トロールとの戦いから翌日、ハリエット達は図書室で調べ物をしていた。
ハーマイオニーとハリエットが本を開き、ネビルとロンは横でチェスをすると言った形だ。
「それで、何が気になるって言うの?気になるって言ってた本人が調べ物してないけど」
「君、ちゃんと見てなかったの?スネイプの怪我」
「セブルスが怪我?」
首を傾げてそんな状態だったかと思い出そうとする。
その様子を見て、やれやれと言った形でロンが喋り出した。
「僕、見たんだあの時にアイツ足に怪我してた」
「気付かなかったわ。でも、それが何で気になるの?」
「それはね、あんまり大きな声で言えないけど私達が見たからなの、怪物よ」
横から、読んでいた本から顔を上げてハーマイオニーが会話に入ってきた。
ロンは、僕が言いたかったのにと小声で抗議するが取り合って貰えてなかった。
「首が三つの犬よ、何かで読んだわ」
「それってもしかしてケルベロス?ヘラクレスの十二の難行の」
「あぁ、ギリシア神話だわ!でも、首に蛇は着いてなかったわ」
「ちょっと、ちょっと待って……信じてないわけじゃないけど、もしかしてホグワーツで見たの?でもそれって、つまりはホグワーツが冥府の門と繋がってるって事よ、いや魔法界は何でもありだけど」
そこまでオーバーな話じゃないわとハーマイオニーが答える。
そこにすかさずロンが溌剌と続いて話し始めた。
「冥府の門は三階の立ち入り禁止の所にあったんだよ!」
「ろ、ロンやばいよ……大きな声で言っちゃダメだって」
「えっ、ネビル。貴方も行ったの、立ち入り禁止の三階に?」
「階段が動いちゃって、猫から隠れて、そしたら犬がいて……怖かった」
「ごめん、何言ってるか分からないのだけど、それとセブルスがどう関係するのよ」
ロンは、君はスリザリンだからスネイプの味方をしているけど奴が何かを狙ってるのは間違いないと言った。
その言葉に、別に味方をしている訳じゃないと言おうと思ったがそれよりもと気になることを聞く。
「何かって何よ?」
「分からないけど、怪物を置いてるってことはそこで何かを守っているって事だ。トロールはクィレルが用意したってスネイプも言ってた。たぶん、アイツが三階に行ってトロールが逃げ出したんだ」
「何よそれ、ロンはセブルスがトロールを放ったって言ってるの」
「そりゃ奴はスリザリンだ。自分に容疑が掛からないようにクィレルを責めたんだろ」
「マーリンだってスリザリンよ、スリザリンだからって悪の魔法使いって訳じゃないわ!」
「じゃあ、どうして怪我をしてたんだよ。アレは間違いなく三階に行ったって事だよ」
その言葉に思わず、二の句が継げなくなる。
本当に、セブルスが何かを手に入れようとして三階に行ったのかと頭の中がグルグルする。
そんな私の背後で咳払いが聞こえた。
「騒ぐなら外」
「す、すいません」
先生に追い出される形で私達は退出させられた。
夜、談話室では祝賀会が開かれていた。
というのもスリザリンはクィディッチで連戦連勝、残すところはグリフィンドールとの試合だけとのことだった。
もうこれは勝ったな、記念すべき七年連続スリザリンの優勝カップ授与は目前だと言った感じだ。
しかし、ボードまで用意して作戦会議をするとはガチ勢か。
これだけいれば、一人くらいクィディッチに興味がない奴が……マグル出身の私しかいないか。
「やはり次も急先鋒で責めるべきじゃないだろうか」
「あぁ、やはりスリザリンは急先が向いてるから」
「いや堅実に相振り囲いからの持久戦も」
正直、お前ら何言ってんのと思わなくもない。
もしかして、チェスの戦法の話かなと首を傾げる。
そんな様子がおかしかったのかドラコが笑いながら解説してくれた。
「クィディッチは戦法が二つに絞られるんだ。全員で攻める急先鋒か守りを固める持久戦だ」
「あぁ、たしかスニッチ?を取られると150点も入るんだっけ」
「あぁ、だから全員で攻めてシーカーが積極的に動くのが急先鋒だ。スリザリンはルール上問題ない範囲で攻撃的なプレーが伝統で、よくラフプレーだって非難されるけどね」
「相振り囲いからの持久戦ってのは?」
「そっちは逆にシーカーが相手のシーカーの動きを制限するプレーだ。先に150点以上点数を取ってから攻めるんだ。でも、シーカーがダメだとすぐに負ける可能性もある」
クィディッチにも色々な戦法があるんだなと思っているとドラコがなんだかモジモジし始めていた。
トイレかしら?と訝しげに見ていると、手を差し出してきた。
「良かったらなんだが、一緒にクィディッチの観戦に行かないか。次はグリフィンドールと――」
「私、あんまり興味ないのよね」
「あぁ……うん、そっかそっか」
なんだか自分の手を見つめて、今日はもう寝るよと元気がなくなるドラコだった。
どうやら、私が興味を示してないことが残念であったようだ。
数日後、クィディッチの試合が始まった。
ハーマイオニーやロン達は見に行くか誘われたが、やっぱり興味がなかったので断った。
あのゲーム、運の要素が強すぎて平等じゃないのよね。
そんな事よりも、この間の反省を生かして勉強する事が大事だと思って私は図書室に籠もっていた。
読んでいる本は『闇の力―護身術中級編』である。
もう入門編は読んだので、新しい奴を勉強するのだ。
『この呪文を唱えたとき、貴方は敵を見つける事が出来るだろう。敵対的な意思に反応するこの魔法は、音となって術者に注意を促す。カーベイニミカム、コツは杖を振り上げるときに周囲に気を配る感覚でやることを筆者はオススメする』
「これは使える、と思ったけど敵の目の前で敵に気付いてもダメだわ」
『この呪文を唱えたとき、貴方は呪いを避けやすくなるだろう。呪いの進行を狂わすこの魔法は、薄い結界となって術者を助ける。呪いを逸らすだけで防げるわけではない。サルビオヘクシア、コツは外れろと思うことである。なお、許されざる呪文は効果がないことに注意』
「まぁ使えるかしらね、メモしておきましょう」
「お、おや、ききき、奇遇ですね。ぽ、ポッター・ハリエット!」
「わひゃぁ!?」
素っ頓狂な声を上げてしまい、図書室では静かにしなきゃいけないのにと恥ずかしくなりながら原因を睨み付ける。
その原因は背後から忍び寄って話し掛けてきたクィレル先生だ。
先生は、申し訳ないといった感じで悲しそうにオドオドしながら謝ってくる。
そんな様子をするもんだから、怒るに怒れずなんだかなぁという気持ちにさせられた。
「せ、先生はクィディッチには行かないんですか?」
「わ、私の授業は、その、ふ、不評ですので、すこし勉強しようかと……分かりにくいようでして、だから」
「あぁ、そう……ですね」
臭いとか喋り方とかの方が問題だと思うけど流石に大人にそれを言うのは可哀そうなので黙っておく。
すると、聞いてもいないのに先生は実はマグル学をやってたとか昔から喋るのが苦手で人をイライラさせてしまうとか愚痴り始める。
「私は苦手ですけど、先生は頑張ってると思います。報われると思いますよ、知らないけど」
「ちょっと、私に対して、ききき厳しくないですかね?」
「すいません、本音が……そうだ、闇の防衛術についてアドバイスして貰えませんか?」
「おや、闇の魔術に興味が、あ、あるので?」
私が聞いた瞬間、一瞬だけ先生の視線が変わった気がした。
きっと、やる気のある生徒だと思われたのだろう。
正直、生理的に無理だから好かれたくはないのだが、教えてもらえるのなら媚びを売るのもやぶさかじゃないなと思いノートを取り出して簡単な呪文を教わる。
「そうですね。学年的には難しいですが、ぽ、ポッターさんは優秀なのでボンバーダやエクスパルソなどを」
「そこで何をしておるクィレル!」
私が先生の教えてくれた呪文を書きとっていると怒声が響いた。
まさかの人物、セブルスの声だ。
セブルスが私とクィレル先生を見比べてそれから見たこともない顔でクィレル先生に杖を突き付ける。
「貴様!」
「ま、待ってセブルス!誤解してるわ、勉強を教わってただけよ」
「彼女に何をする気だった、言え!」
こ、これは……間違いない。
私はセブルスの勘違いに気付く。
セブルスは、私とクィレル先生が内緒で逢引していたと思っているのだ。
女の子はこういうのが好きなのだろうと私に寄越した恋愛小説をセブルスの事だから検閲しているはずだ。
渡す前に検閲しているということは、そういうことがあると知っているって訳だ。
「大丈夫よセブルス、クィレル先生は生理的に無理だから!恋愛対象じゃないわ!」
「ちょっと待て、何の話だ……錯乱呪文を掛けたのか!」
「誤解ですセブルス、彼女には、ゆゆ指一本も触れては」
「何だと!ちょっと来い!」
すごい形相でセブルスはクィレル先生を連れて行ってしまった。
残された私は真横から聞こえる咳払いにビクッとした。
「図書室では」
「いつもすみません」
呆れられながら、私は寮に戻るのだった。
ドラコ「もうダメだお終いだ」
御辞儀「何ィ、闇の魔術に興味がおありかな?」
クィレル「落ち着けよ、もう一人の僕」
セブルス「久し振りに切れちまったぜ、地下牢に来いよ」
※本編とは別次元の話です。
変更点
セブルスへの信頼が少し下がった。
マルフォイの好感度が下がるフォイ。
闇の魔術に詳しくなった。
御辞儀様の好感度が上がった。
クィレルの好感度が下がった。
クィレルの殺意が上昇した。
セブルスの殺意も上昇した。
図書室での印象が、たまに騒いでる生徒から良く騒ぐ生徒になった。