲンドウとすれ違った。
トレードマークであったヒゲは剃り、ずいぶんとさっぱりした印象の総司令…
「マダオ…マダオ…」
会釈を向けたリツコをスルーし、ブツブツ言いながらゲンドウは歩き去っていく。不気味だ。
リツコは気を取り直し…プシュ、と音を立ててスライドする病室のドアを潜る。
「レイ、調子はどう?」
「…おー、赤木はかせー?こんちゃーっす。
頭ってケガすると血ぃドバドバ出るのねー…まだダルーい…」
「血が集まる場所だから、たとえ浅い外傷でも思いのほか出血するものよ。
脳内出血が起きてないのは、不幸中の幸いだったわね」
(やはり、まるで別人だわ。
私や司令を含めたNERV職員の記憶はそのままに…
確かに頭部外傷による性格変化の症例はあるし、ありうる事。
けれど、ここまでポジティブな変化は…正直、戸惑うわね)
リツコは手にした検査結果のファイルと目の前の患者…交互に視線を移した。
レイはベッドに身体を横たえたまま、リツコの金に染めたボブカットが揺れるのを見ている。
頭には血の滲んだ包帯…点滴の管を腕に刺すため、袖なしのプラグスーツ姿だ。
「碇司令が来てたみたいね。何か話したの?」
「んー?…別に普通だよ?ヒゲ剃ったみたいだから今の方がイケてるよ♪って言ったケド」
(?…変ね。碇司令はレイを相当気にかけていたはず。
イメージチェンジを褒められれば上機嫌になりそうなものだけれど。
表向きは平静を装いつつ「…そうか」とか呟いてニヤっと…)
「あとついでに、前のヒゲ面は
まるで・
略してマ・ダ・オって感じだったよねって」
「それか!」
先程のゲンドウを思い出し、リツコは戦慄した。
謎は全て解けた!だの
謎のセリフを吐くおかしなシルエットが脳裏によぎる程に。
レイ自身の心はどうあれ、
ゲンドウがレイに拘っているのはリツコが良く知る所だ。
多少の暴言程度では切り捨てる事は出来まい。
ゲンドウの
豆腐メンタルにボディーブローをブチかましたレイの悪意なき天然毒舌。
先程のゲンドウの様子を見れば、その威力の程が知れるだろう。
(そういえば、さっきすれ違った司令は心なしか恍惚としていたわ…
…ドMに目覚めたかしら?)
リツコは、苦笑する。
「…赤木博士、なんか嬉しそう?」
「…!なんでもないわ。と、ともかく、今のところは安静にしていなさい。
『あれ』がいつ来るか…貴女の力は近々必要になるわよ、レイ」
「うぃー…」
再びベッドに埋もれつつ、ひらひらと手を振るレイ。
これも以前の彼女ではありえない仕草だ。
(この変化が私達にどういう結果をもたらすか…
もう少し注視した方がいいかもしれないわね)
そんな事を思いつつ、リツコは病室を後にした。
別に碇司令は嫌いじゃないです
例のポーズで「問題ない(ドヤァ)」とかゲンドウごっこするぐらいには好きです