ハリエット・ポッター物語   作:nyasu

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叫びの屋敷

杖を構えた状態で、ゆっくりと進んでいく。

階段のようになったその場所を上っていくと、叫びの屋敷の中へと繋がっていた。

 

「ロン?どこにいるの?」

「上、かしらね?」

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

二人で警戒しながら進んでいたら、ロンの悲鳴が屋敷の中に響いた。

お互いの顔を見合わせ、焦りながら急いで階段を上がった。

階段を駆け上がり、私達は部屋の隅で足を抑えながら泣いているロンを見つけて安堵する。

 

「ロン大丈夫?」

「待って、あの犬はどうしたの?」

「シリウスブラックだ!ハリエット、これは罠だ!」

 

だが、そんな私達を余所にロンが叫んだ。

いきなり何だと思えば、背後で気配がした。

 

「ッ!?」

 

ロンの方に移動しながら、反射的に振り返る。

すると、ドアがゆっくりと動いた。

ドアの物陰に、奴はいた。

シリウスブラックが、そこにはいた。

 

「お前が、シリウスブラック……」

「動物擬きだ、アイツ動物擬きだったんだ!」

「あぁ、ハリー……」

 

シリウスブラックはフラつく足取りで私の名前を呼んだ。

コイツが、私の両親を……。

 

「動くな」

「何だと、私を殺す気かハリー」

「えぇ、両親の仇ですもの」

「そうか、私を殺すかハハハ!ふざけるな!」

 

激昂しようが私には関係なかった。

私は杖を振りかぶり、殺意を持って呪文を唱える。

もう終わりにしよう、例えアズカバンに行ったとしても後悔は無い。

 

「アバダ――」

「エクスペリアームス!」

 

突如、私の杖が吹き飛んだ。

誰かの呪文によってそれは成されたと判断した私は、それを行った人物の方向を向く。

そこには、リーマス先生がいた。

先生は、顎で私に退くように指示を出す。

渋々、私はそれに従いシリウスブラックから距離を取る。

 

「これはこれはシリウス、内なる狂気が肉体にも表れたか?」

「内なる狂気?それはお前が一番知っているはずだ」

「フフフ」

「ハハハ!あぁ、リーマス!」

 

馬鹿な、そんな、あり得ない……。

私の目の前で理解できない光景が出来上がる。

なんと、リーマスがその腕をシリウスに伸ばし、立ち上がらせハグしていたのだ。

 

「奴を見つけた!ここにいる!さぁ殺そう、今すぐ殺そう!」

「分かっている」

 

シリウスブラックが私達を見ながら喜びの声を上げる。

それをリーマスは一緒になって笑っていた。

狂喜だ、私を殺せることに彼らは心の内で狂喜乱舞しているのだ。

そんな様子にショックを受けていたハーマイオニーが一番始めに動いた。

 

「ダメよ!そんな事はさせないわ!」

「邪魔をするな小娘!」

「信じていたのに、グルだったのね!ハリーを殺すために其奴を手引きした、狼人間だったから授業を休んでいたのよ!」

 

ハーマイオニーが半狂乱に叫ぶ、その言葉にリーマスの眉尻がピクリと動いた。

そして、ゆっくりと私達を見ながらいつから気付いていたと、問いを投げかける。

 

「スネイプ先生が宿題に出してから、授業を休んだ周期から疑っていたわ」

「そうか、君はとても優秀な魔女だ。まさかその――」

「リーマス!もう良いだろ、殺そう!もう沢山だ!もう嫌と言うほど待った!12年も、アズカバンで!」

「……良かろう、殺せ。だが、もう少し待て。ハリーには知る権利がある」

 

リーマスが私達から視線を逸らし、自分の杖を背後で笑うシリウスブラックに受け渡す。

その手で殺させようというリーマスなりの配慮に、シリウスブラックは余計に笑みを深めた。

杖は無く、今の私達は無防備だ。

もし死の呪文を受けて、私は生き残る事が出来るのだろうか。

仮に出来たとして、ハーマイオニー達は無事では済まない。

私に力があれば、万事休すか……。

 

「君の両親を殺したのは――」

「もう知ってるわ、その男よ」

「違う!殺したのは別の男だ!」

「ピーターペティグリュー!この部屋にいる!」

 

ピーターペティグリュー?だが、その人は死んだはずだ。

私はシリウスブラックの言葉に疑問を覚える。

その言葉を聞いて、リーマスが続きを喋ろうとした時だった。

 

「エクスペリアームズ!」

 

颯爽と、黒い影が私達の前にやって来る。

まるで、守るように手を広げ私達を背にしながら彼が現れた。

セブルススネイプ、スリザリンの先生、そして私の憧れだ。

 

「セブルス!」

「下がっていろ、ポッター!」

 

いつもと違う声音で彼が指示を出す。

それに従い、私達は少しずつ後ろに下がった。

そんな私達を確認して、セブルスは油断など微塵も見せない様子でリーマスとシリウスブラックを睨み付けた。

 

「セブルス、やめるんだ」

「復讐は蜜より甘い、よく言った物だ。貴様を捕らえたかった、ずっとだ!」

「セブルス!」

「気安く我輩の名を呼ぶな人狼!やはり、貴様が手引きしていたのだな!」

 

セブルスが杖を突きつけながら、リーマスを詰問する。

リーマスは杖に怯えながら、喉を震わせ弁解を述べようとしていた。

そんな様子を背後で見ていたシリウスブラックが、突如笑い出す。

 

「ハハハ!アーハハハハ!」

「何が可笑しい!」

「お見事、鋭い観察力でまた間違った結論を引き出した。悪いがリーマスとの仕事が残っている」

「貴様、我輩が殺せないとそう思っているのか?アズカバンを恐れて、手を汚せないと本気で思っているのか?理由さえあればいつだって殺せることを努々忘れぬ事だ」

「待てセブルス、血迷うな!」

 

杖を向けられた状態でリーマスが叫んだ。

それは、仲間を殺されまいと焦る姿だ。

だが、そんなリーマスを尻目にシリウスは挑発を続ける。

 

「コイツの癖さ、昔からそうだった。そうだろう、スニベルス」

「黙れ!シリウス、挑発するな!」

「フン、まるで夫婦喧嘩ですなぁ……」

「お前こそ黙れ!薬品セットで遊んでいるがいい!」

 

シリウスの挑発に、セブルスがどんな顔をしているのか。

彼の後ろ姿しか見えない私達には窺い知ることの出来ない状態だった。

だが、それでも彼が静かに怒っていることだけは手に取るように理解できた。

そんな彼は、ゆっくりと言葉を口にする。

それはシリウスブラックを恐怖のどん底に突き落とすための言葉だ。

 

「殺してやっても良いが、吸魂鬼がお前を血眼になって探している。どうした恐怖の顔が浮かんだぞ?」

「黙れ!」

「人の魂を抜くディメンターのキス。目を覆いたくなる様と聞くが、しっかりと拝見するとしよう」

「後少しで、邪魔をするな!」

 

シリウスブラックが杖を構える。

激昂し、セブルスに向かって呪文を放つ気だ。

私は、ハーマイオニーのポケットから杖を奪い取るように手にすると、杖先をシリウスブラックに向けた。

そして、奴が言葉を口にする前に呪文を唱える。

 

「まさか、ハリー!止せ、やめろ!」

「アバダケダブラ!」

 

未熟な者なら効果を発揮しない、死の呪文が杖先から放たれる。

緑色の閃光はセブルスを襲おうとしてシリウスブラックに着弾し、奴を壁まで吹き飛ばす。

その際、ベッドに奴はぶつかり崩れ落ちると供にベッドの下敷きになった。

 

「嘘だ……シリウス、起きろ……」

 

リーマスが、力なく手を伸ばしながら呆然とする。

私は、咄嗟の事ながら呪文を使った反動で腰が砕けたように膝から落ちるように倒れ込んだ。

 

「ハリエット!」

「ハァハァ……やった、やってやった!仇を、仇を取ったのよ!」

 

達成感と充実感に包まれた私は笑顔を浮かべる。

ハーマイオニー達から怯えの感情を向けられるが、そんなことは些末事だ。

この手で、私はこの手で仇を取ったのだから。

 

「何故だ!何故殺した!」

「いかん!」

 

余韻に浸っていた私は、そのせいで油断していた。

杖も持っていないと警戒していなかったのかセブルスも驚きの表情を浮かべる。

リーマスは、私に向かってタックルしてきたのだ。

衝撃によって私は吹き飛び、壁際に追いやられる。

その際、ハーマイオニーの杖は転がり落ち、それをリーマスが拾いに動く。

 

「杖!ハリー、逃げて!」

 

ハーマイオニーの声がしたが、私は構わず壁に向かって動いた。

何故なら、運が良いことに私の持っていた杖が近くにあったからだ。

……あの杖を取って、奴も殺す。共犯者も、始末する。

どちらが先に杖を取るか、それがこれからの状況を決める。

そして、私は杖を先に取ることが出来た。

 

「これで終わりよ!アバダケダブラ!」

「お前の方こそ終わりだ、アバダケダブラ!」

 

振り向きながら呪文を唱える。

照準を合わせる時間は無い、どちらが先に呪文を放つかだ。

そして、お互いの杖から緑の閃光が迸った。

 

世界がゆっくりと時を刻む、迫り来る緑の閃光、私の死そのものに時間がゆっくりと進むように感じたのだ。

それは確信だった。

私はここで死ぬ、それは向かってくる緑色の閃光によって理解できる。

私はここで死ぬ、だがそこに後悔は無い。

両親の仇を取るために相打ちするくらいなら、寧ろ本望だ。

だからだろうか、私は彼の存在を見落としていた。

 

「ハリエット!?」

 

私に向かって、黒い影が覆い被さった。

それは、私を包むように覆って視界を遮る。

 

「えっ?」

 

それは誰の声だったのか。

自分の声だったかもしれないし、ハーマイオニーの声だったかもしれない。

少なくとも、それはリーマスとセブルスの声では無いことだけは確かであった。

何故なら……彼らは答える事が出来ないからだ。

 

「嘘、違う、違う違う!」

「…………」

「やだ、やだよぉ……起きて、ねぇ起きてよ!起きてよセブルス!」

 

私の前で、セブルスが死んだ。




シリウス「ホグワーツ、私は帰ってきた!」
リーマス「助けに来たぞい!」
ハーマイオニー「アンタ、満月の夜は何してた?」
リーマス「勘の良いガキは嫌いだよ!」
???「エクスペリアームズ」
リーマス「あぁん、私の杖が」
セブルス「待たせたな!」
シリウス「お前だったのか」
リーマス「やらせはせん、やらせはせんぞ!」
シリウス「ぬわっーーー!?」
リーマス「シリウスダイーーーン!?」
ハリエット「私の勝ちだぁ!」
シリウス「チーン」
セブルス「チーン」
リーマス「チーン」
ハリエット「」

※どうせみんな居なくなる。後書きと本編は関係ないです。
でも起きてしまったことは、どうしようもないね。

変更点
シリウス、セブルス、リーマス、死亡する。
ピーター大勝利、コロンビア!
ハリエット、マタ……マモレナカッタ……
ハリエット、SAN値チェック入る。

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