願いを込めて   作:マスターBT

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あけましておめでとうございます。
どうにか一日で書くことができました。次の投稿から第三特異点になります。



幕間の物語 セイヴァーとマシュ

「………」

 

「………」

 

カルデアの休憩室。本来なら、休んでる人達のたわいの無い会話で賑やかな場所なのだが、今回は沈黙に包まれている。

現在、休憩室にいるのはセイヴァーとマシュ・キリエライトだ。

セイヴァーは無表情で椅子に座り本を読んでおり、マシュは話しかけようにもセイヴァーが視線すら己に向けてくれないので沈黙している。

だが、この二人の思考回路は不思議なことに一致している。

 

「「(だれか……この空気をどうにかして)」」

 

今のこの状態はどこかの万能の天才が仕掛けた事なのだが、当然二人が知るはずがない。

休憩室の前に清掃中という看板が置かれ、誰も入れなくなっているのも二人は知らない。

 

「んー、面白いぐらい無言だねあの二人」

 

「…所長やセイヴァーに怒られても知らないからね。レオナルド」

 

実は休憩室の映像がモニタリングされている事も二人は知らない。

第三の特異点を見つけるまでの間、立香はオルガマリー所長の講義を受けることになり、立香が契約したサーヴァント達は講義に付き合っていたり、その辺をほっつき歩いていたりとそれぞれの時間の過ごし方をしている。

清姫は、この時間、カルデアのキッチンで料理を作っているので邪魔するものがいないのだ。

 

「大丈夫大丈夫。私がやったていう証拠はないからね。

それにセイヴァーみたいな捻くれ者には荒治療が一番だよ」

 

発言自体がもはやフラグのダヴィンチちゃん。

ロマンも呆れつつ、第三の特異点を見つける作業を続行する。

と、ここで映像に動きがあった。

 

「…あ、あの!セイヴァーさん。何か飲みますか?」

 

マシュが勇気を出し、セイヴァーに話しかけた。

セイヴァーはマシュを一瞬見て、瞬きを数回して口を開く。

 

「コーヒーを頼む」

 

マシュを見たのは一瞬だった。

 

「わかりました!」

 

だが、嬉しそうに頷くマシュ。

休憩室に置かれているポットの操作を行うマシュ。操作に慣れていないのか少し手間取りつつコーヒーを淹れる。

その姿をどこか懐かしげに見るセイヴァーの表情にはマシュは背中を向けているため気づかない。

 

「あ、砂糖とミルクは必要ですか?」

 

「いや、必要無い」

 

マシュの質問に対してまたしても、端的に返す。

それでも嬉しそうにコーヒーを運んで来るマシュ。セイヴァーの前に一つ。自分の前にも一つコーヒーを置く。

 

「ありがとう」

 

「いえ、気にしないでください」

 

本に意識を向けたまま、コーヒーを飲むセイヴァー。

マシュはコーヒーに砂糖とミルクを加え、飲む。

コーヒーの香りが休憩室を満たす。

 

「セイヴァーさん。先程からなんの本を読んでるんですか?」

 

ずっと本を読んでいるセイヴァーにマシュが質問する。

相手の行動に対し、質問するというのはコミュニケーションを取るのに重要な質問だ。

 

「………シャーロック・ホームズの『最後の事件』だ」

 

「ホームズですか!?セイヴァーさんも好きなんですか?」

 

あからさまにしまったという表情を浮かべるセイヴァー。

なんとなく手につかんだ本がホームズだった時点で、こうなる未来は確定していたのだろう。

 

「あ、ああ」

 

マシュの勢いに押されて返事を返すセイヴァー。

そこからは怒涛の勢いでマシュにホームズの話題を振られる。勢いに押されつつ、返答を返していくセイヴァー。

30分と少し、話し続けたあとハッとした表情を浮かべるマシュ。

 

「す、すみません。つい、話し過ぎました」

 

顔を赤くしながらワタワタとするマシュ。

 

「気にしなくていいよ」

 

そんな微笑ましいとも呼べる光景のせいか。

つい、昔の自分の様に優しげな柔らかな言葉回しになるセイヴァー。

彼自身もそれに気づいたのか、気まずそうに視線を彷徨わせる。

 

「……びっくりです。なんだか、不思議ですけど先輩が言いそうな言葉でした」

 

びっくりした表情を浮かべながら言うマシュ。

 

「……それは気のせいだろう。俺はあいつほど優しくなどない」

 

コーヒーの残りを一気に飲み干すセイヴァー。

本を読む気は無くなったのか栞を挟み机の上に置く。再び、休憩室に気まずい空気が流れる。

 

「セイヴァーさんは、先輩のことどう思ってますか?」

 

再び、沈黙を破るのはマシュだ。

 

「…なぜ、それを聞く?俺は藤丸立香と契約しているサーヴァントでは無いぞ」

 

声のトーンが普段の誰も寄せ付けないものになり、言葉遣いも雑なものになる。

 

「い、いえ、別に何か意味があるという訳ではないんですよ。

先輩の訓練にも付き合ってくれているので、セイヴァーさんから見て先輩ってどんな風に見えてるんだろうって思いまして」

 

「…俺から見れば藤丸立香はまだまだ弱い。あいつはどうしようもない程に一般人だ。

魔術回路も未熟で、スパルタに叩き込んで漸く簡単な魔術を扱える程度だ」

 

酷評と言える評価を聞き、表情を暗くするマシュ。

 

「そんな奴だが、一つ優れた点がある。

それは精神的な強さだ。どんな状況でも一歩踏み出せる強さ、これは訓練でも身に付かない天性の才能だ」

 

そう藤丸立香を評価するセイヴァー。

気のせいでなければ、そんなセイヴァーの表情にどこか悲壮感を感じると思うマシュ。

だが、瞬きの間にいつもの無表情に戻るセイヴァー。

 

「先輩もしっかり評価してくれてるんですね」

 

「俺はマスターを守る。その為に使える戦力を正確に知らなければ困るだけだ。

…コーヒーをありがとう。俺はこれで失礼する。そろそろ、マスターに呼ばれる」

 

椅子から立ち上がり、休憩室を出る為に入り口に移動していくセイヴァー。

 

「すみません!最後に一つだけいいですか?」

 

その後ろ姿に声をかけるマシュ。

 

「……なんだ?」

 

「なぜ、私を避けて動くのですか?」

 

セイヴァーは背を向けている為分からないが、マシュの手は震えておりセイヴァーがどの様に返すか恐怖を感じている様だ。

マシュの方を見ずに、口を開くセイヴァー。

 

「俺は……俺には君の様に無垢な存在は眩しすぎる」

 

それだけ言い、扉に近づく。

カルデアの扉は自動ドアだ。近づけば勝手に開く。

開くと同時にカラン!っと軽い音が響く。倒れてきた看板には清掃中の文字。

 

「……ほんと、くだらない事が大好きの様だな。レオナルド・ダヴィンチ」

 

看板をしまい、霊体化するセイヴァー。

そう時間を置かずに、どこかの天才の悲鳴が響いたのは言わずもがなだろう。

 

「…無垢な存在ですか……セイヴァーさんは私の出自を知っているのでしょうか?」

 

無垢な少女は一つの疑問を解消したが、また新しい疑問が生まれてしまった。

彼女がセイヴァーの隠す真実を知るのはまだ先の物語である。

 




北斎のCVがゆかなという事実に心を動かされ、ガシャしましたがカレスコの2枚目でした。
だが、私の勝負はアラフィフピックアップ時です。座して待ちます。

うちのダヴィンチちゃんはこんな感じになるのでよろしくお願いします。

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