新世紀エヴァンゲリオン リナレイさん、本編にIN   作:植村朗

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14、シャムシエルさん、○○○にIN

「最終安全装置解除!エヴァンゲリオン零号機、リフトオフ!頼んだわよ、レイ!」

「任せといて葛城一尉!あ、日向二尉(メガネくん)!現場に一番近い電源プリィーズ!」

「呼ばれ方はアレだけど了解、レイちゃん!B-8のソケットビルを開けておくよ!」

 

作戦部長・葛城ミサトの号令に、エヴァ零号機から綾波レイの元気な声が返ってくる。

日向マコトの指がキーに走ると同時、伊吹マヤ、青葉シゲル両名が目を凝らした。

 

「零号機、ハーモニクス正常、暴走なし!シンクロ率…ろ、67.0%…!?」

(すげ)ぇ…今のシンジくんを超えてるぞ…!」

「ほーらね?結局は相性の問題だもん。

初号機は碇くん、零号機はあたし。ついでに餅は餅屋ってことよ!」

 

先の暴走事故はどこへやら。零号機は軽やかに街から郊外への道のりを走る。

発令所のモニターには、レイの不敵な笑みが映し出された。

 

 

 

碇シンジの駆るエヴァンゲリオン初号機は、

前方から第四使徒に迫られ、後方には守らなくてはならない級友達が控え…

頭の上からはカウントダウンを刻むデジタル数字に追い詰められている。

 

「…相田、鈴原!早くシェルターに!もう僕に、これ以上傷つけさせないでよ!」

 

言い方にも響きにも余裕はない。

シンジの言葉は、お世辞にも格好の良いものではなかった。

 

だがそれでも、使徒の前に立ちはだかり、

A.T.フィールドで衝撃波(ソニックブーム)を防ぎ…

近づかれてフィールドを中和されれば、エヴァの手で光の鞭を押さえつける。

 

エヴァのプログナイフ同様、高速で振動し、高熱を発する光の鞭に

手掌部の装甲が融解し、シンジは苦痛に顔を歪めた。

 

(逃げちゃ…だめだ!)

 

民間人…級友の相田ケンスケ、鈴原トウジを守ることから逃げはしない。

エヴァの集音マイクは足元にいる彼らの声を拾えなかったが、頷いたのはトウジ。

うろたえるケンスケを何やら一喝し、彼の手を引いてシェルターへと向かった。

 

痛みと焦りで心理パルスは乱れ、初号機の動きにはブレが出ている。

シンジは、ミサトの出した撤退命令を遂行するべく

使徒を引きつけながら初号機を走らせていたが、

級友二人が安全域まで離脱したことが、皮肉にも気の緩みを産んでしまった。

 

「あぁっ!?」

 

光の鞭に足を払われてバランスを崩した初号機は、無様にも野原に倒れ込んだ。

赤黒い使徒の節足がユラユラと不気味に揺らめきシンジを威圧する。

 

(街まで、もう少し、なのに…!バッテリーは、残り…32秒!?こんな所でっ!)

 

…その時、太陽を背に跳躍する巨人の影が閃いた。

 

 

「うぉら喰らえぇA.T.フィールド中和ニードロップぅぅ!」

 

べちこーん!少女の叫びと共に、デカく、それでいてどこか間の抜けた音が響いた。

零号機の重量と落下エネルギーを乗せた膝が使徒の背中を直撃し、その身体を地面に縫い留める。

 

「綾波さん!」

「電源パージッ!碇くん!()()使って!」

 

バシュウッ…!射出音が電気の光を伴い、零号機からソケットが外れる。

オペレーターの日向マコトが用意した、現場に最も近い電源紐(アンビリカル・ケーブル)

レイは『身に着けて』持ってきたのだ。

 

その意図を汲んだシンジはソケットを初号機の手に取り、自らの背中に差す。

残り4秒。危うい所で外部電源に切り替わった。

 

「かーらーのー!?」

 

レイは第四使徒の背中に零号機の膝をブッ刺したまま、

鞭を発生させているT字型の器官に手を掛け、力任せに引き上げる…

みっしみしみしみし!!使徒の体組織が軋む音がした。

 

「「パロスペシャルぅ!?」」

「し、使徒の目玉模様が、涙目になってますぅ…!」

 

使徒のT字器官が『腕』に相当するかは不明だが、

昔の漫画で見覚えのあるプロレス技に青葉(ロンゲ)日向(メガネ)が声を揃え、

伊吹二尉(マヤちゃん)は両拳を胸に引いてカタカタ震えている…

 

ジタバタと、どこかコミカルに見える動きで暴れる使徒は、

ホールドされたT字器官から伸びた鞭を必死に振るって零号機を振り落とそうと試みていた。

 

(いった)(あっつ)!でも案外大したことないな!ぬっふふふ、そうだよねぇ~!

武器が(それ)じゃあ背中にいるあたしをブッ叩こうとしても上手く狙えないよねぇ~!?」

(((やだこの娘こわい!!)))

 

脳内物質(アドレナリン)がドバドバ分泌されてハイな気分のレイに、発令所中の職員一同が(おのの)く。

 

「そんじゃー…いーたーだーきーます!!」

 

次の瞬間、零号機の一つ目の下…つるりとしていたそこに()()()()()()が姿を現し、

獣のように使徒の頭…右脇に()()()()()()

 

「ゼ、零号機…顎部(がくぶ)拘束具…解除…!」

「まさか、暴走!?」

「いいえ、心理グラフはやや興奮状態を表していますが、レイの意識ははっきりしています!」

 

青葉二尉の震え声に、赤木リツコ博士が問うた。しかし彼女の弟子…マヤがそれを否定する。

ぐぐぐぐ、と食らいついたまま、首を持ち上げる零号機…腹部のコアが露わになり、

日向二尉はハッとして上司のミサトを振り返る。

 

「葛城さん!今なら!」

「ええ!シンジくん、聞こえる?レイが隙を作ってくれたわ!

…作戦変更!使徒にとどめを!」

「は、はい!うぉああああああっ!!」

 

シンジが我に返る時間は充分。気合い一閃。

プログレッシブナイフを装備し、身動きの取れない使徒のコアを一突き。

30秒そこそこで、赤いコアは光を失い…使徒は完全に機能を停止した。

零号機の予備電源を3分ほど残しての完勝である。

 

パリッ…ポリッポリッ…パリッ…ポリッ…

 

「ちょっとー!味覚ってフィードバックされないのぉ!?

イカせんべいっぽい良い音してるのに味が全然(ぜんっぜん)ないじゃん!

誰よ旨味出そうとか言ったの!うそつきー!」

 

使徒を咀嚼している零号機の中で、レイは過去の自分に対し呑気な悪態をついていた。

あまりに場違いなレイの言葉に、日向マコトの肩が震えている。

 

「しっししし使徒っ、せんめつ、ですっ!っははははは!」

 

笑い混じりの報告に緊張が一気に解け、伝染するように笑いに包まれる発令所。

その中でリツコと冬月コウゾウ副司令は、『何か』に気づき…冷や汗を流していた。


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