ハリエット・ポッター物語   作:nyasu

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真のグリフィンドール

状況は緊迫していた。

蛇の這いずる音が、遂に私達の元にまで近付いてきたのだ。

音を頼りにお互いに位置取りを探る。

バジリスクに背を向けた方が、有利になるからだ。

まるでバスケット選手のように、キュッキュッとお互いに向かい合って移動する。

くっ、足元だけ見ると魔法が避けにくい。

不幸中の幸いに奴は無言呪文を習得していないのが救いだった。

しかし、明らかに魔法を使う形跡がない。

何故?何故、控えているの?

 

「ふっ、どうやら『運命』は僕に味方しているようだ。命を運ぶとは良く言った物だな!」

「馬鹿め!背後からバジリスクが迫ってるわよ!」

「何っ!?」

 

トムリドルが咄嗟に前転することで、その場から緊急回避する。

だが、何も起きなかった。

それもそのはず、そもそもバジリスクは何故かネビルを狙って遠く離れていたからだ。

 

「貴様、僕を謀ったな!」

「後ろを向いて確認すれば良いじゃない。もっともゴーストだと石化するわよ」

 

私は薄々、奴の正体に気付き始めた。

奴は記憶と言っていたが、恐らくは魂だ。

マートルを使って実験したが、ゴーストとは生前の魔法力と魂の産物だ。

彼らは魔法力の塊であるため、魔法で干渉できる。

彼がバジリスクを恐れるなら、それはバジリスクの目から魔法で干渉されたくないという表れだ。

 

バジリスクの目は相手と目が合うという条件で相手を殺す。

恐らく目が合った瞬間、何らかの契約を結ぶのだ。

それが不完全だと半死、つまりは石化になるわけだ。

そんな視線を恐れている、そして魔法を使わない観点を考えるにだ。

 

「貴方、魔法が使えないのね」

「馬鹿な、何を根拠に……」

「貴方が本当にヴォルデモートなら、悪霊の火くらい使えるはず。私達に良いようにあしらわれるなんておかしいわ。魔法を使えば使うほど、貴方は弱くなる」

「……だからどうした、お前達程度この帝王の敵ではないッ!」

 

ゴーストは魔法を使わない。

もし、彼らが魔法を使ったら恐らくだが弱体化するのではないかと思うのだ。

そう、それも存在を維持できない程度にだ。

 

「ハリエット、もうダメだ!」

「ネビル!」

「そうはさせないぞ」

 

ネビルの助けを呼ぶ声に、ルーモスで目眩ましをしようと動こうとするが、それをトムリドルが防ごうと動く。

私が呪文を唱えようとすると、トムリドルが杖を向けていつでも呪文を放てるようにしているのだ。

仮に、私が呪文を唱えたとしてトムリドルがそこから魔法を使えば防ぐのは難しい。

二つの魔法を同時に使えたりしないからだ。

魔法を使わずして、私を牽制するとは卑怯な。

 

「ダメ、私にはどうにか出来ない」

「さぁどうする。自分を犠牲に彼を助けるのか?出来ないだろう、君は孤独だ。友人ごっこは似合わない」

「ボッチ自慢とかどうでもいいわよ!エクスパルソ!」

「プロテゴ!」

 

私の杖先から魔法が放たれ、それをトムリドルが防ぐ。

その顔は苦々しげで、出来れば使いたくなかったというのが分かる。

 

「バジリスクが此方を狙っていないのが救いか」

「このまま一方的に攻撃してあげるわ!エクスパルソ!」

「プロテゴ!」

 

早くトムリドルを倒してネビルを助けないといけない。

ネビルとトムリドルを交互に見ながら、気が抜けない状況が続く。

 

『死ねッ!』

「うわぁぁぁぁぁ!」

「ネビル!?」

 

ネビルの悲鳴に私の視線が其方に固定される。

しまった、このままじゃ!

 

「その甘さが命取りだ、ステューピファイ!」

「くっ、ステューピファイ!」

 

お互いの杖から同じ呪文が飛び出した。

その杖先から放たれる赤い矢のような閃光は同時にぶつかって拮抗する。

一本の電流をお互いの杖から放ち合っている形だ。

だが、その拮抗も長くは続かない。

トムリドルが、押され始めたのだ。

 

 

「くっ、やはり杖が合わないか」

「うぉぉぉぉぉぉ!」

 

飛んでいきそうな杖を両手で掴んでなんとか持ちこたえる。

トムリドルは苦しそうな顔をしているが、それでも片手で制御できており、地力の差がここに来て顕著になる。

 

「魔法力とは、すなわち精神力!教えてやろう、未熟な小娘が帝王には勝てないと言うことを!」

「くっ!」

 

意思の強さが魔法に直結するとするなら、此方に集中しないといけない。

だが、ネビルの命が危ない状況に気にしないという選択肢はない。

しかし、窮地かと思われたその時、遠く離れた入り口の方から鳥の雄叫びが聞こえた。

 

「あ、アレは!?」

「ダンブルドアか、味方に送ってきたのは歌い鳥に古帽子、何を考えていようがもう遅い!大勢は決した」

 

それは、あの不死鳥だった。

不死鳥が空を駆け、組み分け帽子を持ったまま飛んできたのだ。

 

『ぐあぁぁぁぁぁ!?』

「何ッ!?奴め、目を抉ったのか」

「ネビル!帽子よ、帽子にきっと逆転の一手があるに違いないわ!」

「帽子をどうしろって、被れば良いの!?」

 

あのダンブルドアが無駄なことはしないと考えられる。

だが、アレは私が使うべき物だというのか。

だから、ネビルが何かした所で無駄なのだろうか。

だったら、ネビルの身が危ない。

 

「もうダメよ、蛇は鼻もいいの!目を潰されたところで、即死を無効にしただけだわ、逃げて!」

「でも、それじゃあ」

「私は大丈夫だから、行って!早く!」

 

 

トムリドルの杖から光が勢いを増し、私の方へと押し寄せてくる。

一塊の大きな拳のような光は、トムリドルの杖側から私側に押し寄せていた。

だが、ここで諦めることは私の死を意味している。

これは精神の戦い、意思を摘み取る戦い、強い意志を持ち続けることこそが勝機だ。

 

「あぁぁぁぁぁ!」

「無駄だ、所詮は小娘!帝王には勝てない!」

「ハリエット!」

 

ネビルの声が聞こえる、だが私はもう持ちそうに無い。

ただ、失神するだけだ。

だから死ぬことは無い、だがその後バジリスクが来たら?トムリドルがトドメを刺したらどうなる?

今なら、今ならネビルだけは助かるかも知れない。

 

『おのれ、許さんぞ!許さんぞ、不死鳥!』

「逃げて、ネビル!逃げるのよ!」

「ダメだ!」

「逃げて!」

「いいや、逃げないね!」

 

その言葉を放った瞬間、私は押し負けて失神呪文を喰らう。

世界が真っ白になり、景色が薄れていく。

そんな薄れて行く景色の中で、ネビルが銀の剣を帽子から取り出しバジリスクに突き刺した光景が見えた。

 

『ぐあぁぁぁぁぁ!?』

「グリフィンドールの剣か、だがバジリスクと相打ち!僕の勝ちだ!」

「まだだ、まだ終わらない!」

 

いつの間にか私はネビルを見ていた。

どうして、私は気絶したはずなのに……だが、私の声は出せず動かすことは出来ない。

まるで、夢を見ているようなそんな感覚だ。

 

「『ヒント』は確かに受け取った!『日記』こそが全ての始まり、それをここで断つ!」

「まさか、そんな身体で何が出来るというのだ!」

「覚悟はいいかヴォルデモート!僕は、出来ているッ!」

 

ネビルが此方に向かって倒れていく。

そして、それと同時に剣を振りかぶった。

剣は、銀の煌めきを放ちながら、バジリスクの血を滴らせながら宙を舞う。

そして、そしてそれは私を貫いた。

 

「うわぁぁぁぁ!?身体が、貴様ぁぁぁ!」

「お前の敗因は仲間が居なかったことだ!」

「何故、何故僕が日記を……」

 

意識がまた薄れていく。

そして、私はここに来て漸く気付く。

刺されたのは私では無く、トムリドルだったのだと。

何故なら、薄れていく意識の中で倒れた私の姿を見たからだ。

私は、いつの間にかトムリドルの視線を見せられていたのだ。

 

「勝った!僕達は、勝っ……たん……だ……」

 

膝から崩れ落ちるようにネビルが力尽きる。

今度こそ、私は意識を完全に失った。




トムリドル「ダニィ!?」
ハリエット「うるせぇ、ボッチ!」
トムリドル「俺は帝王、貴様らとは全てが違う!」
不死鳥「バルス(物理)」
バジリスク「目がぁぁぁ!目がぁぁぁ!」
ハリエット「蛇は嗅覚も優れるのよ」
トムリドル「よく知ってるな、まるで蛇博士だ」
ネビル「覚悟とは!暗闇の荒野に!進むべき道を切り開く事だッ!」
バジリスク「ガハッ!?」
不死鳥「どうしたんだ、スネーク!スネェェェェク!」
ダンブルドア「えっ、ハリーじゃないの?」

※後書きが奇妙だって、大丈夫だ本編とは関係ない。

変更点
ネビル、グリフィンドールの剣を抜く。
トムリドル、勝負に勝ったが生存競争に負ける。
日記、剣に貫かれた。
ジニー、ネビルに助けられる。
不死鳥泣く、ただしハリーでは泣くネビル。

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