オルガマリーSIDE
閃光と爆音に気がついた。
私は、このまま死ぬのだろうと思い恐怖で目を瞑ろうとする。
でもその背中はまるでそうするのが当然と言わんばかりに、私の前に現れる。
「
それの背中が私の呼んだサーヴァントだと気がついた時、彼は私にあの笑顔で笑いかけ、花弁の形をした盾が展開される。
盾が出現した直後に、私を取り囲む様に現れる結界。
結果として、私は彼が展開した盾と結界のお陰で火傷の一つも負うことは無かった。
「ご無事ですか?マスター 」
盾を消して、私の方を向くセイヴァー。
その顔が余りにも嬉しそうで悲しそうで、私は彼をまともに見ることが出来なかった。
きっと彼は、私以外も守りたかったのだろう。
でも、それは叶わなかった。視界に入る惨状と火傷しそうな熱気を感じたからわかった。
礼は後で言おう。それより、生存者を探す方が優先だ。
「セイヴァー!生存者を探して 」
「了解です。マスター 」
セイヴァーが私から離れて、生存者を探しに行く。
私も探そうと思って、気づいた。
足が震えて動かない。思考と体が一致していない。
怖い。もし、セイヴァーが後少しでも遅れていたら?
もし、また爆発が起きたら?
そう考えたら、体が動かなくなった。
何で、私は肝心な時にこうなってしまうのだろう。
どうしてなんで?
そんな事を考えてしまう。違うでしょ!今すべきことは、生存者を探して適切な処置をする。
頭では分かっていても動かない。
「大丈夫ですマスター。一名を除き重傷ではありますが全員生きています。
ですから、自分を責めないで下さい。この様な状況で咄嗟に動ける人間の方が珍しいのですから 」
セイヴァーが動けない私に話しかける。
その表情から私を気遣っているのが伝わる。
「マリー!?生きていたのかい!」
ロマニとあれは確か、私の説明を遅れてきた挙句寝ていた一般枠の適正者。
『動力部の停止を確認。発電量が不足しています 』
「ロマ二!」
「分かってる。僕は、地下の発電所に行く 」
ロマニが部屋を出て行き、地下へと向かう。
「マシュ!?」
男が叫び声をあげて、走って行く。
マシュ?確か、セイヴァーは一人を除いてみたいな事を言っていたわね。
まさかその一人って!
「マスター。申し訳ございません。俺の力不足でマシュ・キリエライトは… 」
セイヴァーが俯いて報告する。
私の予想は当たっていた。彼女はもう助かる事のない傷を負っていると。
「マシュ!…この傷じゃもう… 」
「理解が早くて助かります。立香さんも早く逃げないと… 」
その瞬間、私はカルデアスが真っ赤に染まるのを確認できた。
人類史が燃えている?どうして、今までは人類の滅亡だけだったのに。
『レイシフトの定員に達していません。
該当マスターを検索中…発見しました』
「この状況でレイシフトを行おうとしているの!?」
コフィンの中のマスター達は、全員バイタルが基準に達していないだろう。
そうすればこの状況から選ばれるのは…
『適応番号01 オルガマリー・アニムスフィア
適応番号48 藤丸 立香をマスターとして再設定します 』
必然的に私と彼になる。
「セイヴァー、近くに来て 」
私の言葉に反応しセイヴァーがすぐ近くに来る。
これでレイシフトしても離れる事はないだろう。
『アンサモンプログラム スタート。
霊子変換を開始します 』
コフィン無しのレイシフトは成功率が低いけど、どうにかなるかしら?
「マスター。震えていますよ?」
セイヴァーが私の手を握る。
その暖かさに私は安心する。大丈夫、セイヴァーがいてくれれば私はやっていける。
「……あの……せん、ぱい 」
「何?マシュ 」
「手を、握って貰って、良いですか? 」
「それぐらいで良いのなら 」
瀕死のマシュと彼も手を握る。
そしてーー
『レイシフト開始まで、3、2、1。
全行程クリア。ファーストオーダー実証を開始します 』
私達は、2004年の冬木へレイシフトした。
三人称SIDE
「レイシフトは無事に出来たな。とは言え、この状況は大変だな 」
セイヴァーは周りを見て、呟く。
彼のすぐ近くには、レイシフトの影響で気を失っているオルガマリーがいる。
そして、二人を取り囲むようにスケルトンの群れが現れる。
「霊脈の真上だからなのか?この数は 」
足元から感じる圧倒的なまでの魔力。
視界を覆い尽くすほどのスケルトンは魔力を求めて集まったのだろうと結論づける。
「ふー、一体一体を相手にしていたら、キリがないな。
大軍を相手に戦える力があるのは…アルテラ、力を借りるぞ 」
セイヴァーの手に赤、青、緑の三色の色がある剣が現れる。
軍神ーマルスの剣。
「お前達を破壊する。……一度言ってみたかったんだよな 」
剣が鞭の様にしなり、一回転してスケルトン達を砕いていく。
弓矢が飛んで来る。オルガマリーに当たりそうなものだけ弾く。
「幾ら何でも、数が多いな 」
軍神の剣で大半を砕いても、倍の数ぐらいの補充がくる。
一度に吹き飛ばそうと思えば、取れる手段があるセイヴァー。
しかし、著しくマスターの魔力を消費する為、やりたくはない手段。
「後で謝るので、許して下さいマスター。
…メディア、力を借りる 」
軍神の剣が消滅し、代わりにセイヴァーの魔力量が上がる。
キャスタークラス。しかも、神代の時代の魔術師の行使。
「ーーー 」
高速詠唱により、言葉にすらならない言語がセイヴァーから紡がれる。
直後に大量に現れる術式。
そこから放たれた魔術は、スケルトン達を一掃するに相応しい一撃だった。
「…はぁ、流石にメディアの魔術の行使は疲れるな 」
「ひゃあ!何!今の爆音 」
先程の魔術による爆音で目を覚ますオルガマリー。
彼女の驚いた声が可愛いと思ったのは、セイヴァーだけの秘密だ。
「無事にレイシフトは完了しました 」
「さっきの爆音は何ですか?」
「スケルトン達を一掃するのに使った魔術の影響です 」
「道理で、魔力が減ってると思ったわ 」
起き上がりながら、言うオルガマリー。
その表情に疲労は見られない。消費した魔力は彼女にとって疲れるほどの量ではなかったのだろう。
「48番のマスターは?」
「この場にはいません。おそらく、先程の音でこちらに来るはずです 」
「そう。では、この場で待ちましょう。はぐれていては危険です 」
「了解です。マスター 」
返事を返し考えるセイヴァー。
この先は、自らが知っている状況から離れていくだろう。
すでに知っている状況から大きく外れている。何かイレギュラーが起こることもあるだろう。
だが、俺は彼女を守ると決めた。何が起ころうが、彼女が生きる未来を勝ち取る。
「あそこです!先輩。頑張って下さい 」
「待って、マシュ 」
視界に小さく映った二人を見つけ、覚悟を決めるセイヴァー。
さぁ、二度目の人理修復を始めよう。
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