新世紀エヴァンゲリオン リナレイさん、本編にIN   作:植村朗

12 / 80
2、シンジくん、第3新東京市にIN
7、病院の天井さん、リナレイさんの視界にIN
に画像らしきもの…?を追加しました


10、リナレイさん、体育館裏にIN

何日かが経った後。

 

鈍い打撃音が、昼休みの体育館裏に響く。碇シンジは殴り飛ばされて、尻もちをついていた。

 

二週間ぶりに学校に訪れた黒ジャージ姿の男子生徒…

鈴原トウジの突然の行動に反応が遅れ、相田ケンスケは血相を変えて友人を後ろから抑えた。

 

「おいトウジ!まずいよ!」

「離さんかいケンスケ!ワシはな、この転校生を殴らなアカン。殴っとかな気が済まんのや!」

 

 

 

事の初めは、3時間目の授業の終わり頃。

ネブカワ先生がいつも通りセカンドインパクトの苦労話を続けている時、

シンジのノートパソコンにチャットが飛んできたのだ。

 

>碇君があのロボットのパイロットというのはホント?Y/N

 

シンジが振り返ると、後ろの席の女子生徒二人が手を振っていた。

ケンスケは何も言わなかったが、彼と同様、感づいた者はいたという事だ。

 

S.Ikari>ごめん、ノーコメントで

 

小考した上に返したチャットは「違うならNOと返すはずだ」と結論づけられ、

良くも悪くもシンジの正直さゆえに、結局はパイロットである事が露見してしまった。

 

まるでヒーローを祭り上げるようにシンジを取り囲む男女。

授業中だから、と彼らを咎める委員長の洞木ヒカリ。

彼らの様子を見ていたトウジは、奥歯をキリキリと噛みしめていた。

そして、今に至る。

 

 

 

「おう転校生!ワシの妹はな、瓦礫の下敷きになっとったんや!

お前が操縦するロボットが派手にブッ倒れた拍子に、危うく死ぬ所だったんやぞ!

あのバケモンやのうて、味方のヘマで怪我させられてたら世話ァないわ!」

 

殴られた顔と、地に叩きつけられた痛みは、シンジに嫌でもあの戦いを思い出させる。

叩きつけられる怒声で、頭に血が昇り…謝るよりも先に、その言葉が口を突いて出た。

 

「僕だって…好きで乗ってる訳じゃない!」

「…おんどれ、もういっぺんブン殴ったる!歯ぁ食いしばれやぁ!」

 

静かだが、しっかりと通るシンジの声はトウジを激昂させた。

シンジの胸倉を掴んで立たせ、睨みつけ、弓引くようにトウジが拳を振り上げた瞬間…

 

 

 

 

「ちょいやァ――ッ!」

「ぶっふぉっ!?」

 

高い掛け声と共に、助走付きの飛び蹴りが横合いから襲い掛かり、

トウジは、スコォンッ!っと小気味よく吹っ飛んだ。

捲れ上がったスカートの中身が、茫然としていたケンスケの眼鏡に映る。

 

「し、白ッ!?」

「そーい!」

「ほぶわっ!?」

 

余計な事を言ったケンスケもまたハイキックを横っ面に喰らい、沈む。

ようやく身体を起こしたトウジは、シンジを庇うように陣取った『その人物』を見た…。

 

「…あ…!」

「くっそ、誰やねん…あ!?」

「ふうぅゥッ…!おー、すずはらー、やんのかー、おぉー!?」

 

彼女は、気の立った猫科動物のように、赤い瞳を細めて唸っていた。

 

腰を落として身体を半身に…両手の指を獣爪の形に構え…

隙あらば、もう一度飛び蹴りをブチかまさんばかりの体勢を取る、水色髪の女子生徒…。

 

「あ、あ、綾波ィ!?自分、ホンマに綾波か!?」

「おーよ、あたしだよ!綾波レイちゃんだよ!

事情は聞いた。つーか、さっき聞こえた!

妹さんの事はお見舞い申し上げる…だけどね!

 

主操縦士(メインパイロット)はあたしだったの!

よって!これ以上碇くんを殴るんなら!まずはあたしを殴ってもらおうっ!」

「綾波さん…」

 

へたり込んだトウジを前に、レイは構えを解き…肩幅に足を開いて腕を組む。

威風堂々、渾身の直立不動姿勢(ガイナ立ち)…!

シンジには、細身のはずの彼女の背中が、大きく見えた。

 

「…っ、お、女は殴らんわ!ともかく、今度から足元気ィつけや!」

「おー、逃げんのか鈴原ー!?マタ○キ付いてんのかー!?おー!?」

「や、やかましわ!行くで、ケンスケ!」

「うぅ…なんか気持ちよく空を飛んだような感覚が…」

 

中指をぶっ立てて煽るレイ。

その彼女に気圧され、うろたえるトウジ。

トウジに助け起こされるケンスケも、微妙に錯乱している。

レイの蹴りを喰らったケンスケの頬は僅かに赤くなった程度。

眼鏡はまったく無事。絶妙な力加減であった。

 

逃げるように遠ざかる二人を見送り、レイはシンジに手を伸ばす。

 

「さっきNERVから連絡あってさ。非常招集だって。立てる?」

「うん、ありがとう…行けるよ」

 

彼女のひんやりした白い手を取り、シンジは立ち上がった。

 

「…謝れなかった。謝らなきゃいけなかったのに。

カッとなって…売り言葉に買い言葉で返して…。

…人を傷つけたのは、僕だったのに」

「エヴァが倒れたのは、あたしが動かしてた時だから、

鈴原が怒るならあたしの方が妥当なんだけどね。

…碇くんが優しいのは解るけど、卑屈になるのはNGだよ。

あたし達は、やる事はやった。

それに、最終的にこの街を守ったのは碇くんなんだから、誇っていいんだよ」

「…ミサトさんにも、同じ事を言われたよ。でも…」

「あーもう!デモよりストより行動行動!行くよっ!

黒服のおにーさんが運転する車、迎えに来てるし!」

 

自罰のループに陥りかけたシンジに、レイが発破をかける。

二度目の戦いを前に、空は抜けるほど青かった。




この小説を書くにあたり、一番最初に思い浮かんだシーンが
「ちょいやー!」って叫びながらトウジくんに飛び蹴りかますレイさんでした。
ジャージは犠牲になったのだ…ネタ小説の犠牲にな…

なお賢明な読者の皆様はお気づきと思いますが
うちのレイさんは人のセリフを積極的に奪っていくスタイルです。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。