組み分けの準備を待っていると、若いのにオールバックの子が目の前に来た。
あぁ、セブルスが言っていたマルフォイ家の子だろう……金髪だから。
「本当なんだ?駅で聞いた話。ハリー・ポッターがホグワーツに来たって」
「ハリエット・ポッターね。ハグリッドが間違えただけよ」
「そうかい。こいつはクラッブ、ゴイルだ。僕はマルフォイ、ドラコ・マルフォイだ」
「ブフォッ!」
ドヤ顔で自己紹介するマルフォイの様子にロンがいきなり吹き出した。
確かに面白かったが、それは失礼だと思う。
案の定、相手も不愉快だったのか一瞬だけ睨み付けて余裕の笑みを取り繕う。
「赤毛に、このお下がりのローブ。ウィーズリーの家の子だろう?魔法族にも家柄の良いのと、そうでないのがいるんだ。付き合う友達は選んだ方がいいよ」
「ありがとう。もし一緒の寮になったら色々と教えてね」
「おい、ハリエットそんな奴と喋るなよ」
「今のはロンにも落ち度があるわ。自己紹介で笑っちゃうんだもん」
クソっと悪態を吐いてマルフォイを睨み付けるロン、対してドヤァと御満悦なマルフォイ。
よくドヤ顔する子だなと思っていたら、マクゴナガル先生がやってきて丸めた羊皮紙で軽くマルフォイを叩いた。
「準備は出来ました。来なさい」
マグゴナガル先生に先導されて中に入ると、多くの生徒が大量の食事が並べられた長テーブルに座って此方を見ていた。
宙には蝋燭が浮き、天井は夜空のようになっていた。
「空じゃなくて天井よ。魔法で夜空みたいに見えるだけ『ホグワーツの歴史』という本に書いてあったわ」
「あの本ね、実際に見るまで想像出来なかったわ」
「でも、なんで夜空にしたのかしら」
「見栄えだけよね……」
私達の前には継ぎ接ぎだらけの帽子が置いてあった。
間違いない、魔法の帽子だ。だって、ただの帽子が置いてあるわけ無いからだ。
トップバッターはハーマイオニーだった。
帽子を被るとハーマイオニーがブツブツ言っている。
帽子と喋っているとも見える光景、次の瞬間には声が聞こえた。
「グリフィンドール!」
「帽子が喋ったわ」
「わお、マーリンの髭」
「何言ってるのロン?」
ハーマイオニーはえっという顔をしたが、祝福して拍手するグリフィンドール生を見て笑顔で席に向かった。
希望の寮でなくても切り替えていこうと思ったのだろう。
それからドンドン順番は回っていき、ロンやネビルの番にもなった。
彼らもグリフィンドールになって、おいおい均等に分けてるのかと疑問が湧く。
あのドヤ顔マルフォイ君はスリザリンなので、仲良くなる可能性は高そうだ。
「ハリエット・ポッター!」
「ポッター?」
「もしかして、あの」
在校生達の方からザワザワ聞こえたが、それは私がいたことを知らなかったからだろう。
何故なら、後ろにいる入学生は何を今更といった感じだからだ。
用意された組み分けの帽子を被ると、やはり声が聞こえた。
これは外からは寮の名前以外聞こえない仕様なのだろう。
「んん、難しい、こいつは難しい。勇気に溢れておる。頭も悪くない。才能もある。そして、自分の力を発揮したいと願っておる。さてどこに入れたものか」
「スリザリンがいいわ。セブルスもスリザリンは良いところって言ってたし」
「おぉ、スリザリンがいいのかね?君はきっと偉大になれる。その素質は十分に備わっておる。スリザリンに入れば、間違いなく偉大になる者への道が開けるだろう。よろしい」
大きな声が、組み分け帽子から響いた。
「スリザリン!」
割れんばかりの拍手がスリザリンだけから鳴り響いた。
たぶん、他の寮は悔しがっているのだろう。
教師陣も悔しかったのか、グリフィンドール贔屓のダンブルドア校長など立ち上がって固まっていた。
だが、すぐに拍手をし始めたので動揺していたのがバレたくなかったのだろう。
セブルスがちょっとだけ口角を上げていたので軽く手を振ってみたら、咳き込んでしまった。
気管に飲み物でも入ったのか、おっちょこちょいだな。
「やぁ、また会えたね。同じ寮になれて光栄だよ、ハリエット・ポッター殿」
「似合ってないわよ、その気取った言い回し。でも、一緒になれたことだけは同感だわ」
「来たまえ、君を紹介して欲しいと言う声が多いんだ」
席について待ち構えていたのかマルフォイが待っていた。
先輩達はなんだか一歩引いていて、なるほど家格を重んじる寮なんだなと思った。
そんな彼は席まで用意していてのか、私を先導する。
「クラップとゴイルは知っているから女子生徒を紹介しよう」
「あら、もしかして学校に入る前からの友達なの?」
「よく分かったね。僕達は家同士の付き合いがあるんだ、紹介しようパンジーとダフネだ」
マルフォイに紹介されたのは綺麗な子とパグに似た可愛い子だった。
どちらも立ち振る舞いが綺麗であり、たぶん立ち方とか練習したんだなと思う。
魔法界のお金持ち、お嬢様かと感心する。
「紹介されて光栄だわ、これからよろしくね」
「此方こそ、貴方のような有名人と知り合えて嬉しいわ」
「何それ嫌味?それとも褒めてるの?」
「勿論、褒めてるのよね。でも、嫌味に聞こえたらごめんあそばせ」
パンジーの言葉をフォローするようにダフネが口を開いたのだが、思わず笑ってしまう。
少なくとも自分の周りにはそんな言い方する人はいなかったからだ。
でも、名誉や家格を重んじる貴族然とした人物が多いスリザリンでは嫌味に聞こえるが有名人など名声を表す言葉は褒め言葉なのだろう。
少し嫌味に捉えてしまう自分を恥じるばかりだ。
「ハリエットもやっぱり純血主義なのかしら?」
「当然よ、マグルの血が混じっているなんて穢らわしいわ」
その言葉を聞いて、私の方から笑みが消えた。
純血主義という決めつけは、まぁスリザリンに入ったらまぁいいとして、穢らわしいと言われるのだけはムカついたからだ。
「じゃあ私とは仲良く出来ないわね。私のママはマグル出身の魔女だから」
えっ、と言った顔がスリザリン全体に広がった。
セブルスは隠した方が良いと純血主義を教えてくれたときに言っていたが、何もマグル生まれの魔法使いがいることを恥じる必要はない。
「それは悲しい事実だが、まぁポッター家は純血だ。だから半純血って奴さ」
「それで、私の子供からは混血扱い?それも悲しい事実ね。最初に言っとくけど、血を誇りに思うのは結構だけど、それで差別する人は友人にはなりたくないわ」
「ごめんなさい、貴方がコンプレックスに思ってたとは知らなかったのよ」
「傲慢な考えだわ。血に拘るなんて、人を馬か犬とでも馬鹿にしているの?やめて頂戴」
コンプレックスと思っているのは純血主義に傾倒している人間だけだと、不機嫌になりながら食事をすることにする。
ドラコには小さな声で場の雰囲気を悪くしてごめんと謝ったが、彼のメンツを傷つけたことは確かだ。
私は気にしないが、彼は気にするだろうから本当に悪いことをした。
「まぁ、言い方は悪かったが悪気はないんだ」
「そうね。家の方針とか、周囲の影響もあると思うわ。貴方の顔を潰した形になってしまったわね、ごめんなさい」
「いいさ、僕だって両親を馬鹿にされたらアレぐらい言うだろう。君にとっては、そう取りかねない言葉だったんだろう」
「理解があって助かるわ」
それからスリザリンの寮へと移動した。
スリザリンの寮は地下牢で、ちょっと薄気味悪いなと思ったのだった。
ダンブルドア「嘘やろ、ホンマでっか?」
セブルス「YOOOOOOOO!」
ダンブルドア「アカン、お辞儀の再来や」
セブルス「やったぜ」
※本編とは関係ないギャグコーナーです。
変更点
マルフォイの好感度が嫌な奴ではなく親切なドヤ顔に変わった。
セブルスの影響とロンの偏見に影響されずスリザリンに変更。
ダンブルドアの猜疑心が上昇した。
セブルスの好感度がカンストしているので変化しなかった。
偏見なくスリザリンを見ることで、スリザリンに対して理解を示すようになった。