俺(HUMAN)と彼女(AI)の紡ぐ物語   作:鈴木龍
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第五話です。
この回で、プロローグが完結します(予定)
※書き始める前に言っているので、終わらない可能性があります。

それと、今回から、前書きの方でもタイトルコールしまーす。

第五話『(HUMAN)彼女(AI)の紡ぐ序章』

お楽しみください。


俺(HUMAN)と彼女(AI)の紡ぐ序章

彼女―ニーナちゃんを、俺達が面倒を見るようになってから一週間が経った。
その間に、他の隊員たちともよく話をするようになったし、何より、ここに来た当初より、表情や感情表現が豊かになった。
例えば、ここに来た当初は、常に無表情で怒っているように見えたが、今では、感情の機微がよく顔に現れるようになった。
しかし、なぜか他の隊員にはよくわからないようで、ここ二日くらいは、彼女はどこか遠ざけられている節がある。
「リュウ…なんかみんな、最近変…」
そして、それは彼女も薄々感じているようで、ここ最近は元気がない。
その表情は曇っており、悲しそうだ。


わたしが、ニンゲンたちと暮らすようになってから、一週間ほどが経った。
最初は、ニンゲン達は皆私を見るなり奇声をあげたりしていたが、今ではそのような気風はない。
むしろ、わたしを遠ざけ、敬遠するような気配がある。
そして、そんな彼らのわたしを見る目には、恐怖、困惑、そして、怒りの色がついていた。
人工知能のわたしには、ニンゲンの感情を完全に理解することはできないが、それでも、彼らはわたしを嫌い、憎んでいるのだということは、そんなわたしにも容易に理解ができた。
「リュウ…なんかみんな、最近変…」
そう言って、わたしの隣で夕食を食べているニンゲンを仰ぎ見る。
そのニンゲンは、わたしをここまで抱えて走ってくれた人で、その後も何かと私に世話を焼いてくれる。そのせいか、周りのニンゲンが冷たい目でわたしを見ても、彼はわたしを他のような冷たい目で見るようなことはしない。
…でも、いつか、彼もわたしを冷たい目で見るようになるのだろうか。
そうなったら、きっと、わたしは―
『ErrorCode045:FalseEmotionDriverError』
そんなエラーが、わたしの視界の隅に映る。
…まただ。どうも最近、このエラーが出ることが多い。
何故だ―?


夕食が終わり、部屋へと戻る。
部屋に戻ると、当然、分隊員の三人がいた。
その三人は、ニーナちゃんを遠ざけるような気配はなく、いつも通りだった。
だから、なぜ他の隊員たちは、彼女を遠ざけようとするのか。それを彼らになら聞けると思った。
「あのさ、みんな。ちょっと聞きたいことがあるんだけど…いいか?」
話を切り出すと、みんながこちらに振り向く。
「どうしたんだい。急に改まって。」
「話って、なに?」
「ん。大丈夫。」
三者三様の答えが帰ってくる。
「ニーナちゃんのことなんだけどさ、なにか、聞いてることはないか?ここ最近、なんか、みんなのニーナちゃんを見る目が少し変な感じがして…それで、気になったんだ。」
そう言うと、その場の雰囲気が変わった。
具体的には、目の前にいる二人―ホンダさんとヤマグチさんの顔に、焦りのような色が浮かび、息がしづらくなったような感覚だ。
「え…えっと、僕は、何も知らないかな。」
上ずった声で、視線を泳がせるのを必死に隠そうとするホンダさん。
「ぼ、ぼくも…なにも、しらない…」
さらにわかりやすく嘘をつくヤマグチさん。
…確信した。
彼女が遠ざけられているのは、決して彼女が怒っているように見えるからではない。なにか、彼女にとって良くない何かが噂となって流れているのだ。
なんとしても、それを突き止めなければ。
「コウキは…なにか、知らない?ニーナちゃんの噂とか。」
さっきの質問に答えなかったコウキに、問いかける。
こいつは嘘を吐くのが下手だし、そもそも嘘を吐かない。
そんなコウキなら、きっと正直に答えてくれるはずだ。
「知ってる。ニーナが―」
コウキが何かを言おうとした瞬間、ホンダさんが咄嗟にコウキの口を塞ぐ。
もごもごと何かを訴えようとするコウキの耳元でホンダさんが何事かを囁くと、コウキは大人しくなった。
やはり、彼らは何かを知っているのだ。
そして、それは、俺や彼女に聞かせられないものであるらしい。
「…やっぱり、何か知ってるんだな。」
そう言って、睨むようにホンダさんを見る。
そうすると、ホンダさんは、仕方ないといった感じで、こちらに近づいてくる。
そして、俺の目の前で止まる。身長差から、彼は俺を見下ろすような格好になってしまう。
「…場所を、移そうか。」
言われて、人の少なくなった、殺風景な食堂へと移動した。
俺とホンダさんのたった二人だけで食堂へ行ったことはなく、なんだか不思議な気分だった。
「ここで、いいかな。」
ホンダさんは、普段彼が夕食のときなどに座っている席に腰掛ける。
そして、俺は、彼の正面の空いている席に座った。
「…それで、ホンダさんは何を知っているんだ?」
聞くと、ホンダさんはなんだか辛そうな表情をして、話を始める。
「…実は、ニーナちゃんについて、今、噂が出回っていてね。」
やっぱりか。彼女についての噂が出回っているという予想は的中した。
「その様子からして、リュウ君の耳には届いていないと思うけど…ニーナちゃんは、人工知能、つまり、僕らの敵なんじゃないかっていう話があってね…」
そして、ホンダさんがぽつりぽつりと話し始める。
しかし、彼もニーナちゃんといる時間が多いせいか、あまり詳しい話は聞いていないようだった。
だが―
「サカキバラさんが?」
「ああ。」
一つ、耳を疑うような話があった。
それは、サカキバラさんが元は人工知能技術の開発者で、とある人工知能を作り出した結果、戦争が始まってしまったということ。
そして―
「ニーナちゃんの父親は―サカキバラさんだったのか…」
ニーナちゃんは、サカキバラさんが作り(生み)出したということだった。
「…あまり、驚かないんだね。」
ホンダさんが俺に問いかける。
「そう見える?結構驚いてるし、ショックも受けてるんだが…」
今までずっと接してきた相手が実は自分の敵でした、なんて、ショックを受けないわけがないだろう。
「でも…」
「?」
「俺は…どうしても、あの子が人類の敵だとは思えないんだよな…」
俺は、思っていたことを正直に口にする。
「…まあ、僕も、この話を聞いたときは、そう思ったよ。」
どうやら、ホンダさんもそう思ってくれていたようだ。
「だって…あの子の、あんなに悲しそうにしているところを見たら、悪く思えないよ。たとえ仮にあの子が人工知能だったとしても、敵ではないと思うし。」
俺とホンダさんの考えていることは同じだった。
それに、あくまでこれは噂話だ。
この話の全てが真実であるという保証はどこにもない。


…二人が何らかの話をしに、部屋の外へ出て行ってしまった。
その話とは、わたしに関係することのようだ。
…もしかして、わたしがニンゲンではないということがバレてしまったのだろうか。
ニンゲンと同じように暮らして、ニンゲンではないことを悟らせないようにしてきたはずなのに何故…?
何故と問おうとして視線を投げるも、一人には目を逸らされてしまう。
もう一人に視線を向けてみても、何も考えていないのか、ぼうっとしているだけだ。
この二人から情報を引き出すことは難しいだろう。
だが、彼ならきっとわたしに答えてくれるはずだ。
彼にならきっと話せるはずだ…


部屋に帰ろうとすると、様々な思考が頭をよぎる。
―今までのこと。
今まで敵だと思っていた存在と共に暮らしていたことが、なぜか妙に心地よく感じられた。
それは彼女の人間らしさ故かもしれないが。
―これからのこと。
彼女が敵だと知ってしまったら、俺は今まで通り彼女に接することができるのだろうか。
…変に意識するのはやめよう。
そう思って、もう慣れた自分らの部屋の扉を開ける。
しかし、扉をくぐった先の光景には慣れないものがあった。
彼女が敵であることを意識してしまって、どうにもうまく頭が回らない。
…あれは噂で、何の根拠もない。誰より彼女のそばにいた俺が気づかないわけないだろう。
いつも通りに振る舞おうとしても、うまくいかない。
ああ、彼女が俺を見ている―
―その瞳は、なんとも悲しそうで、なんとも機械じみていた。


外に出て行った二人が部屋に戻ってくると、背の低い方のニンゲン―リュウの様子が明らかに変わっていた。
その目は、他のニンゲンのそれと同じように見えて、わたしに対して何らかの疑念を抱いているようであった。
…彼だけは、わたしを信じてくれると思っていた。
しかし、それも空しく、彼もわたしを信じることはなかった。
『ErrorCode045:FalseEmotionDriverError』
…ああ、またエラーを吐いてしまった。
こんな頻繁にエラーを吐くような欠陥品では任務遂行など難しいだろうな…
…もし、任務遂行が不可能と判断されれば、彼らとは離れ、わたしの生まれた場所へ戻るのだろう…
そう思った瞬間、目の前が同じエラーで埋め尽くされる。
…やはり、わたしではだめだったのか…


俺が部屋に戻ってから、彼女の様子がおかしかった。
いつもは、ずっと俺や他の分隊員と話していた彼女が、今は一言も喋らず、瞳には感情の光が宿っていないように見えた。
時折悲しそうな表情になるが、それも一瞬で、次の瞬間には、また感情の色が消えてしまっている。
その様子は、どこまでも機械的だった。
…やはり、彼女は俺達の敵だったのだろうか。
そんな考えが頭を埋め尽くす。
しかし、それに対して、俺の頭は違うと言っていた。
「人工知能って、本当に俺らの敵なのかな…」
誰の耳にも届かないような小さな声で呟く。
考えてみれば、俺とコウキがこのシェルターに辿り着くまでに、人工知能からは一切攻撃を受けていなかった。
さらに考えれば、彼らの能力を持ってすれば、このシェルターを容易く発見した上で、跡形もなく滅ぼせるのではないだろうか。
考えてみれば―考えてみれば―考えてみれば―
考えれば考えるほど、彼らが敵であるとは思えなかった。
それに、彼女にも悪意があるようには見えない。
…彼女に本当のことを聞いてみよう。
彼女が本当に人間ではないのか。だとしたら、人工知能は人間に敵対しているのか。
それを聞いてみよう―
そう思って彼女を見たが、残念ながらそれができる状態ではないようで、先ほどよりも人間味がなくなっていた。
それはまるで、事切れた人のようだった―


わたしだけを部屋に残して、ニンゲンたちが外へ出ていく。
夜のこの時間になると、毎日そのようにして、わたしだけが部屋に残る。
そして、わたしは、ニンゲンがこの部屋から居なくなるこの時に、久しくしていなかったマスターとの通信を開始する。
「…どうした。試作対人間対話型(A H D P)27号機。まだ作戦は第二段階で止まっているようだが。」
通信をする理由はなんだと言外に問われる。
「申し訳ありません、マスター。残念ながら、今のわたしでは作戦の遂行は困難だと判断しました。そのため、そちらへ帰投する前に連絡をと思い、連絡を。」
しばらくの間、マスターが熟考するように無言になった後、音声が帰ってくる。
「…当機の度重なるエラー発生は確認した。それを当機が任務遂行不能と判断した理由だと推測し、当機に命令する…任務を続行(・・)せよ。」
しかし、帰ってきた答えは、意外なものだった。
「…なぜ、ですか…今のわたしでは…」
「案ずるな、予定通りだ(・・・・・)。それでは、作戦第二段階の当初のように、当機が最も信頼を置いている人間と接触しろ。以上。」
そう言って、通信がぶつりと切れる。
その影響で耳に残るノイズに不快感を覚える。
しかし、それ以上に、予定通りだと言われた違和感が強かった。
一体、どういうことなのだろうか―?


点呼を受けて帰ってくると、彼女の瞳に光がほんの少しだけ戻っていた。
それの意味するところは分からないが、恐らく彼女が元気になったということだろう。
だったら、今日のところは休ませてあげて、明日になったら、彼女に本当のことを聞いてみよう。
そう思って、今日は眠りに就くことにした。
…ちなみに、俺は今日も雑魚寝で、ニーナちゃんは、俺のベッドで寝ている。

―目が、覚める。
目覚めたばかりで微睡む視界に光はほとんどなく、今がまだ朝早くか、深夜であることを物語っている。
早すぎる起床にもう一度眠りに就こうとすると、何やら自分のそばに何者かの気配を感じる。
もしかして。
そう思った。それはまるで、一週間前の朝によく似ていたからだ。
そして、気配のする方へと視線を動かすと、一つの視線と目が合う。
その視線の元には、どこまでも人工的で、ガラスのように光を反射するのみの無機質な薄赤い瞳があった。
そして、その双眸は、まっすぐに俺のことを捉えており、何かを縋っているようにも見えた。
「…よいしょっと。」
体を起こす。
すると、彼女の視線は俺の顔を追いかけて、上に持ち上がる。
「今度はまた、どうしたの?」
そう彼女に問いかける。
俺が質問したいところだが、彼女の方から用があってきたのだと思うし、まずは彼女の話を聞くべきだろう。
「…あなたは―リュウは、わたしについてどこまで聞いたの?」
聞かれて、返答に困る。
彼女の口からその言葉が出てくるということは、やはり彼女は、人工知能だったのだろうか。
「…もしかして、ニーナちゃんが、人工知能だってこと?」
平静を装って、彼女に反問する。
しかし、その彼女はどこまでも悲しそうな表情を浮かべた。
「……そ、う、だよ…わたしは…」
彼女が、今にも泣きつぶれそうな―人工知能に『泣く』という概念があるのかは知らないが―声で、細々と呟いた。
どうしたらいいのかわからない。
女の子を慰めるなんて初めての経験だ。やり方がわからない。
しかし―
「お、俺は…」
勝手に口が動き出していた。
「俺は、ニーナちゃんが人工知能でも、嫌ったりすることはないよ。」
自分でも何を言っているのかわからない。
しかし、彼女は、俺の方へ向き直る。
「…どう、して…そう、思うの…?」
―ああ、そうか。
なぜ自分が、あのようなことを口走ったのかが遅れて理解できた。
俺は―
「俺は、人工知能のことが、敵だとは思えないんだ。もし本当に奴らが俺らの敵だったら、人間なんて一瞬で滅ばされてるだろ?」
俺は、人工知能のことが嫌いではないのだ。
別段、他の人のように、嫌っているわけでも、憎んでいるわけでもない。
かといって、好いているかと言われれば、返答に困るのだが。
「…ほんとうに…?」
「本当だ。」
今の自分にできるだけの強がりを見せて、精一杯力強く肯定してあげる。
すると、彼女の瞳に、今までほとんどなかった感情の色が戻り始める。
「…よかった…」
そして、色のともった瞳に映る感情は、安堵、安心だった。
「…じつは、わたしのことを知っても、わたしのこと、わたしたち(A I)のことを嫌わない人を探してた。」
そうして、彼女は、自分がここに来た理由について話し始めた。
「…わたしは、作られてからすぐ、任務でここに来た。任務の目的はわからないけど、わたしたちが信頼できる人を探せって、言われてた…」
彼女によれば、彼女はまだ作られてから間もないようで、人工知能の内情について多くは知らないという。
しかしそれでも、彼女に聞かねばならないことがあった。
「…ニーナちゃんたち(A  I)はさ、俺達人間をどうしたいと思ってるの?」
彼女は多くのことを知らない。
しかし、自分たちの行動理念なら知っているのではないだろうか。
そう思って、彼女に問いかける。
「…わたしは、わたしたちは…ニンゲンと、仲良くしたいと、思ってる。」
それを聞いて、安心した。
やはり俺の考えは間違っていないようだ。
「そっか…よかった…」
ならば、何もこんな子供に怯えることはないじゃないか。
一瞬でも、彼女に怯えていた自分が馬鹿らしかった。
「それで…リュウにお願いしたいことがある。」
無言を持って了承とし、彼女の次の言葉を待つ。
「…リュウに、わたしと一緒に来てほしいの。」
「…行くって、どこに?」
彼女の言っていることがわからなかった。
いきなりすぎて、理解が追い付かない。
「えっと、さっきも言ったけど、わたしは、わたしたちを嫌わない人を探してて、任務では、その人をわたしたちの本拠地に連れてくることになってて…」
やがて、理解がだんだん追いついてくる。
彼女がさっき、人工知能を嫌わない人を探していると言っていたが、それは、彼女らの本部へと連れて行く人を選りすぐっていたということだったのか。
しかし、俺にも都合というものがある。
今すぐに行く決断をすることはできない。
「…少し、時間をくれないかな。俺にも、考える時間が欲しい。」
さしあたって、まずは、サカキバラさんに話しに行こう―

時は経ち、朝の点呼の時間。
点呼が終わると、俺は統括本部の三階にある執務室に、ニーナちゃんを伴って来ていた。
「中佐、お話ししたいことが。」
儀礼的に言葉を口にして、話を切り出そうとする。
しかし―
「そこにいる人工知能の少女について、かな?」
自分が話そうとしていたことを先回りされる。
そんな彼の視線はニーナちゃんへと注がれていた。
やはり、軍の上層部に話すのはまずかったのだろうか…
そんな考えが頭を掠めた時、彼から耳を疑うような言葉が聞こえてきた。
「いや、君のような人を待っていたよ。最初にあったときは頼りないと思っていたが…そうか、君が…」
彼は、『待っていた』と言った。
それはまるで、彼が、彼女に任務を課したかのようで―
そこで、噂の一つが、記憶から蘇る。
―ニーナちゃんは、中佐が開発したんだよ―
ホンダさんは、そう語っていた。
「…まさか、彼女は、あなたが開発したんですか…?」
「開発した、というのは少し違うかな。私が作ったのは、別のものだ…まあ、その少女にそっくりではあるがね。」
サカキバラさんは、それが戦争の引き金となったとも言った。
「…それで、君は、どうしたいんだ。」
何もかもお見通しだ、というように、サカキバラさんに問われる。
「俺は―」
それで、俺の決意が固まる。
「彼女と共に、人工知能の本拠地へ行きます。」
そう言うと、サカキバラさんは意外そうな表情を浮かべ、嬉しそうに頷く。
「そうか…それでは、こちらの方は私が手配しておこう…ところで、服装はそれでいいのか?」
「俺の持っている服装と言ったらこれくらいなものなので…これだけで十分です。」
「違う、君のではない。」
サカキバラさんは、ニーナちゃんへと視線を向けていた。
その視線の先には、彼女には大きすぎる俺のジャージの上だけを着て、立っているニーナちゃんがいた。
「…わたしは、これで、大丈夫…です。」
彼女がそう言ったせいか、彼は、それ以上服装について言うことはなかった。
その後、持っていきたいものはあるか、いつ頃戻ってこられそうか、などの質問を受けた。
そして、質問が終わると、サカキバラさんの雰囲気が一層柔らかいものになる。
「…しかし、彼女もやるようになったなぁ…」
そして、そんな呟きをこぼす。
言いながら、ニーナちゃんを見る視線は、まるで子供の成長を喜ぶ父親のようであった。


…ついに先に進めた。
こんなわたしでも、できたのだ。
その思いで、疑似感情ドライバがいっぱいになる。
嬉しい。
そんな思いをこんなにはっきりと感じたのは初めてだ。
これでやっと、作戦の次の段階へと進めるのだ。
まずは、マスターに報告しよう。
そう、考えをまとめた。

わたしと彼―リュウが初老の男との話を終えた時は、すでに他のニンゲンたちが訓練を始めている時間帯だった。
なので、わたしと彼は、誰かに別れの言葉を告げられるということもなく、シェルターを旅立つことになった。
シェルターを出たところで、わたしはマスターとの通信を開始した。
「…作戦第三段階への移行を確認した。任務遂行御苦労。」
いつもより長い時間を空けて、マスターが通信に応じる。
「はい。これより、そちらに帰投します。」
「いや、それには及ばない。こちらから輸送機を一機よこそう…当機の絶対座標を確認。暫し待たれよ。」
マスターがそう言って、しばらく無言になる。
すると空から、キーン、という甲高い音が聞こえてきた。
見上げると、飛行機雲を率いてこちらに向かってくる何かが見えた。
やがてそれはわたしたちの上空で停止し、轟音をあげて地上に降りてくる。
近くで見ると、確かにそれは輸送機だった。
しかし、人の乗るスペースは狭く、詰めても三、四人ほどしか乗れなさそうだ。
そして、それの到着と同時に、マスターの音声が頭に流れ込む。
「輸送機はそちらに到着しただろう。それに乗り込んでくれ。後は、自動でこちらに向かうようになっている。」
そう言われて、輸送機に乗り込む。
「リュウ…これに乗って…」
マスターの声が聞こえていないリュウに、そう促す。
すると、恐る恐るといった感じで、輸送機に乗り込む。
それを合図に、輸送機の扉が勢いよく閉まり、再び轟音をあげて、上空へと飛び立つ。
ビル群よりも遥かに高く高度を上げると、上を向いていた左右の両翼が同時に前を向く。
すると、今までよりもはるかに速いスピードで、景色が後ろへと流れていく。
しばらくして、眼下には無機質な光であふれるビル群が広がってきた。
それは、わたしの故郷で、あまり長くはいなかったはずなのに、妙に懐かしく感じられた。
そして、輸送機が両翼を上に向けると、ゆっくりとした速度で、高度を下げていく。
機体が地面に着くと、扉が自動で開く。
わたしが降りると、彼もわたしに従うように、ゆっくりと降りてくる。
「ここが…ニーナちゃんの生まれたところ…」
感慨深げに、彼はそう呟いた。
「うん…わたしも、あまり長くいたわけじゃないけど…ここが、わたしの故郷。」
そして、目の前に、第三者が現れる。
「当機の帰投を確認…いや、お帰り、ニーナ…そう言ったほうが良いのか?」
マスターが、わたしの目の前に立っていた。



…プロローグ、終わらなかった気がします。
自分でも、どこまでがプロローグなのかはわからないんですけど、なんか、消化不良って感じが。
あ、いえ、分かってるんですよ?
きっと皆々様が仰りたいことはこうですよね?
「わかってんなら、もっと書けよ!」―と。
そうですよね?
アレなんですよ。こっちにも理由というものがありましてね。
張った伏線を同じ回で回収するのはどうなのかなー、とか。
いい加減出さないとおせぇとか言われるよなー、とか。
そんなこんなを感じて、こんな感じで終わってしまいましたーァッ!
スンマセンしたァーッ!
長くなりましたが、今後は隔週投稿を目指していきます。






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