東方狂世録   作:myo-n

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第4話

 少女は森の中を歩いていた。

 森の中は鳥のさえずりや木々が揺れる音が一切聞こえない。

 それはまるで、森が少女を恐れているようだ。

 

 少女は静けさが目立つ森の中を歩いて行く。

 無闇に歩いているのかと思いきや、少女には目的地があった。

 それは…この世界を支えている重要な神社である。

 少女はそこに住んでいる巫女に用があるのだ。

 

「中々つかないな…」

 

 ため息混じりに喋る少女は日傘を差しながら歩く。

 その横にはメイド服を着た女性が少女に歩幅を合わせて歩いていた。

 

「お嬢様、やはり夜に出向かれた方が良いのかと」

「いや、それだとあの巫女が寝ている可能性もある。あの巫女を訪ねるにはやはり昼しかない」

「左様ですか。ではせめて空を飛んでは行かれませんか?このままでは時間がかかりますよ」

「帰りは飛んで帰るさ、それにここの森をなんとなく歩きたくなった。悪いか、咲夜?」

「滅相もありません」

「そうか、では日の暮れないうちに行くとしよう」

「かしこまりました」

 

 その会話を境に少女と咲夜と呼ばれた女性は黙々と歩き始めた。

 そして歩き続けるほど三十分、二人は神社へと繋がる石階段へと着いた。

 

「着いたな」

「はい」

「上るか」

「はい」

 

 淡白な会話をした後、二人は疲れた様子を見せずに階段を上っていく。

 そんなに長くは無い階段なので二人はすぐに神社の境内へと辿り着いた。

 境内では白と紅の服を着た少女が掃き掃除をしていた。

 

「いらっしゃい。あら、珍しいお客さんね」

「久しいな、博麗の巫女。一年ぶりだな」

「あんたさぁ…その喋り方、何とかならないの?可愛くないわよ?」

「そうね、私も堅苦しいって思ってるのよ」

 

 急に口調を変える少女、しかしこちらの方が年相応の喋り方で可愛らしく思える。

 博麗の巫女と呼ばれた少女は箒を賽銭箱の横に立てかけると少女たちを奥に入るように促す。

 

「折角来たんだし、お茶でも飲んでく?」

「悪いけど結構よ。貴方に用があって来ただけだから」

「そう?ならいいわ」

 

 博麗の巫女は素っ気無い返事を返して境内に戻る。

 そして腕を組んで、面倒くさそうに尋ねる。

 

「で、一体何の用?」

「そんなに面倒くさがらなくてもいいじゃない…。まぁいいわ、これは貴方の仕事だしね」

「私の仕事?どういうことよ?」

「そのままの意味よ。貴方って下界と幻想郷を別つ結界を張ってるでしょう?」

「まぁ…そうだけど」

「つい先日、下界の者と見られる人間が私の館に入ってきたわよ」

 

 その一言を聞くと、博麗の巫女は大きなため息を吐く。

 

「そんなの知らないわよ、ここ最近で結界が綻んだ事なんてないし」

「そうなの?」

「本当よ、下界の人間が入ってきたら絶対に何処かの結界の一部が壊れるわ」

「ふーん、でも私の館に来たのはどう見ても下界の人間だった。そうよね、咲夜?」

「はい、里の者達の服装が違います。そもそも人里から来た人であるなら、正気を失われたお嬢様を止められるはずがありません」

 

 淡々と言い切る咲夜。

 その言葉を聞いて、ますますだるそうな顔になっていく博麗の巫女。

 

「えー…それってもう異変に近いわよね?あなたが正気を失うなんてまずないもの」

「私も少し場覗かせて貰いましたが、異変が起こっている可能性が十分高いかと」

「えー…めんどくさいわね……」

「終わったら紅魔館(うち)で〝宴会〟開いてもいいわよ?」

「さっさとその人間に会わせなさい」

 

 宴会…という単語を聞いた瞬間、少女は人が変わるかのように真剣な表情になった。

 その光景に少女たちはやや引きながらも首を縦に振った。

 

「えぇ、さっさと行くわよ。ついてきなさい」

「分かったわよ」

 

 そう言って3人は空高く飛んでいった……

 そしてその近くでは…

 

「あやや…これは大スクープの予感がしますよっ!!」

 

 カメラで撮りながら喜んでいる謎の女性が飛んでいた。

 

---

 

「あら、目が覚めたみたいね」

 

 パチュリーさんの言葉を聞いて目を開ける。

 一体、どれほど時間が経ったんだろう。

 睡眠薬で眠らされていたから時間が分からない。

 

 そんな俺の様子を知っているのか、パチュリーさんが声をかけてくる。

 

「あれから貴方は二日程治療の為に眠っていたわよ」

「そんなに眠ってたのか…」

「まぁ、魔法の規模が規模だし仕方ないわね」

「えっ、魔法?」

 

 俺を治していたのは魔法などというファンタジー世界で使われる物でしたーとかじゃないだろう。

 冗談も程ほどにして欲しい。

 

「疑っているの?」

「うん、まぁそんな物幻だと思っているから」

「幻じゃないわよ」

「いやいや、流石に信じられないよ」

「じゃあ見せてあげる」

 

 そう言って両手を出すパチュリーさん。

 何をするのかと思いきや、左手から氷右手から炎を出した。

 しかも両方とも手につかずに浮いている。

 

「マジか…」

「本当よ、言っておくけど手品とかじゃないわよ。試しに合わせて見るから見てなさい」

 

 パチュリーさんは右手と左手をゆっくりと近づける。

 炎と氷が合わさる事なんて絶対に無いと思うが、近づく炎と氷を俺はじっと見ていた。

 炎と氷はゆっくりと近づいていき炎が凍りを溶かすかとしたその時、炎と氷はくっついた。

 

「なっ…!?」

 

 氷は炎を覆い、炎は氷を溶かさずに中で燃えている。

 その綺麗さに一瞬見とれてしまった。

 これは納得せざるを得ないな、魔法の存在を。

 

 俺が驚きながら納得したのを察したのか、パチュリーさんは炎と氷を消す。

 

「信じたみたいね」

「まぁ、目の前であんなもの見せられたら信じるしかないよ」

「そう…それじゃあ私を運んでくれる?」

「はいはい…って無理無理っ!まだ体が動かないんだよ!」

 

 いくら治療したとはいえすぐに動けるものじゃないだろう。

 

 俺がそう言うと、呆れたようにパチュリーさんが言った。

 

「大丈夫よ、貴方の体はもう治してあるのよ。それに美鈴は門にいるし、こあは本の整理をさせるために帰らせたの。だから私が帰るには貴方が運ぶしかないの。頑張って立ちなさい」

「分かったよ…」

 

 ゆっくりと手を動かそうとする。

 しかし体は全く動かない―――なんて事は無く普通に動いた。

 そのまま落ち着いてベッドを降りて置いてある俺の靴を取る。

 そして軽く柔軟運動をして体が動くかを再確認する。

 

「動くわね、それじゃあ私を運んで」

「それは別にいいけど…どうやって運ぶんだ?」

「背負ってくれて構わないわ」

「分かったよ」

 

 腰を降ろしてパチュリーさんをおんぶする。

 やや重いがそれほど問題ではないので立ち上がる。

 しかし、ここである問題が発生した。

 

「……どうしたの?」

「あっ、いや、なんでもない」

 

 その問題はパチュリーさんにあった。

 彼女を背負う事により彼女の豊かな胸が押し付けられるのだ。

 俺の体を治してくれた人とは言え、この状況じゃ邪な考えも湧いてしまう。

 しかし…胸でかいな、パチュリーさん。

 

 俺の反応に首を傾げるパチュリーさん。

 とりあえず俺は邪念を振り払う為に目的の場所を聞く。

 

「何処に行けばいい?」

「私が道を案内するからそれに従いなさい。まず左に進んで」

「分かった」

 

 言われるがままに左方向へと歩いていく。

 そして十分程歩いたら上下に続く階段の所に着いた。

 

「その階段を下に降りて」

 

 階段を降りていく。

 若干寒気を感じるが、気のせいだろう。

 だけど、背負っているパチュリーさんが震えていたから気のせいじゃなかった。

 

「大丈夫か?」

「えぇ、これくらいなら…へくちっ」

 

 強がりながら可愛らしいくしゃみをするパチュリーさん。

 どう見ても寒そうだったので、一旦彼女を降ろす。

 

「ちょっと、どうしたのよ」

「パチュリーさんが寒そうにしてるからな。ちょっと待ってろ」

 

 そう言うと俺は上着を脱ぐ。

 そうすると俺は肌着一枚になって寒いけど仕方ない。

 そして俺は脱いだ上着をパチュリーさんにかける。

 

「こうしたら寒くないだろ」

「でも貴方が寒いんじゃないの?」

「パチュリーさんは俺よりも薄そうな服着ていて寒そうだからな。俺なら我慢できるし」

「よくこんな事ができるわね?」

「そういう性分なんで」

 

 そう言うと再びパチュリーさんを背負う。

 肌着一枚でとても寒いが、女の子に風邪でも引かせたら大変だ。

 なら俺が気合いで我慢するしかない。

 

 そして歩くのを再開する。

 

「…優しいのね」

 

 そう呟いたパチュリーさんは、何処と無く嬉しそうに呟いた。

 




前半は三人称視点、後半は主人公の上井視点です。
ごちゃごちゃしてすみません。
でも一応、伏線を張っておきたいんです……

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