東方狂世録   作:myo-n

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遅くなってすみません…


第10話

 霊夢と妹紅はソレを挟むような形で走って接近する。

 二人とも本当は空を飛んで弾幕を打ち込むつもりだったが、チルノが身動きできないのと、空を飛ぶには障害物が多かったので地上戦闘になる。

 霊夢は右、妹紅は左から挟み撃ちにしようと回り込んだ。

 しかし、

 

「コナイデ、近づかないでっ【汚染:戯れる穢れ】」

 

 ソレがスペルカードらしき黒いカードを持って呟く。

 すると泉の水がソレの周辺に球の形を成して浮遊する、その数およそ100個。

 霊夢はソレがスペルカードを使える事に驚いたが、すぐに目の前に集中する。

 

「面倒だからすぐに終わらさせてもらうわ!【霊符:夢想封印】!!」

 

 霊夢もスペルカードを掲げて発動させる。

 彼女が先ほど使ったミニ夢想封印の3倍の大きさの陰陽玉が霊夢の左右に生成された。

 しかも陰陽玉の周りは白いオーラのような物がバチバチと音を立てている。

 

 

「妹紅!!離れなさい!!」

「聞けないね!!こいつには借りがあるんだ!【蓬莱「凱風快晴-フジヤマ―――」

 

 妹紅がスペルカードをズボンのポケットから取り出す。

 そして霊夢と同じくソレに向かってスペルを宣言しようとしたところで背後から迫り来る【汚染:戯れる穢れ】に捕まった。

 ズッポリと水球に全身が入ってしまった妹紅はじゅうじゅうと体を溶かされてしまう。

 

「酸!?」

 

 霊夢は驚いて妹紅を心配するが目の前にいるソレが霊夢に向かって追撃を仕掛ける。

 寸前の所で妹紅から注意を水球を向けて紙一重で避ける。

 そしてお返しにとばかりに霊夢は右の陰陽玉を投げつける。

 陰陽玉は物凄い速度で加速してソレに当たる。

 ソレは陰陽玉の進む方向に吹き飛ばされて水面をバウンドして地面に吹き飛ばされた。

 ソレが離れた事により霊夢は妹紅の方を見る。

 

「あんた大丈夫?」

「――――!!!」

 

 妹紅は酸性の球体に手と足をドロドロに溶かされており、見るのもためらわれるレベルの状態になっていた。

 普通に考えて死んでいると思うのが当たり前の妹紅を見ながら霊夢は何故か少し離れてため息を吐いた。

 

「はぁ…【二重結界】」

 

 ためいきを吐きながらも自分の周りに二重結界を展開した霊夢。

 そしてそれを見たのか、死んでいるはずの妹紅が突如赤く光り――――自爆した。

 爆発は妹紅を覆っていた水球を見事に当たりに散らし飛ばす。

 散らばって飛んだ水球は少し離れた霊夢の二重結界にも少しかかり結界を若干溶かした。

 

「妹紅…あんたすぐにやられてんじゃないわよ。あとここで炎系のスペル使うの止めなさい」

 

 霊夢の話しかけた妹紅は…なんと傷一つない体で歩いていた。

 妹紅は何気ない様子で霊夢に平謝りする。

 

「悪い悪い、不意を突かれたんだ。あと私のスペルは殆ど炎系なんだが?」

「そう、じゃあそこで見てなさい。あたしはあんたの巻き添えになりたくないのよ」

「断る、私はあいつに借りがあるって言っただろう?」

「うるさいわね、とにかく黙ってみてなさい!あとっ!!」

 

 霊夢が妹紅を強引に説得して再び先頭に戻る前に、霊夢は一度妹紅の方へふり返る。

 

「服を着なさい!あんたリザレクションしても服は燃えない様にしてるんでしょ?」

 

 と、霊夢は妹紅を注意した。

 何故かというと、言うまでも無く妹紅が一糸纏わぬ裸であるからだ。

 妹紅は自分の姿を確認しながら若干乾いた笑いで答える。

 

「いやぁ…それがな……さっきの酸の球体に服を溶かされたんだよ。あと自爆したときとかも同様に服は破れる、だから私はリザレクションするときは基本的に燃えているんだよ…」

「なんとかならないの?」

「一応近くに私の仮拠点の一つの小屋がある。そこに行けば服の替えがおいてあるな」

「じゃあ取りに行きなさいよ」

「嫌だ、私はこいつに借りを返すんだ!」

「ふーん、じゃあ誰かにあんたの裸を見られてもいいってわけね?」

「ふっ…そんなの何度もあったし慣れたさ……」

 

 若干自暴自棄になって答える妹紅に若干引く霊夢。

 

「そ、そうなの…じゃあ分かったわ。私が上に叩き上げるからそこにスペルを打ち込みなさい」

「…ありがとな、博麗の巫女」

「霊夢でいいわよ」

「そうか…じゃあ霊夢、よろしく頼む」

「言われなくてもやってやるわよ」

 

 妹紅との会話を交わし終えて、ソレとの戦闘に気持ちを切り替える霊夢。

 そしてソレが霊夢たちの前に戻ったところで霊夢はソレに向かって走り出す。

 

「くそ…クソ…クソ……なんで…わたしのワタシノ…邪魔ヲおぉぉ!!!!!」

 

 ソレが怒り狂い、先ほどとは比べ物にならないほどの数の水球を出す。

 それを見て霊夢がめんどくさそうに答える。

 

「何で邪魔をするのかって?そんなの決まってるじゃない。あんたが危険だからでしょうが!!!!」

「うるさいウルサイウルサイウルサイイイィィィ!!!!!!!【狂気:踊り狂う傀儡人形】!!!!」

 

 ソレがそうスペルを宣言すると、今まで微動だにしなかったチルノが霊夢の方に向いて氷の礫を飛ばしてきた。

 

「チルノっ!!冗談はやめなさい!!」

 

 チルノに叫ぶ霊夢だが、礫を飛ばしているチルノの目に光が宿っていない事が分かると叫ぶだけ分だと判断する。

 

性質(たち)が悪いわね!!」

 

 愚痴を溢しつつ飛んでくる氷の礫と水球を走って避ける霊夢。

 しかし次第に霊夢が疲れ始めて、攻撃が次第に掠り始める。

 

「やっぱり空を飛べないのは痛いわね…」

「もろいモロイ!あなたってこんなにもモロカッタのね!!!」

「はぁ…仕方が無いし、本気でも出そうかしら」

 

 霊夢は一度後ろに下がり、攻撃の範囲外に出る。

そして懐から30枚程お札を取り出す。

 

「これ使うと疲れるのよね…あと眩しいし」

 

 だるそうな様子で霊夢は呟くと持っているお札を宙に放る。

 一見霊夢がお札を捨てたように見えるが、お札はなんと地に落ちずに宙を浮いていた。

 浮いているお札は一枚一枚が強烈な光を発している。

 お札の強烈な光はソレの視界を一時的に暗くさせる。

 

「アアアアアアァァァ!!!!!!」

「あら、目がああぁ目がああぁとか言わないのね」

 

 そう言うと霊夢はさらに追加でお札を放る。

 その数、およそ20枚。先ほど浮かせた30枚のお札と合わせると、その数50枚程になる。

 

「それじゃあ妹紅、追撃よろしくね。【神霊:夢想封印・(きょく)】」

 

 霊夢がスペルを宣言する。

 すると浮いていたお札が陰陽玉に変わった。

 しかも霊夢が先ほど放った夢想封印の陰陽玉の2倍は大きい。

 

「死なない程度の本気だから大丈夫よ…多分ねっ!」

 

 そうソレに言い放つと、霊夢は陰陽玉をソレに向かって撃った。

 陰陽玉が放たれる直前に視力が戻ったそれは叫びながら陰陽玉を避けて行く。

 

「ガアアああああああああァぁぁぁ!!!!」

 

 ソレは霊夢に向かって陰陽玉を避けながら突進する。

 一方の霊夢は…避ける気もないのか欠伸している。

 その事がソレの怒りの火に油を注いだ。

 

「シネエエええええェェェェ!!!!!!!!!」

 

 そしてソレの突進が霊夢に当たろうとして―――ソレは空高く飛んだ。

 理由は水面下から飛び出た陰陽玉に気づくのが遅れて当たってしまったからである。

 しかし威力が若干抑えられているのか、上に飛ばされたソレは先ほどと比べ少し遅い速度で上っていく。

 

「妹紅!」

「分かってるさ!!」

 

 霊夢が妹紅の名前を呼ぶと、妹紅は待ってましたとばかりに空高く飛ぶ。

 その速度は叩き上げられているソレより速く、あっという間に追い越してしまった。

 

「上ってもらったところ悪いが……落ちろ!【蓬莱:凱風快晴 -フジヤマヴォルケイノ-】!!!!! 」

 

 妹紅がスペルを宣言すると彼女の頭上に巨大な不死鳥型の炎が現れる。

 それはまるで輝く夕日の様で見た者はその美しさに魅力されそうなほど綺麗だ。

 そして燃え盛る不死鳥の炎はソレへと向かいぶつかる。

 

「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 自分の体が尋常じゃない熱さの炎に焼かれているソレは叫ぶしかできない。

 そして不死鳥の炎はソレを巻き込みつつ地面へと落ちていく。

 そのまま不死鳥の炎は泉に落ちて消え、水面にはソレが浮かびあがった。

 

「ふぅ…なんとか倒せな」

 

 一安心した妹紅は自分が裸の状態だと思い出して、急いで地上に降りる。

 地上では霊夢が泉の周りに水色に輝くお札を貼っていた。

 

「何をしているんだ?」

「浄化のお札を貼ってるのよ。この泉ごとあいつを浄化しようと思っているんだけど…やっぱり無理ね」

「そっか…で、結局あいつは何だったんだ?」

「異変よ異変、他の奴を急に狂ったりさせる黒いドロドロなのが元凶なんだけど…どうにも数が多いのよね。あんたも気をつけなさいよ」

「分かった、気をつけるよ」

「あとあんた、さっさと服を取りに行きなさい」

「分かってるよ!!じゃあまた後で会お――――」

 

 服が置いてある小屋へ妹紅が行こうとして振り向いた瞬間―――妹紅はカメラを持った女性と目が合う。

 いきなり現れて驚いているのか、妹紅は固まっている。

 

「あややっ、これは大スクープですよっ!!」

「………」

 

 固まっている妹紅に対して霊夢が肩を優しく叩いた。

 

「…お疲れ様」

「……」ドサッ

 

 そして妹紅は霊夢の一言で倒れた、主に羞恥心で。

 そんな事をおかまいなしにカメラを持った女性は妹紅を撮っていく。

 

「これはいい記事になりそうですねぇ…!見出しは何にしましょうか?『号外:博麗の巫女と蓬莱人が実はデキていた!!』とかでもいいですね…ぐふふ」

「おいこら、何勝手に私まで巻き込んでくれてんのよ」

「あっ、霊夢さん。さっきの戦い疲れましたか!?」

「えぇ…それよりも文。あんたに一つ言いたいわ」

 

 霊夢は笑顔で文と呼ばれた女性に手を回して肩を組むと。

 

「もし今の事記事にしたら、天狗を滅ぼすわよ?」

「調子に乗りすぎましたすみません!」

 

 霊夢に肩を組まれた状態から高速で土下座モードに移行する文。

 そして文は何か用事を思い出したみたいに慌てる。

 

「あっ、そう言えばー。今日ははたてのオミマイニイクンダッタナー…」

「……私の言いたい事分かった?」

「はい分かりました、それでは私は失礼させてもらいまっすー!!!」

 

 文はそう言って空を飛んでどこかに行ってしまった。

 

「全く…ほんとに迷惑だわ」

 

 ため息を吐いた霊夢は地面に座る。

 そして隣で倒れている妹紅を起こそうとする。

 

「ほら、妹紅。文なら脅しといたから大丈夫よー」

「………」

 

 しかし霊夢の呼びかけに答えずにただ顔を真っ赤にしている妹紅。

 これは仕方ないと思った霊夢は諦めて寝転んだ。

 

「ふぁ…寝ようかしら」

 

 そう呟いた霊夢は隣に全裸の妹紅がいるにも関わらず、眠ってしまった。

 そして霊夢が寝付いた直後に和希が来たのは後の話である。

 

 




三月中旬あたりまではまた投稿しなくなるかもしれません。
すみません、何かと現実が忙しくて……

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