新世紀エヴァンゲリオン リナレイさん、本編にIN   作:植村朗

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17、リナレイさん、学校のプールにIN

セカンドインパクト以降、常夏の国になった日本…

第壱中学…校舎に併設されたプールは、さながら天国。

 

各コースに仕切られたプールでは、クロールの競争が行われていて、

プールサイドには女子達の明るい声が満ちていた。

 

「行っけーヒデコ!」

「アヤナンがんばれー!…あ、着いた!ゴールゴォール!」

 

声援を受けていた『アヤナン』こと綾波レイは、ぶっちぎりの一位だった。

水から上がってキャップを取り…陽光を受けて光る水滴を纏う姿…

幻想的な青髪も相まって、現実離れした妖精のよう…

 

「へっへー!あたしやったよー!いぇーい!」

「いぇーい!」「アヤナーン!超速かったよー!」「レイちょんナイスー!」

 

…でもなかった。

 

めっちゃノリノリで、パァン!と良い音を立てつつ、ハイタッチを友人達と交わしていた。

身体を冷やさないよう、フェンスにかけたバスタオルを手に取って肩を拭きながら、

レイは眼下のグラウンドを見下ろした。そして気づく。

女子達のスクール水着姿が、小休止中の男子の眼の保養になっていたことに。

 

「こーら、性欲持て余した健康優良児どもー!

炎天下の中ずーっと上向いてると、鼻血吹いてブッ倒れっぞーおまえらー!?」

 

レイは前傾姿勢で腰に手を当て、「にぃっ」と悪戯っぽく笑った。

彼女が声を落とした先には、見慣れた級友達がいた。

先程までレイとハイタッチしていた女子生徒達も、一緒にキャーキャーと騒ぎ出す。

 

「やだぁ、なんか鈴原って目つきヤらしぃーっ!」

「相田の奴、カメラ回してないでしょうねー!?」

「あれ?碇くんもバカコンビとつるんでんのー?お目当てはアヤナンかなー?」

 

「バカとはなんや!それに何でセンセェだけ扱い違うねん…」

「シンジィ、お前ガン見しすぎてたんじゃないの?」

「見てたのはトウジとケンスケだろ?なんで僕まで…」

 

慌てて逃げるように、ランニングを始める男三人組。

使徒戦後の説教部屋と、その後の茶会を経て、彼らは互いを名前で…

あるいは碇シンジの事を「センセェ」なる仇名で呼び合う間柄になっていた。

 

「綾波…ええ乳しとったな…なぁシンジ?」

「あのふともも…ふくらはぎ…『グッ!』と来るものがあったな。なぁシンジ!?」

「だからどうして僕に振るのさ!別に、そんなつもりで見てた訳じゃ…」

 

と、いいつつシンジの顔は赤い。

なにより、健康的な性衝動(リビドー)がほとばしっている年頃の少年である。

 

レイの胸は、大きすぎるでも小さすぎるでもなく、素晴らしい形をしていた。

すらりと伸びた白い足は、少年達の目を釘付けにするだけの魅力があった。

この手の話に免疫のないシンジを、悪友二人はニヤニヤと弄る。

 

「嘘が下手だなぁシンジは。そんなつもりじゃないなら、なんなんだよ?」

「ムッツリスケベは()ぉないでぇ?ワシの目ェは誤魔化されへん!」

「まだ、信じられなくてさ。昔の綾波さんが、ほとんど喋らない人だったなんて」

 

彼女の肢体に色々な所が『熱く』なったのは確かだが、

シンジが未だに疑問に思っている事も間違いではなかった。

 

「まぁ、そらなぁ。何があったかワシらが知りたいくらいや」

「綾波もパイロットな訳だしさ、NERVの人が知ってるんじゃないの?」

「そうだね。じゃあ帰ったらミサトさんに聞いてみるよ」

「「…()()()()?」」

 

トウジとケンスケの足が止まり、

半オクターブほど低くなった声がハモる。

振り返って4つのジト目に睨まれたその時、

シンジは自分の失言に気づいて顔を引きつらせた。

 

「シンジ、ミサトさんってあの作戦部長さんだよな?

葛城一尉だっけ?あの時、俺達を注意した…」

「えらい美人(べっぴん)さんやったな。のォ…センセェ。

なんで帰ったらミサトさんがおるんや?キリキリ吐いてもらおか」

「あ…いや、あの。保護者、なんだよ。だから一緒に住んでて…」

 

トウジとケンスケの頭には、同じような言葉が羅列されていた。

一緒に住んでる…男と女が…一つ屋根の下で…つまりは…同棲!?

 

「「う、裏切りも~~ん!!」」

「えぇー!?何がー!?」

 

ケンスケは号泣しながらシンジの肩をガックンガックン揺すり、

鬼瓦の形相をしたトウジはヘッドロック&拳で頭グリグリ攻撃を仕掛け…

ランニングをそっちのけにしていたバカコンビ+シンジ…

後の『2年A組の3バカトリオ』は、

体育教師より校庭5周追加の罰を言い渡される事となった。

 

そして、放課後。

 

「もしもし…ミサトさん?お疲れ様です。

あの、今日トウジとケンスケが家に来たいって言ってて…

あ、はい。あの時の二人です…

え、えぇ!?ミサトさんが夕飯作るんですか!?

いや、確かに当番はそうですけど…

リツコさんも来るんですか?えぇ…解りました…じゃあ…」

「ミ、ミサトさんの手料理やて!?」

「男の夢じゃないかぁ!」

 

盛り上がる悪友達をよそに、電話をしているシンジは、気が気ではなかった。

彼らは知らないのだ。ミサトの料理が()()()()()を。

この時点で、本来の目的であった綾波レイの話題は忘却されていた。

 

心なしか、教室の反対側にいる洞木ヒカリ(イインチョ)の目が冷たい。

この前のお茶会ではトウジの隣に座って、ほんのり頬を染めていたから、

多分そういうことなのだろう。

 

逃げたい。逃げちゃダメかな?ダメか。

 

「二人とも…ウチに来るのはいいけど…後悔しないでよ」

「「ありがとぉっ!碇くんっ!」」

 

碇シンジの目は、ただただ、虚空を見つめていた…




みんな喜べ。美人のお姉さん()の料理だぞ。
この次もサービスサービスゥ(白目)

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