新世紀エヴァンゲリオン リナレイさん、本編にIN   作:植村朗

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新劇場版(サクラちゃん)ともゲーム版(ナツミちゃん)とも別の世界線なんで
鈴原妹ちゃんは違う名前にしてます。


15、トウジくんとケンスケくん、SEKKYOU部屋にIN

数時間前。第334地下避難所。男子トイレ。

 

 

……

 

………

 

 

「なぁトウジ、シェルターのロック外すの手伝ってくれ」

「はァ!?ケンスケお前…わざわざ連れション誘ったと思えば何言うとんねや。

ただでさえ洞木(イインチョ)に嫌味ィ言われてまでなぁ…」

 

「『もぉー!すずはらぁ?トイレぐらい避難前に済ませておきなさいよね!』」

「真似せんでええわ気色悪い。…んで?」

 

「ここで電波を受信しても、報道管制が敷かれてるからな…

公共放送で流れてんのは、綺麗な風景画と、長ったらしい文字説明だけだ。

…死ぬ前に見ときたいんだよ。本物(ナマ)戦争(ドンパチ)を!」

「はァー…お前が筋金入りの軍事マニア(ミリオタ)なのは知っとるがな…

外出たら冗談抜きに死んでまうでぇ?」

 

「シェルターにいれば絶対に安全、なんて保障はないだろ?

それに、『敵』が次にいつ()()()()()か解らない…

『…この時を逃しては、あるいは永久にっ!』」

「なんや声色まで変えて…世界大戦時代の旧日本軍か?

何のためにNERVがおるんやドアホウ」

 

「そのNERVの決戦兵器って何だよ?碇と綾波のロボットだよ!

あいつらが戦わなかったら俺達、生きてなかったぞ?

それをあんな風に殴っちまって…おまけに綾波には()()()()野郎扱いされて…」

煩い(じゃかぁし)!タ、タマぐらいあるわい!

大体な!あのロボットがヘボだったせいで、アキの奴が怪我を…」

 

「トウジは妹の仇を取ったつもりかも知れないけどさ、

あの優しいアッちゃんが『パイロットを殴ってくれ』なんて言うと思うか?」

「そ、そりゃあ…!」

 

「…トウジには、碇と綾波の戦いを見守る、義務があるんじゃないのか?」

「…それ建前やろ…お前、ホンマに自分の欲望に素直な()っちゃな…」

 

………

 

……

 

 

 

同日夜。NERV本部、ある一室。

 

 

「アホか――ッ!!」

 

エヴァンゲリオン零号機パイロット、綾波レイは会話の概略を聞くと、

バァン!と両手で机をぶっ叩き、絶叫。級友二人を赤い瞳で睨みつけた。

 

「相田ケンスケーッ!ちっぽけな満足感のために!なんでこんなバカやったーッ!?」

「か、返す言葉も、ございません…」

「鈴原トウジーッ!なんで便乗したーッ!?なんで相田を止めなかったーッ!?」

「ホンマ、軽率でした…スンマセン…」

「あの、綾波さん…二人とも反省してるし、そのへんで…」

「甘い!甘いよ碇くん!キミ当事者だよ!?てゆーか被害者だよ!?」

 

ケンスケとトウジは固い椅子に座り、縮こまっていた。

たしなめようとした碇シンジをもレイは一喝。

がるるる、と喉を鳴らして唸っている。

彼女が纏うLCLの残り香は血の匂い。まさに獣だ。

 

ちなみにレイとシンジが来る前にも、二人は多方向から

()()()()()絞られており、疲労と憔悴が見てとれる。

 

まずはNERV職員である彼らの父親達が召喚された。

トウジの父はアホをやらかした息子に、特大の拳骨を落とした。

 

『パパはね…ケンスケくんは、もう少し分別のある子だと信じてたんだけどね…』

ケンスケの父親が溜め息を交えながら口にした失望の言葉は、怒声以上に息子を震え上がらせた。

 

次に現れたのは、黒服二人を伴った葛城ミサト一尉だ。

 

戦闘を妨害し、シンジを危険に晒した事に始まり、

開けっ放しのシェルター入口から、同じように子供や同級生が出たらどうするのか…

家族に、級友に、教師に、どれだけ多くの人に迷惑や心配を掛けたのか…などなど。

 

厳重注意は長きに渡り、ケンスケが撮った映像(テープ)は機密として没収された。

最悪、スパイとして射殺される可能性もあった事を考えれば、温情のある措置だ。

 

ミサト自身は言わなかった事だが、場合によっては二人を

エヴァ初号機のエントリープラグに緊急避難させる選択肢も考えていた。

 

その場合、収容する際に無防備なプラグを攻撃されるリスクがあったし、

『別の人間の精神』という()()が混入すればシンクロ率低下も懸念された。

 

零号機という援軍がなければ、そうせざるを得なかった可能性も高く、

レイの強引な手腕により凍結が解除されていたのは、非常に幸運だったと言える。

 

…ただミサトは、彼らの心がポッキリ折れた後、話の最後に、

 

「もう二度と、こんな事はしないこと。それと…

思う事はあるだろうけれど、出来ればシンジくんやレイとは仲直りしてちょうだい」

 

と締めくくり、柔らかく微笑んでみせた。

 

 

数時間の説教の後、彼ら二人とパイロット二人の面会がようやく叶った。

 

「…碇、綾波、すまんかった!」

「俺からも…ごめん…こんな事になるなんて」

 

トウジとケンスケは、これ以上ないほど頭を下げた。

 

レイはまた言葉を叩きつけようとして、

隣のシンジが何かを言おうとしているのに気づき、彼に頷いて言葉を促す。

 

「その…僕も、ごめん!妹さんのこと、謝らなきゃいけなかったのに…」

「アキの…妹のことで八つ当たりしとったのはワシや。

それに、ワシらのせいで危のうなったのに、身体張って守ってくれたやないか。

この期に及んで碇を責めるなんて、ワシには出来(でけ)へん。

…落とし前や。ワシの事も殴っ(どつい)てくれ!」

「俺も、殴られる覚悟は出来てるから、頼むよ。

自分でも恥ずかしい事言ってると思うけど…ケジメは着けておきたいんだ!」

「…えっ!?そんな事、僕には…」

 

 

 

 

「だが断る!!」

「「えぇー!?」」

 

シンジが答えあぐねている間に、レイは腕を組み、言い放った。

渾身の覚悟を切り捨てられ、声を揃えるケンスケとトウジ。

 

「この綾波レイの最も好きな事のひとつはなんちゃらかんちゃら~って訳じゃないけどさ、

あたしは思ったわけだ。キミら殴っても、あたしらにメリットないじゃん?って。

()()は別の形で返してもらった方が面白いんじゃないか?って!」

「綾波ィ!?お前ホンマは性格悪いんとちゃうか!?」

「イヤーンな感じ!!」

 

うろたえる二人。言葉を失ったシンジを、レイは横目に映す。

 

「碇くん、甘いもの好き?」

「え?あ、うん。嫌いじゃないけど…」

「甘いもの食べたいと思わない?」

「い、いや、僕は別に…」

「ちなみにあたしは食べたいんだけど」

「アッハイ」

 

これ「NO」って言えないパターンだ、と悟ったシンジは、早々にレイの軍門に下った。

 

「よーし、んじゃー相田と鈴原にはケーキバイキングでも奢ってもらおうかな!

それでチャラってのはどーよ?あ、洞木委員長(ヒカリちゃん)も呼ぼう!

彼女にも迷惑かけたよねー?ねー!?」

「そ、そっち方面で借りを返せっちゅーんかい…小遣いが吹っ飛んでまう…」

「エヴァのパイロットって給料とか危険手当とか凄いだろうに…うぅー…」

「収入とか関係なく、()()()()()()スイーツは美味いのだよ、ふっふっふ」

 

嘆く二人をよそに、にんまりと笑うレイ。ちなみにその後、

 

「あ、僕は、ケーキバイキングじゃなくて、喫茶店のケーキセットでも、いいかなって…」

 

というシンジのフォローにより、予算は当初の1/3以下に収まり、

辛うじて財布の枯渇を免れたトウジとケンスケは、シンジに泣いて感謝した。

予定通りクラス委員長の洞木ヒカリ嬢も呼ばれ、和解も兼ねて和やかなお茶会が開かれたという。


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