闇の印
これは夢だと、私は気付いていた。
明晰夢と言う奴だろう。
そこはどこかの使われなくなった洋館、目の前には炎が灯された暖炉がある。
あぁ、これはきっと例のあの人の見ている光景なのだと私には確信があった。
奴は、やはり生きていたのだ。
「御主人様、まだお腹がお空きでしたらまだ少しは瓶に残っておりますが」
『あとにする。ワームテール、俺様をもっと火に近付けるのだ!』
私の視界が火に近づき、奴を通して見ている事が分かる。
きっとこれは現実、いったい奴はどこにいるのか分からないだろうか。
そして、それと同時にピーターペティグリューが生かしたことに後悔する。
よもや必要だからと逃がした結果が、奴の元に行くということになろうとは誰が想像出来ようか。
ある意味ではダンブルドアよりも先に見つけ出したのだから、そのすごさが分かるという物だ。
自覚して、そして見ようとしていたことが良くなかったのだろう。
視界は真っ暗闇に包まれ、それが目を閉じたからだと分かった。
「どうしました御主人様?」
『黙れ!静かにしろ!』
数秒の沈黙、奴は何か探ろうとしているのか疑問を覚える。
そういえば、誰かが来るような音がした気もしなくはない。
もちろん、それが気のせいという可能性もある。
しかし、奴がしようとしていたのは来たかもしれない誰かを探すという行為では無かった。
『貴様、見ているな!』
「……ハッ!?」
耳元で聞こえた声に私の意識は一気に覚醒する。
同時に背中を悪寒が走り、まるでフルマラソンでもした後のように荒い呼吸をしながらベッドで仰向けになっていた。
私がその瞬間に思ったことは、気付かれたという物だった。
「ハァハァ……」
自分の顔を片手で覆うようにしながら貧血気味の頭を支える。
スルリと前髪が流れ、張り付いたことで自分が汗だくだと気付いた。
「最っ悪……」
悪態を吐きながら私はシャワーを浴びに行くのだった。
シャワーを浴びた私はタオルで髪を拭きながら、リビングへとやって来ていた。
それが行儀の悪いことだとは分かっているのだが、朝と言うこともあって頭が回っていなかった。
リビングにはウサギの餌と叔父さんが言う、食事制限メニューがずらりと並んでいた。
グレープフルーツと牛乳とパン一枚といった具合で、実はダドリーが太りすぎと学校で言われたかららしい。
制服のサイズないので痩せて下さいとのことだ。
「おい、なんて格好をしている!」
「うん?」
「ゲホッ、ゲホッ、オエッ!」
キャミソール一枚の格好で出てきた私をバーノン叔父さんが叱責して、あぁ確かにちょっとはしたないかもなと思うのだった。
というか、そんな格好のせいかダドリーは飲んでいた牛乳を吐き出しながら咽せてしまった。
あぁ、年頃だもんな。なんかごめんね。
内心でそう思いながらも、別に家族なんだから恥ずかしくないのではと思わずにはいられない。
いや、ダドリーのなかで義妹は家族では無く性の……想像力たくましい発想は私の精神衛生上に良くないのでやめることにした。
頭の中で、義妹は甘え実妹こそが至高と変な言葉が聞こえたがたぶんハーマイオニーに借りた恋愛小説のせいである。
「いいから着替えてきなさい」
「叔父さん、今は夏だし暑いじゃないですか」
「それでもだ!まったくもう、まったくもうだ」
私よりも暑苦しそうな人が必死に捲し立てるので渋々部屋に戻って上着を羽織った。
着替えながら、そういえば夏休みに遊びに誘ったのにフラれたなと一人残念に思う。
というのも、仲直りの一環としてドラコにクィディッチの試合がイギリスであるらしいけど君の伝で行きたいな的なことを興味も無いのに言ったのだ。
それに対する返答は、今度のクィディッチは行かない方がいいってパパが言ってたから行けないんだ。
忘れよとしてたのに、どうして思い出させるんだ。
なんていう、何というか間が悪い結果になってしまった。
ドラコが言うには、ここだけの話テロ予告があったらしい。
魔法省は悪戯として処理したけど、心配性なドラコパパによってドラコは行くことが出来なかった訳である。
必至に忘れようとしてるところに、なんでそんなこと言ったのか後悔しかない。
悠々自適な夏休みも終わり、久し振りに魔法が使えるホグワーツへと行く時期がやって来た。
降りしきる雨が窓を打つ中、ホグワーツの制服に着替えて新聞でも読む。
家では魔法界のことは禁句扱いだから、情報に疎いのだ。
「闇の印、魔法省大失態?」
新聞を見て、最初に見えた見出しはワールドカップで起きたテロの話であった。
ドラコが言ってた話だ!
私はそう確信して読み進めると、闇の印とは例のあの人の信奉者達が掲げるシンボルらしい。
もしや、例のあの人が復活したのではと記者が詰め寄ったが魔法省は依然として直ちに影響は無く調査中なため答える事は出来ないと否定したらしい。
奴の復活か、それは魔法省だって知っているはずだ。
それとも、ダンブルドアはホグワーツでの出来事を隠しているのだろうか。
「というか、よくもまぁ毎年何かしらの事件が起きるわね。四年連続ってどういうことよ、まさか今年の防衛術の先生も訳ありとかじゃないでしょうねぇ」
「あら、大きな独り言ね。それとも、私への質問かしら?」
「わっ、ハーマイオニー!」
「隣いいかしら?」
コンパートメントに入ってくるや否や、彼女は私の手元を見て何かに気付いた様子を見せる。
何、と聴けば私はそこにいたのよと気になることを言い出した。
「どうして?だって、貴方チケット持ってた?」
「ロンの伝でね、彼はああぁでもお父さんは魔法省勤務だから」
「あぁ、確かにアレでも純血でもある由緒ある一族なんだよな」
あれ、実はロンはすごい奴なんじゃ無いだろうか。
モチのロンさ、なんて頭に聞こえたのでそんな想像は追い出した。
「それでね、私はじめて屋敷しもべ妖精に会ったの!彼らは不当な労働を強いられてるわ!いい、そもそも――」
「あぁ、うん、そうだね」
その後、私は後悔した。
ハーマイオニーが屋敷しもべ妖精と出会ったことを知っていればコンパートメントに入れなかったのにな、と。
ハーマイオニーの話は、ホグワーツに着く間、半日にも及んだ。
「立ち上がれ、同志諸君!今こそ、自由の為に戦うときである」
「あぁ、うん、そうだね」
早く着かないかなぁ……。
学校に着き、無事に新入生の組み分けを見守る。
グリフィンドールではお互いに拳をぶつけ、ハッフルパフはお互いをハグし、レイブンクローはお互いに一礼、スリザリンは握手と久し振りの学友への態度も寮ごとに特色溢れている。
さて、そんな場所に似つかわしくない目をギョロッとさせた人が居た。
スリザリンの誰からとも無くマッドアイムーディーだという声が聞こえた。
なんです、その変な名前は?いい人かもしれないけど、親の気がしれない。
「やぁ」
「あぁ、久し振りね」
「なぁ、怒ってるのかい?どうして目を合わせやしないんだ?」
「別に、貴方が一人でクィディッチのワールドカップに行ったと聞いて、気分が悪いだけよ」
「あぁ……いや、あれは急に決まってね。ごめん、埋め合わせするから許して欲しい」
新しい闇の魔術に対する防衛術の先生に何か引き付けられるように見ていると、ドラコがやって来て話し掛けた。
私の態度にやれやれと困惑する顔は少し腹立たしい、でも前のように仲直りは一応出来たのかもしれない。
少なくとも、会話すらなかった時とは雲泥の差だからだ。
「それより知ってるかい?三大魔法学校対抗試合について」
「そういう話の振り方をされる時って、大概は知らないわ。だから答えは、ノーよ!」
「やっぱ怒ってる?」
「怒ってない!」
怒ってないのに、どうしてそうやって聞いてくるのか。
私は暫くドラコに説教してやった。
「やっぱ怒ってるじゃ無いか!」
「また言うの!貴方ね!」
御辞儀「忌々しい、ポッターの血統か」
ダドリー「アレは妹アレは妹……妹なら問題ない?」
バーノン「プラチナムカつく!」
魔法省「遺憾の意である」
予言者新聞「テロ予告があったとか、予見できたのでは?」
魔法省「そのような話はございません」
予言者新聞「大臣、逃げるのですか!どう責任を取るおつもりで」
ファッジ「心が折れそうだ……」
ハーマイオニー「あえて言おう、魔法族はカスであると!」
セブルス「あのガキッ!」
マクゴナガル「コラコラやめなさい、ハンカチ噛まない噛まない」
※後書き何を書けば良いか分からなかったのと忙しくて更新してなかったよ。
でも後書きと作者の事情は本編とは関係ないです、フィクションです。
変更点
ネビル、ロン、ハーマイオニーでワールドカップ。
C→Dになる。
御辞儀様が絆を感じる。
なお、ハリエットは拒否したい。
ハーマイオニー、屋敷しもべ症候群発症、賛同されて調子乗る。