そこはホグワーツの図書室、多くの蔵書と知識を誇る素晴らしい場所だ。
そこで私はハーマイオニーを待っていた、そう遂に完成した魔法の報告の為にだ。
「クックック、今宵私は魔法界に新たな歴史を――」
「んんっ、んんっ!」
「すみませんピンス先生」
恥ずかしくなったので図書室から退出して待ち人を探すことにした。
おかしい、せっかくドラコ達のお誘いを断ってまで記念すべき魔法の開発という偉業を報告しようと思ったのにだ。
もしかして、私との約束を忘れてハロウィンパーティーを楽しんでいるのだろうかと大広間に向かう。
しかし、やはりハーマイオニーはいないようなのでどうしてだろうと首を傾げた。
「こっちだハリエット」
「ごめんドラコ、ちょっと用事があるの」
「おいおい、そっちはグリフィンドールだぞ」
ドラコの声を無視してグリフィンドールの机を見渡す。
しかし、彼女の姿はどこにも見当たらず、不自然に目を逸らす二人の少年が目に映った。
私は杖を取り出して、そのまま彼らに近づく。
しかし、そこを遮る者がいた。グリフィンドールの先輩方だ。
「おっと、俺達の弟に何か用かな?」
「まさかスリザリンが何の用だ?」
「失礼、ロンとネビルに用があるので」
そう言っても依然と退こうとしないので右にズレたのだが、相手が合わせるようにズレてきた。
明らかに行く手を阻む邪魔な行為だ。
「何か?」
「おいおい、杖を持ってスリザリンが近づいてるんだ悪巧みだと思っても仕方ないと思わないか?」
「私を舐めないで貰おうか、今は機嫌が悪いんだから」
「おっと本性を現したか」
急いでいるというのに、スリザリンだからと邪魔をしてくる二人に苛つきが募る。
赤毛で俺達の弟、十中八九フレッドとジョージだろう。
でも今はハーマイオニーの事が大事であり、そのためには『手段は選んでいられない』のだ。
「タラントアレグラ!」
「上級生に魔法を放ちやがった!?」
「ロン!こっちに来なさい、さもないと貴方の兄弟が踊り続けるわよ!」
フレッドとジョージに向かって呪文を放った。
結果、閃光がぶつかると同時に二人が踊り出す。
「ハリエット、なんてことするんだ。魔法は禁止だぞ」
「お生憎様、ここは廊下じゃないしそんな規則知るものですか!ハーマイオニーはどこよ!」
「し、知らないよ」
サッと目を逸らすロンだったがその行動は如実に知っていることを表していた。
私は視線を今度はネビルに向ける、するとネビルが慌てた調子で遂に白状した。
「ロンが喧嘩して、女子トイレで泣いてるって」
「何ですって、放っておいたの!」
「仕方ないだろ、女子トイレなんていけないし」
「放っておいたのね!邪魔よ、なんでこんな所でワルツなんて踊ってるの!」
全くロンは最悪だし、ロンの兄弟もワルツなんて踊って邪魔である。
これは迎えに行かなくてはというタイミングで、私の元に最悪の知らせが届いた。
ドアが乱暴に開かれ、ヨロヨロと特徴的なターバン頭が見えた。
見れば息を切らしたクィレルがおり、そしてダンブルドア校長の方を見ながら言う。
「トロールが……地下室に……お知らせしなくてはと思って」
そのまま、まさかの失神である。
教師なんだからトロールくらいどうにかしろとか、最後までちゃんと報告しろと思ったがそれどころではなかった。
「ネビル、どこのトイレ!」
「わ、分からないよ!」
「もう、使えないわね!」
周囲の悲鳴も、ダンブルドアからの静まれの指示も聞いている余裕がなかった。
ハーマイオニーがいても問題ないのは上層の方、むしろ地下室に近いトイレから虱潰しに探すなら移動した方が良いだろう。
私は急いで地下室の方に向かった。
すると、最悪なことで最初の一回で見つけてしまった。
なんで地下室の近くにいるのよハーマイオニー、タイミングが悪すぎるわよ。
「ハーマイオニー!こんな所にいたのね!」
「その声は、ハリエット?ごめんなさい……私、約束……」
「そんなことは良いから出てきて!」
「ダメよ、ねぇ貴方も本当は私のこと嫌いなんでしょ!」
「好き好き、大好きだから!そういう面倒なやりとりいいから!」
「面倒!?」
場所が悪いし、男達に対する愚痴は聞いてあげるから急いでと思っていたのだが、既に間に合わなかったようであった。
女子トイレの近くで悪臭がする。
しかも、ちょっと重めの足音がするじゃないか。
振り向いたら、緑色のちょっと汚れたトロールが立っており、頭を掻いていた。
あら可愛い、こんなことを思うのはハグリッドだけだ。
「うわぁぁぁぁぁ!」
「ちょっと、急に大きな声を……」
「だから急げって言ったのに!」
「きゃぁぁぁぁ!?」
騒いでる場合かと、ハーマイオニーを掴んでそのまま女子トイレに倒れるように滑る。
汚いけど今はそれどころではなかった。
先ほどまでいた場所にはトロールの棍棒が振り下ろされており、便器が割れて水がトイレに勢いよくスプリンクラーのように溢れていた。
「最悪っ!イモ―ビラス!」
「す、すごいわ!トロールが止まった!」
「無理無理、ちょっと早く棍棒取り上げて!」
「なんで、早く逃げましょうよ!」
「動いたら集中力が切れちゃう」
そしたらトロールが動き出して、でもって私達はぺちゃんこだ。
しかし、不幸なことは続くようで集中力を切らす出来事が起きた。
「ハーマイオニー!助けに来たよ!」
「あっ」
「あっ、じゃないわよ!うわわわ、こっち来た」
トロールが再び動き出し棍棒を振るったかに見えた。
しかし、棍棒はその手にはない。
なんと宙に浮いていたのだ。
「ロン!すごいや!」
「今のうちに何とかしてくれ!」
「無理よ、攻撃的なの知らないもの!」
なんとロンが杖を向けたまま立っていたのだ。
よこではしゃぐネビルの反応からして、アレは浮遊呪文に違いなかった。
だが、ロンの頼みもセブルスが闇の魔術はダメと言ったので攻撃的な呪文を知らないから無理だった。
ハーマイオニーも簡単な呪文しか知らないので当たり前である。
しかし、コノヤローと破れかぶれにロンが杖を振ったことで事態は好転した。
なんと、棍棒は力を失って垂直落下し、トロールにぶつかったのだ。
するとトロールは頭を押さえながらフラフラして、ダラッと舌を出しながら倒れた。
「やった!」
「いえぇぇぇぇい!」
安心して腰が抜けたのか壁に寄りかかっていると、先生達がやってきた。
マグゴナガルが凄い怒鳴り散らしていたが、男二人がどうにかしてくれるだろう。
「だ、大丈夫?」
「怖かったよぉぉぉぉ!」
「ちょ、ハリエット!ローブが汚いから抱きつかないで」
そうは言っても、あんなことが合ったのだから抱きついても仕方ないだろうと一人で内心言い訳する。
とにかく事情を聞きたがると思って何とかハーマイオニーにしがみついて立ち上がるとトイレの前が騒がしかった。
「やめるんじゃセブルス!セブルス!」
「クィレル、貴様のせいだぞ!よくもトロールなんぞ!」
「落ち着きなさい、セブルス!」
「離せマクゴナガル!お前の企みなどお見通しだぞ!」
何故か女子トイレの前でセブルスとクィレル先生が取っ組み合いの喧嘩をしていた。
というか、一方的にブンブンとクィレル先生が振り回されていただけだけど。
「どういう状況?」
「なんか、クィレル先生がトロールを用意したみたい」
「せ、先生が責任を追及されてるんだ、だと思う、ごめん」
「何で謝るのよネビル」
もういいからさっさと行きなさいとマクゴナガル先生に促されて、私達は女子トイレを後にした。
後日、よく分からない理由でグリフィンドールは加点されていて、スリザリンも加点されていた。
ダンブルドア「やっべ、アイツなにしてるの」
セブルス「悪戯ですから、大丈夫だから!」
パンジー「辛い!?何で!」
ダフネ「水!……ゴフッ、これも辛い!」
クィレル「まさかバレて!?」
セブルス「ぶっ殺!」
※本編とは関係ないよ、本当だよ。
変更点
ダンブルドアの脅威認定が執行対象にまで上がった。
スリザリンの好感度が上がった。
ネビルの好感度上昇が追加された。
原作よりも戦えないことに主人公が不甲斐なさを感じた。
スネイプ先生が犯人追及にガチになった。
パンジーとダフネへのヘイトが減った。