願いを込めて   作:マスターBT

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予定より遅くなってしまった…



女神と雷光

ステンノに案内され、たどり着いた地下迷宮。

建築の様式から、古代ギリシアの建築物だと判断できる。不気味な気配が、漂い迷路のように入り組んでいる道を、立香に背負われているステンノは一切の迷いなく、方向を指示していく。

 

「ここに来たことあるの?ステンノ」

 

「ありませんよ。ほら、そこの道は右に曲がってくださる?」

 

あまりにも迷いなく進んでいくから、疑問を持った立香が質問するが、その答えは余計に混乱するものだった。

一度も来ていない場所をこうも簡単に案内できるものなのだろうか。

それに、ステンノ以外のサーヴァントは敵の気配を感じているものの、こちらに来ないという不思議な状況に若干戸惑っている。

 

「ヒントぐらいは言っても良いんじゃないか。ステンノ」

 

「無粋な人ね」

 

「教える気ないんだな……分かったよ」

 

受け流すステンノに呆れつつ、セイヴァーは歩く。

ステンノが選ばなかった道をチラリと見ると、そこにはエネミーの群れがいるのが確認できる。

やはり、完全に道を理解し、進んでいると判断できる。

 

「なんだよ、セイヴァー。女神様の手品、その仕掛けを知ってんのか?」

 

「…ああ。だが、俺に答えを言う権利は剥奪されている様だ。女神に逆らうのは、後々面倒だからな」

 

セイヴァーの言い方に、つまんなそうにしながら、肩を組んで来るクー・フーリン。

 

「それはないぜセイヴァー。ほれ、俺にだけボソッと…な?」

 

鬱陶しそうにしながらも、クー・フーリンの肩組みを外さないセイヴァー。

その様子に観念したと判断したクー・フーリンが、言葉を発する前に、セイヴァーが口を開く。

 

「その目で確かめると良い。答えが向こうから来てくれたぞ」

 

視線でクー・フーリンに指示を出す。

 

「随分と、逃げたわね。(エウリュアレ)

 

「……なんでそっちにいるのよ。(ステンノ)

 

そこには、仮面をつけた大きな英霊に守られる様に立っている、ステンノと瓜二つの英霊がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーー以上が人理と私達、カルデアの状況です。理解していただけましたか?」

 

「とりあえずね。貴方達が、あのド変態サーヴァントと無関係なのは、(ステンノ)がいるから、なんとなく分かってたけど。

それで?私やアステリオスに、その人理修復だっけ?それに、協力しろって言うの?」

 

ステンノと瓜二つの英霊。真名は、エウリュアレ。ステンノの姉妹だ。

特に、ステンノとエウリュアレは、繋がりが深い。これを利用していたから、ステンノが初めて来るこの迷宮を我が物顔で、立香におんぶされながら、進んでいたのだ。

 

「えぇ。貴女の発言と様子を見た限り、誰かに追われているのよね?厄介ごとは、避けて通りたいところですけど、貴女を追っている存在が私達にとって、必要な物を持っている可能性もあるのです。

簡単に言えば、私達貴女を守る戦力になります。ですから、私達に必要な時は協力してほしい、と言うわけです」

 

オルガマリーが、エウリュアレの質問に互いの利害が分かりやすい様に説明する。

 

「もし、信用が足りないというのなら、此方にステンノが居る事も踏まえていただければ」

 

「私は貴女に協力している訳ではないのですけれど」

 

「ステンノ、せめて小声で。話がややこしくなっちゃうぐぇ…」

 

ステンノが茶々入れようとしたのを、立香がやんわりと止める。

しかし、それが気に食わなかったのか首に回されている手で、首を軽く絞められる立香。

ステンノの我儘を叶えているのに、首を絞められるとは実に憐れな立香である。

 

「………アステリオス。どうする?」

 

「おまえ、が、いく、なら、ついてく。ひとりは、さびしい」

 

「そう。……なら、良いわ。貴女達に、付き合ってあげる」

 

アステリオスと呼ばれたバーサーカークラスのサーヴァントの返事に、嬉しそうにしながら返答するエウリュアレ。

その様子を愉しげに見るステンノ。どうやら、弄るタネを見つけた様だ。

 

「ありがとう。貴方達の助力感謝します。女神、エウリュアレ。雷光を冠するアステリオス」

 

オルガマリーの返礼に、驚くエウリュアレと、アステリオス。

 

「ミノタウロス、と、よばない?」

 

「それぐらいの礼儀はあります。何より、女神、エウリュアレがミノタウロスではなく、アステリオスと呼んでいる。

なら、それなりの理由があるはずです。魔術の研鑽は歴史を知るという面もありますから、当然、貴方の事も知ってます」

 

オルガマリーは、他人に認めてもらうために努力を惜しまなかった。

その知識は、怪物ミノタウロスの真の名前を覚えていた。

普段の、カルデアで誰かに認めてもらうために焦っていた彼女なら、エウリュアレの呼び方など、気にしていなかっただろう。

だが、今は周りにいるカルデアのメンバーに、そして何より大切な相棒(セイヴァー)が自分を認めてくれる。

その余裕が、彼女本来の性格を表面に出させていた。

 

「なら、アステリオスと呼ぶべきだと、そう判断しただけの事です」

 

そんな簡単な事です。そう言わんばかりの態度にエウリュアレは、微笑み、アステリオスは嬉しそうに笑った。

 

「では、行きましょう。出口まで案内頼めるかしら?」

 

「良いわよ。…あ、そうだ。

アステリオス、肩に載せなさい」

 

エウリュアレの指示に、身を屈ませるアステリオス。

 

「よっと……あらやだ、駄妹(メデューサ)以上に高いじゃない」

 

「う、う、う……」

 

「ってきゃあ!もうちょっとしゃがんで頂戴な!

頭が擦れちゃうでしょ!」

 

「うぅ…」

 

エウリュアレの言葉に身を縮こませるアステリオス。

微笑ましい光景に、この場の全員が笑う。

 

「あんなの見せられたら、人食いの化け物には見えないわね。セイヴァー」

 

「そうですね。とても、優しい怪物です、彼は。

それと、マスター。お疲れ様です。的確な説明でした」

 

オルガマリーに返答をしつつ、一度。一度、だけ頭を撫でるセイヴァー。

セプテムでの約束を果たしている様だ。

 

「あ、ありがとう…セイヴァー」

 

頬を赤く染め、俯くオルガマリー。セイヴァーから、隠れているがその表情はニヤケていた。

セイヴァーとオルガマリーのやり取りに気づいた立香とマシュは互いに顔を見せ合わせて、笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

女神エウリュアレと、アステリオスを仲間に加えたカルデア一行。

しかし、順調に思える彼らの旅路にその影はしっかりと伸びていた。

 

「デュフフ、エウリュアレ氏。待ってるでござるよー!!」

 

「「はぁ……」」

 

……伸びているのである!

 




黒髭難しいぃ……

みなさん、第2部の第2章どんな感じでしょうか?
私は、2日程前に空想樹を切除しました。ネタバレを避ける感想になると、一つだけ。
フォウ君が元気すぎて、怖いです。

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