新世紀エヴァンゲリオン リナレイさん、本編にIN 作:植村朗
今年も当小説をよろしくお願い致します
黒塗りの車が第3新東京市を駆ける。
街のビル群が
視界の後ろに流れていくのを、碇シンジは後部座席の窓から見た。
前回の使徒戦の後、葛城ミサトに連れられ、夕陽に照らされた高台から
『ビルが生えていく』第3新東京市の光景に目を奪われた事があるシンジだったが、
間近で姿を変えていく風景を見ると、改めて己が
『戦うために作られた街』にいる事を自覚させられ、ごくり、と唾を飲み込む。
サイレンの唸りが長く響いた。
シンジが初めてこの街に訪れた時と同様、
特別非常事態宣言が発令されたのは想像に難くない。
『NERV本部、第一種戦闘配置。繰り返します。NERV本部、第一種戦闘配置…』
「おっ、毎度おなじみ
…黒服のおにーさん!最速でヨロシク!」
シンジの隣、手元のタブレット端末を弄りながら、綾波レイは運転席に声を投げた。
ハンドルを握る『黒服のおにーさん』こと保安部のエージェントも慣れたもので、
黙って頷くと『さっきまでビルの屋上だった』地面を突っ切り、車をカッ飛ばす。
「イィィヤッフゥゥイ!!」
(綾波さん楽しそうだなぁ…)
拳を突き出し、ドライブ感覚でテンション上げ上げなレイ。
そのはしゃぎっぷりは、先程殴られたシンジを気遣ってのものか否か…
シンジは、少し心が解れるのを感じていた。
予定よりも早く発令所に訪れたチルドレン達を見て、作戦部長のミサトはニヤリと笑う。
「シンジくん、レイ、ご苦労様…良く来てくれたわ。マヤちゃん、お願い!」
「了解。映像、主モニターに回します」
指示を受けた伊吹マヤがキーに指を走らせると、
主モニターには我が物顔で箱根山間部を飛ぶ第四の使徒が映し出された。
赤黒いボディの形だけ見ればイカの胴体のようだが、
腹部には赤い
頭部に二つの目玉模様があり、ユーモラスな深海魚にも見える。
無人迎撃システムによる機銃やミサイルはA.T.フィールドに防がれてダメージゼロ。
盛大な税金の無駄遣いに、副司令の冬月コウゾウは苦笑していた。
国連上層部や委員会との折衝で多忙の父、碇ゲンドウ司令は姿が見えず、
シンジは残念なような、ホッとしたような、複雑な表情でモニターに視線を戻した。
「それにしても…来るペースが早いですね」
「この前の使徒は十五年のブランク。今回はたったの二週間だからね」
シンジの言葉に、眼鏡のオペレーター…日向マコトが答える。
ミサトが肩を竦めた。
「…敵さんはこっちの都合なんて考えちゃくれないってことよ。女に嫌われるタイプだわ」
「え、そう?キモカワイイ系っていうか嫌いじゃないデザインだよ?
あと何か美味しそう。煮込むと良いダシが出そう」
「見た目は関係ないわよ!ていうか飯テロやめてレイ!ビール飲みたくなるでしょ!」
レイの素ボケに、ミサトの本音がダダ漏れした。
…想像する。熱々で旨味たっぷりの魚介スープをアテに、冷えたエビチュをクイッと…
「これより、使徒を殲滅じゅる!」
「ミサト、ヨダレ拭きなさい」
親友、赤木リツコ博士に突っ込まれる作戦部長。赤面しながら口元を拭いて、Take2。
「…改めて。そろそろ上から『エヴァを出せ』ってせっつかれると思うんだけど…」
「葛城一尉、今まさに来ました。委員会からの出撃要請です」
「ありがと青葉くん。という事で、シンジくんには初号機で出て欲しいの。
ここ二週間の訓練でシンジくんの操縦技術は高まっているし、
シンクロ率は
初の一人乗り、がんばってちょうだい」
「は、はい」
前回は、先輩パイロットのレイが同乗していた安心感があったこともあり、
緊張した面持ちでシンジは頷いた。
「レイは乗機がまだないから今のところ待機で…」
「あ、零号機が凍結解除されてるはずなんで確認ヨロシク。
起動に時間掛かるかもしれないけど、あたしはそっちで出撃するよ」
「「「…え?」」」
レイの予想外の言葉に、幾つもの声が重なった。
数日前。
レイ「ゲンちゃんの!ちょっといいとこ見てみたい!」
ゲンドウ「ゼ、零号機の凍結を、現時刻を以って解除!」
レイ「ヨッシャアアアア Σd(゚∀゚ )」