ハリエット・ポッター物語   作:nyasu

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授業と談話室

ホグワーツに来て数日が経過した。

私の発言が尾を引いているのか、女子生徒には無視されたり教科書を隠されたりされる。

まぁ、セブルスが教えてくれたアクシオで捜し物は見つかるのだけど面倒だった。

これが落書きとかならセブルスに言いつけられるのに、証拠を残さず精神的な疲労を与えてくるとは流石スリザリンである。

 

「チョームカつく」

「落ち着けよ。君の大好きなスネイプの授業だ」

「別に好きじゃないわよ」

「だろうね、だから僕がスネイプの使ってるシャンプーから飲んでる紅茶まで知ってるけどこれは常識なんだね」

「そんなに話してた?嘘、気を付けるわ」

 

教室に向かう途中、ドラコに呆れられながら恥ずかしくなった。

自分が思っている以上にセブルスの話をしていたようだからだ。

いや、知り合いがセブルスしかいないのだから仕方ないのである。

 

「我輩のシャンプーなどどうでも良い、邪魔だ」

「ス、スネイプ教授!」

「ごめんなさいセブルス、すぐに座るわ」

 

悩んでいたら邪魔になっていたのか背後からセブルスの声が響いた。

ドラコは顔が怖いからか怯えていたけど、とっても面倒見がいい人だって私の話を聞いていたのだろうか。

とはいえ、あまりドアの前にいるわけにも行かないのですぐに席に着く。

セブルスは勢いよくドアを開け、マントを翻しながら言った。

 

「この授業では杖を振ったり、ばかげた呪文を唱えたりしない。いいかな、魔法薬調合の微妙な科学と芸術的な技を諸君が理解できるとは期待していない。だが、一部の素質のある選ばれた者には伝授してやろう。人の心を操り感覚を惑わせる技を……名声を瓶の中に詰め栄光を醸造し死にすら蓋をする、そういう技を……」

 

スリザリン生の方から熱い眼差しが送られる、いいぞ格好いいぞという視線だ。

生憎、グリフィンドールの受けは良くないみたいだがスリザリン生は自尊心が強いから選ばれた者とか名声とか栄光ってフレーズは大受けだ。

魔法薬学の授業が終わるとマグゴナガル先生の変身術の授業だ。

彼女はとても厳しい先生なのでよく減点されてしまう。

その分だけ褒めるときは褒めてくれるが、トータルはマイナスだ。

 

「ドラコ早くして、遅刻よ!」

「君が階段で転ぶから遅れたんだろ!」

「だって、楽しみで足下が疎かになっちゃったんだもん」

 

教室には此方を見るスリザリン生の姿があった。

クラッブとゴイルが先に荷物と席を確保してくれたので、いつもより早く移動できたのだが間に合ってなさげだ。

 

「良かった、マクゴナガルはまだ来てないようだ」

「いいえ、もう来てるわ。セブルスが教えてくれたの、先生は猫に変身できるって」

「えっ!?えっと、変身お見事です先生」

「ありがとうございます。でも遅刻は遅刻です、スリザリンは二点減点。さぁ、早く席に着きなさい」

 

授業が終われば談話室で課題作成である。

みんなで分担して課題を作成するのは、団結力の強いスリザリンならではだなといった感じだ。

課題が終わればみんなでティータイム、こうやって社交的な催しを寮でするのはスリザリンの特徴なのかもしれない。

 

「今日のクィレルの授業は最悪だった。部屋が悪臭だらけだぞ」

「授業に必要なのかもしれないわ。私もちょっと苦手よ、なんか合わない」

「君がそういうことを言うのは意外だな」

 

視線や雰囲気なのか、話していると気分が悪くなるのだ。

いや、服についたニンニクとかの臭いのせいかもしれない、というか高確率でそうだろう。

 

「たぶん臭いが駄目なのね」

「君にも苦手な事があるんだな」

「完璧超人じゃないのよ」

「でも、グリフィンドールのグレンジャーのようにスリザリンで一番の得点女王だ」

 

ドラコの言葉にその通りだと賛同する声が上がる。

ネタバラシするならば、よく一緒に勉強してたり話したりするからだ。

 

「惜しいのは彼女が純血じゃないと言うところだ。もっとあるぞ、君がクィディッチに興味がないことも惜しい」

「また純血とクィディッチ?」

「あんなに箒が上手いのに、それに君の父親のトロフィーも見たぞ。やはり優れた血統なのさ」

「血に誇りを持つのは勝手だけど、考えが古いと思わない?」

 

その言葉に、この話題は好きじゃなかったなとドラコが顔を顰める。

気を付けていても家での環境というか考え方が染み付いていて気にしてしまうのは仕方ないのだろう。

 

「別に純血主義が嫌という訳じゃないの。優れた血を誇るのは良いことだわ。ただ、純血以外を排除しようとか支配しようって考えは前時代的だと思ってるのよ。人間の価値は血筋で決まらないもの」

「だが、純血に優秀な者が多いのは事実だ」

「ハーマイオニーはマグル出身よ。それに純血が優れているのは、親が家で魔法について教えてくれたからよ。家で魔法について教えて貰ったことがない純血の名家ってあります?」

 

冗談めかして聞いてみれば、誰一人として答える者がいなかった。

やっぱり私の考察は正しかったなと思った瞬間だった。

しかし、納得いかないというか純血の名家というマルフォイ家を背負っている身としてドラコは反論せざるを得なかったみたいで口を開く。

 

「だが、マグルは危険なんだ。彼らは魔法がなかった場所から魔法界に来る、だから魔法を軽視する傾向にあるんだ。それにマグルを守るために純血が冷遇されることも見過ごせない」

「それが純血主義の根底にあるのね。でも、最初の魔法使いって純血?親も魔法使いなのかしらね」

 

そうなのだ、最初の魔法使いの血統を守るのが純血主義だとしたら矛盾があるのだ。

最初の魔法使いはマグル出身でないと成立しないという矛盾だ。

もし両親が魔法使いなら、それは最初の魔法使いではない。

なので、遡り続けると最初の魔法使いが生まれるには突然変異しか考えられないのだ。

 

「それに家柄が良くても努力しない人は優秀だと思えないわ。ドラコは、もうちょっと頑張りましょう」

「勉強の事は関係ないだろ」

「あるわよ。家柄だけの無能が自分の上司だったら絶対嫌だと思うわ。それに仲が悪いから就職させないとか純血は要職に多いからありそうよね」

「まぁ、否定はしない」

「他にも問題はあるわ。マグルには遺伝学というのがあるのだけど、近い血が重なると子供に影響が出るのよ。私の予想だけど近親婚の結果、スクイブみたいに魔法が使えない人が生まれたのかも」

 

私の言葉に、遺伝学?という言葉が返ってくる。

だが、遺伝学は知らなくても近親婚は良くないことが起きるというのは経験則で知っている者達がいたのか、近親婚は危険だという言葉も上がった。

純血を気にするだけ合って、近親婚にまつわる話をよく聞いているのかも知れない。

 

「じゃあ純血ほどスクイブが生まれやすいってことかい?」

「もし聞いたことがないとしたら隠してたりしたんでしょうね。吹聴する趣味はあるはずないもの」

「なんてことだ、欠陥だらけだってことか……」

「マグル出身も隔世遺伝といって突然変異じゃない可能性はあるわ。先祖に魔法使いの血が混じればあり得ない話じゃないのよ。スクイブからだって普通に魔法使いの子供は生まれるし」

 

それになにより、比率で見たら純血の家はもうそれほど多くはないのだ。

もし、純血主義をヴォルデモートのように大真面目で取り掛かろうとしたら、排除したらイギリス魔法界は滅茶苦茶である。

仕方なく、マグル出身を従わせる選択を取るに違いないことだろう。

そして自分が劣っていたら、マグル出身の魔法使いによる反乱が起きること請け合いである。

そんな話をしたら、みんな顔が真っ青になっていた。

 

「あら、ごめんなさい。例のあの人って言わなきゃよね」

「全くだ、恐れ多いことだぞ」

「死人じゃない」

「あの人なら生きてても不思議じゃないし、蘇ってくるかもしれないだろう」

 

そんな軽くホラーな話をしてお茶会は解散するのだった。

翌日の事であったが、私に対する虐めは少なくなった。

中には、やっぱり将来の事を考えると純血の名家に睨まれたくないから仕方なくと言って謝る子がいたくらいだ。

因みに、そういう子に指示を出していたのはパンジーとダフネらしい。

許さない、いつか食べ物が辛く感じる魔法を作ってお見舞いしてやる。

 




セブルス「ルシウスの倅か、覚えておこう」
セブルス「どうだ、決まった」
セブルス「加点したいけど贔屓すると怒られるからなぁ……」

※先生はこんなにお茶目じゃないです。本編とは関係ありません。

変更点
他寮に対するマクゴナガルの反応が判明した。
セブルスにいいとこを見せようと勤勉になる。
スリザリンに得点してくれる人が増えた。
スリザリン生が純血主義について妄信から個人の思想に考えを改めた。
スリザリン生が遺伝学という物を知ってマグルへの好感度がちょっと上がった。
パンジーとダフネへのヘイトが溜まった。

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