東方狂世録   作:myo-n

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突然ですが…他の作者さんとのコラボ作品を書くことになりました!
お相手は沼倉風太様の作品【東方風雷郷 ~Last Boy Story~】です。
現在執筆中ですのでお楽しみにしてください!


第8話

 紅魔館周辺にある小さな泉。

 泉の水はとても透明でずっと見ていても飽きない程綺麗だ。

 そんな小さな泉の中心に1人の少女が呟きながら静かに浮いていた。

 

「ワタシは貴方を愛してる…愛してる愛してる愛してるアイシテルアイシテ―――――アアアアア!!!.!!!」

 

 少女は何かを呟いている途中で突然叫んだ。

 彼女が暴れると、泉の水面に大きく白波が立つ。

 すると先程までとても澄んでいた泉の水が黒に染まり異臭を放つヘドロの様になった。

 

「私はワタシ、でも私はワタシじゃない。どうすればイイノ?貴方とイッショにいるにはドウシタラ………あ」

 

 ふと少女は泉の付近を通った燃える様な赤色の髪の少女を見かけた。

 赤色の髪の少女は泉の水を見て驚く。

 

「この水は…一体何があったんだ?」

「ココは私たちのバショ…消えてよ」

 

 浮いている少女が赤色の少女に近づいて話しかけるが気づかれない。

 まるで少女が見えていない様な様子で白髪の少女は水をすくう。

 

「これは酷い……、ここの泉が汚れるのはもっと先なのに…慧音に知らせ――――うぐっ、こ、これは…」

「私はワタシ、どうして見てくれないの?ワタシが見えないの?……なら、シネ」

 

 少女が腕を振ると白髪の少女にヘドロの様な水が纏わりつく。

 それは彼女の首を絞め手を絞め足を絞める。

 強烈な絞めに赤髪の少女は苦しみあがく。

 

「あああああ!!!」

「抵抗?ソンナノ無駄なのに」

 

 白髪の少女は状況が分からないが必死にあがく。

 しかし、あがけばあがくほと絞める小さな力は強くなっていく。

 やがて白髪の少女の手足が嫌な音を立ててプランとなる。

 白髪の少女の手足が折れたのだ。

 

「ぐっ…誰…か……たす」

「サヨウナラ」

 

 少女がそう言うと首の絞めが強くなる。

 白髪の少女はもはや抵抗する力もなく―――生き絶えた。

 

 それが分かると、白髪の少女は放り捨てられる。

 そして少女は再び泉の中心に戻るとまた呟く。

 

「私は待ってるよ、ダッテ貴方がスキダモン。待ってるよ…チルノちゃん」

 

 そう呟くと、少女はうずくまって静かに人を待った。

 

---

 

「なあ、大ちゃんってどんな子なんだ?」

 

 鬱蒼と茂る植物を避けながらチルノに聞く。

 チルノに案内されてかれこれ20分、その間が無言でかなりキツかったので話を適当に出したわけだ。

 

 チルノはもう泣き止んで今では最初にあったドヤ顔でこちらを見る。

 

「大ちゃんはね!あたいの友達なの!ずっと一緒にいるからえっと…しんゆーってやつね!」

「そっか…親友、か」

 

 俺には親友と呼べる奴はいるのかな…

 霊夢達が外の世界と呼ぶ世界で、俺は友達はいたが親友と呼べる奴はいなかったと思う。

 唯一それに近いと言えるのは、近所に住んでいる幼馴染だろうか。

 

「何考えてんの?」

 

 考え込んでいると、霊夢がぐいっと顔を近づける。

 

「いや、ちょっと友達について考えてた」

「ふーん、外の世界の友達?」

「そんなとこ。でも、チルノが言っているみたいに親友って呼べる奴はいるんだろうか…って思ってな」

 

 俺の言葉を聞くと、霊夢は腕を組んで考えながら答える。

 

「うーん…私の友達は殆ど変な奴よ。妖怪とか人とか、まあとにかく色々いるわよ」

「そうか…大変だな」

「でもね、不思議と嫌いじゃないのよ。こうやって異変があって、異変を解決して、宴会を開いて。それだけで楽しめるもの」

 

 照れながら微笑む霊夢。

 霊夢にとっては友達=親友なんだろうなと何となく感じられた。

 俺にもこんな友達とかがいたらな…いやもういるか。

 霊夢、レミリア、パチュリーさん、十六夜さん、小悪魔さん、美鈴さん、チルノ。

 彼女達がどう思っているかは知らないが、俺は彼女達とずっと友達でいたい。

 

「ほら、早く行くわよ!」

 

 あぁ!すぐ行く!と霊夢に向かって答えようとした時、何処かで嗅いだような匂いがした。

 この匂いは…一体……?

 

「どうしたのー?」

 

 返事を返されなかった霊夢がこちらを振り向く。

 俺は霊夢の呼びかけに気づき答える。

 

「いや、何でもない!あと、ちょっと悪いが先に行っててくれ!」

「何でなのよー!」

「少し確かめたい事がある!大丈夫、すぐ戻る!」

「なら気をつけなさいよ!」

「分かった」

 

 そう言って先に行った霊夢とチルノ。

 

 案外深く聞かれなかったな。

 まったく…心配されてるのか心配する必要がないと思われてるのか分からない。

 

 返事を返した後、俺は匂いのした方向に歩いて行く。

 すぐ戻ると行ったので、少し早めに歩くと…匂いの原因が分かった。

 

「こ…これは……!?!」

 

 あまりの光景に吐いてしまう。

 何故なら、目の前には両手両足が変な方向に曲がっている白髪の女の子の死体が置いてあったからだ。

 さっき嗅いだ匂いが嗅いだことのある匂いっだったのは、レミリアの槍から漂っていた血の匂いと同じだったからなのか。

 

 暫くして一度深呼吸をする。

 確かに日本じゃこんなリアル死体を見たことなんてないが、慣れるしか無い。

 目の前にあるのは紛れも無く死体だ、言い換えればただの死体だ、そこまでビビる事はない。

 

「ふぅ…ふぅ…はぁ……」

 

 段々と状況が整理でき始めた。

 だがまさかの死体が俺が落ち着くのを待たないと言わんばかりに急に燃えた。

 

「熱っ!!」

 

 火の粉がてにかかり急いで払いおとす。

 火傷していたら後でパチュリーさんに治してもらおう。

 そんな事を考えつつ、俺は目の前の光景に目を向ける。

 死体が急に燃えたなんて信じられないが、これまでの事が信じられない事だらけだ。

 そう言えば炎が一瞬鳥みたいな形をしていたな…

 まさか何かの能力か?あくまで推測の話だが。

 

 炎は依然少女の死体を燃やしている。

 そしてあっという間に少女の死体は灰になった。

 

「…え?」

 

 唖然と驚いた瞬間、消えたはずの炎が再び燃える。

 そしてそれは人ほどの大きさにまで膨れ上がり、そして…

 

「ふぅ…何とか助かったな」

 

 死んだはずの少女が屈伸運動をした。

 何なんだ、何が一体どうなってるんだ?

 

 ふと、白髪の少女と目が合う。

 白髪の少女は恐る恐る聞いてくる。

 

「…ひょっとして、今の見てた?」

「…あぁ、見てた」

「そうか…悪いな、気持ちの悪いものを見せて」

「気持ち悪い?何が?」

 

 確かに死体を見て吐いたが、驚きの方が勝ってる。

 俺の言葉を聞いた白髪の少女は、驚いた様子でまた尋ねてくる。

 

「え!?本当にか!!?」

「あぁ…死体には驚いたけど」

「そ、そうか。私は藤原妹紅、よろしく」

「よ、よろしく…えっと、一つ聞いていいか?」

「何だ?」

「さっきの死体って…藤原さんの?」

 

 手短に済まそうと聞きたいことだけを聞く。

 チルノと霊夢が先に行っているから急がないといけないからだ。

 藤原さんは一度腕を組んで考えて、答えた。

 

「あぁ、そうだよ。私は不老不死だからね、あの程度じゃ死なないし死なないのさ」

 

 何処か儚げに答える藤原さん。

 その表情はまるで永遠の生に対する皮肉の様だ。

 

「そうか。で、何でこんな所にいるんだ?」

「ちょいと散歩しにね。…それじゃあ私は行くよ」

「あぁ…分かった」

「じゃあな、少年」

 

 そう言うと、藤原さんは1人で奥へと走って行った。

 

 それにしても…不思議な人だった。

 死んで生き返るとか何あり得ないことを実現させてるんだよこの幻想郷は。

 それに散歩で死ぬってどんな散歩だよ!これが1番驚いたわ!!

 

「…そうだ、霊夢の所に戻らないと」

 

 冷静になり、元来た道を引き返す。

 戻った先には誰もいなかったが、書き置きされてる白い紙が植物の葉の上に置かれていた。

 

『戻って来ないようだから先に行っとくわ。チルノによると今歩いている道をずっと真っ直ぐに歩くと着くらしいから、早く合流しなさい。PS:念のためにスペルカードを一枚置いておくわ、あんたでも使える様にしてあるから護身用に持っときなさい』

 

 白い紙の裏を見ると、そこにスペルカードが置いてあった。

 それを手に取り、見る。

 

「『夢想天生』?何だこれ」

 

 どう見ても必殺技にしか見えなさそうなスペルカードだ。

 でも取り敢えず貰っておこう。

 そう思いスペルカードを胸ポケットに入れる。

 このスペルカードにどんな使い道があるのか分からないが、持っておくに越したことはないだろう。

 

「よし…行くか」

 

そう言って俺は2人を追って走り始めた。

 

---

 

「やっちゃった……」

「どうしたんだー?」

「何でもないわー」

 

 自分のミスに気づいてしまった。

 あの時、太一の戻りが遅いから書き置きとスペカを置いたのは良かったけど……

 

「まさか『夢想天生』の方を置いて来ちゃうなんて…」

 

 本当は二重結界の方を置いておくつもりだったのに、チルノが急かしたから間違えてしまった。

 しかもあれは私の切り札と言ってもいいスペカなのに……

 

「はぁ…仕方ない。何とかなるでしょ」

 

 間違えた物は仕方ない、幸いにもあれは私以外誰も使えないから暴発する心配もないし後で返してもらおう。

 そう思って、私はチルノの後をついて行った。

 

 




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