新世紀エヴァンゲリオン リナレイさん、本編にIN   作:植村朗

14 / 80
シャムシエル戦前のグダグダ
まだバトルしてません


12、シンジくん、再び戦場にIN

エヴァンゲリオン初号機・LCLに満たされたエントリープラグ内。

プラグスーツに身を包んだ碇シンジは、

何人もの声を、幾つもの言葉を思い出し、反芻する。

 

 

『必要があるから、お前を呼んだ。それだけの事』

(父さんがいないのに、何で僕はまたエヴァに乗ってるんだろう…)

 

『おう転校生!ワシの妹はな、瓦礫の下敷きになっとったんや!』

(人を傷つけて…殴られてまで…)

 

『人道に悖ると誹られても、他に手段がないの』

(リツコさん…仕方ない事なんですよね…)

 

『兵装ビル、3番と5番!誤射に気をつけて!!』

(でも、ミサトさんも、オペレーターの人達も、こんな僕と一緒に戦ってくれて…)

 

『誰かがやらにゃー、みんな死んじゃうでしょーが』

(ああ…綾波さんは強いな…何度も僕を守ってくれた…)

 

「…僕は…」

(ここにいる。今、自分の意思で)

 

 

ゆっくりと目を開き…シンジは、静かに待機していた。

 

 

 

 

赤木リツコ博士がエヴァンゲリオン零号機のデータを確認した結果、

確かにNERV総司令・碇ゲンドウの署名で凍結解除が為されていた。

 

零号機プラグ内の綾波レイはドヤ顔である。

LCLに満たされていなければ「ふんすー」と鼻息の一つも出ていたかもしれない。

 

「再起動実験も経ずに…よく解除されたものね…」

「零号機の暴走は『前のあたし』がビビッてたからっしょ?

それに初号機は実験する間もなくぶっつけ本番起動だったやん?なんとかなるなる!

凍結解除は司令室に乗り込んで『零号機使えるようにしてー!』

って()NE()GA()()しただけだし」

「お願…今なんだか不穏な響きだったわよ、レイ!?」

 

高町式交渉術…意味はよく解らないが、そんな言葉がリツコの脳裏をよぎった。

 

「という事で。司令は偉い人達に言い訳するため、土下座行脚(あんぎゃ)してる真っ最中でーす。

いやー、ありがたい!持つべきものは理解ある上司だね!うんうん!」

「「「Oh...」」」

 

明かされる司令不在の真実。…職員一同、溜め息をついた。

元々は太々(ふてぶて)しいまでの鉄面皮だった碇ゲンドウ司令だ。

土下座はレイが勝手に言っているだけで、嘘かもしれない。

 

が、ヒゲを失ってクリープを入れないコーヒーみてェになって以来、

我らがマダオさんは『女子中学生(JC)にアゴで使われている可哀想な総司令』として

「もしかしたら本当に土下座行脚してる可能性も?」「うん、ありうるかも?」

みたいな印象もある。

 

ともあれ、初号機だけでなく、零号機も戦力として使える事は解ったのだ。

使徒が再び迫っている今、ヒゲなしゲンドウを哀れんでいる暇は、NERVにはない。

 

「使徒、まもなく市内に侵入!」

 

光学観測と索敵レーダーからの情報を日向マコトが伝える。

作戦部長・葛城ミサト一尉の眼が鋭くなった。

 

「来たわね…エヴァの出撃は出来る?」

「初号機はすぐに。零号機はあと360秒で出撃可能です!」

 

伊吹マヤがモニターを見つめたまま答える。

 

「結構。シンジくん、初号機発進準備!レイは体勢が整い次第、零号機で援護!」

「は、はい!」

「りょーかい!」

 

初号機から届くシンジの声は、僅かに震えている。

 

「…碇くん、がんばって。後で、絶対助けに行くから」

「!!」

 

使徒や戦いへの恐怖がなくなった訳ではない。

鈴原トウジとの一件を吹っ切れた訳ではない。

だが、レイの声は、シンジの心に確かに響いた。

 

「…綾波さん、ありがとう。…エヴァ初号機、発進します!」

 

射出レールが火花を立てる。

あの時と同じように重力()に歯を食いしばりながら、シンジは出撃した。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。