先行するネビルの顔には何か確信のような物を感じられた。
迷い無く私を引っ張り進んでいくネビル、彼には恐らく秘密の部屋がどこにあるのかと見当が付いているのだろう。
だから、私はそんな彼にどこに向かっているのか聞いた。
ネビルはその質問に、言ってなかったと言いたげなキョトンとした顔を浮かべて小さくあっと声を漏らす。
そして、慌てて私の手を離してごめんといつものネビルらしく謝った。
「それで、私達はどこに向かっているの?」
「マートルさ。バジリスクはパイプを通った。そして、50年前に死んだ女の子はトイレで共通点がある。きっとトイレに秘密の部屋があるはずなんだ、僕は気付かなかったけど、マートルに話を聞けばきっと分かるはずさ」
その話を信じて、私達はマートルの所に行った。
「マートル、居るんでしょ?」
「あらあらハリエットじゃない、なんかよう?」
「貴方が死んだときの話が聞きたいの、もしかしたら秘密の部屋が分かるかも知れないの」
「何それ?取りあえず、すごーく恐かったわ。まさにここだったの、この小部屋の中……私オリーブ・ホーンビーにメガネのことでからかわれたて、隠れて泣いてたの……そしたら、誰かが入ってくる音がして」
「誰だったの?」
「判らない、私ってば泣いてたんだもの……でもその人訳の分からない音を出してた。シューシューってね。男子だったわ。だから個室のドアを開けて出て行けよって言ったの、それで死んだ」
「それってこういう感じ『これってば蛇語なんだけど』」
「そういうシューシューだったわ」
やはり蛇語か、ならばそれがもしかしたら秘密の部屋の鍵になるのかもしれない。
そう考えた私達はトイレの探索を始めた。
便座を詳しく調べたり、洗面台の鏡を割ってみたり、とにかく入り口を開けるためのギミックを探す。
「ダメだわ、見つからない」
「ハリエット見て!」
「ネビル、見つけたの!?」
急いでネビルの元へと向かう。
壊れた洗面台、そこは一度私が調べた場所だった。
ネビルはそんな場所の蛇口を指さす、蛇だ。
彼の指さす先は蛇だったのだ。
「これは『ヒント』だ。そして、この洗面台を叩いてみたら音が変なんだ。『ナニカ』がここにある、あるという『確信』を僕は感じているッ!」
「蛇語が関係しているのかしら」
蛇語で開けゴマと唱えてみる。
すると、ゴゴゴと凄い音を立てて洗面台が動き出した。
すごい、本当にあった。
洗面台が移動すると、そこには奈落の底に見えるような穴が広がっていた。
「ルーモス」
私は杖から光を灯し、そのまま軽く振って穴の底に落とす。
約十秒、だいたい100メートルくらいだろうか。
普通に足とか折れるんじゃないだろうか。
「よし、行くわよマートル」
「えっ?」
「えっ?」
私の言葉に、ネビルとマートルが口を開けて惚ける。
何を惚けているのやら、偵察は大事なことだ。
私がバジリスクなら入り口で出待ちする、そしてリスキルするに決まっている。
「はよ、はよはよ!」
「わ、分かったわよ」
宙を駆けるようにマートルは穴に吸い込まれ、そして暫くしてから何も居ないということが確認出来た。
私達が勇気を出して踏み出すと、意外と滑り台のようになっていて垂直に落ちるという感じでは無かった。
「よし、行こう」
「えぇ」
「あっ、待って!これは……」
ネビルの驚愕する先、そこには蛇の抜け殻があった。
脱皮したということか、大凡で20メートルくらいはある。
胴体は人が二人分くらいか、意外と想像より小っちゃい。
大人くらいの大きさって、もっとトラックくらいとか想像していたのに……でも、普通の蛇サイズから成長したとしたら妥当な大きさなのかな?
「ハリエット、また扉だ」
「任せて、『開けゴマ』」
だいたい扉はオープンセサミ、それで開くと相場は決まっている。
実際に扉は開き、蛇の彫像が這い回るように動いて解錠された。
「因みに何て言ったんだい?」
「開けゴマ」
「開けだけで良いんじゃないかな?」
「……そうかも」
まぁ、気を取り直してロンの妹ちゃん救出である。
確かに蛇語を知らなければ開けられないけど、継承者やらも間抜けである。
自分しか蛇語が喋れないとでも思ったのだろうか。
「いた!目を覚ますんだ、ジニー」
「その子は目を――」
ネビルが石像の前で横たわる女の子、ジニーに近づいた。
そんな彼に物陰から出てきた青年が言葉を掛ける。
私は得体の知れない青年に杖を向け呪文を唱える。
「ラカーナム・インフラマーレイ!」
「ッ!?アグアメンティ!」
「グレイシアス!」
「ノラードイグリタス!」
先手必勝とばかりに杖先から炎を発射する。
しかし、それに咄嗟に反応して水を出してきた。
私はその水を逆手に取って氷河に変えたが、しかしその氷河を魔法で割ることで回避された。
「馬鹿なっ……」
「それは此方の台詞だ。まさか、二年生がここまでの魔法を使えるなんて」
「貴方、もしかしてトムリドル?」
私の魔法に対して、ハーマイオニー顔負けの対応。
きっと日記帳を作り出したトムリドルとは、この男に違いない。
「どうして、君が居るんだ!だって、君は50年前の人物だ。もしかして、ゴーストか!」
「記憶だよ、もっとも実体化するまで後少しだがね」
「継承者はジニー、でも操っていたのは貴方ね?」
「やはり、君は恐ろしい。君こそが、最も僕の『脅威』になる存在だったのだね」
ネビルが立ち上がり、トムに向けて杖を構える。
私も同じようにトムに向けて杖を向けながら構えた。
「どうしてこんなことを!僕は、君をすごいと思ってたのに!」
「静かにしてくれ、君みたいな劣等生は眼中にないんだ」
「まさか、ハリエットに!彼女には指一本触れさせない!」
「面倒な、バジリスク!」
彼が呼んだ瞬間、ネビルの背後の石像、その口部分が動き出した。
いけない、恐らくそこからバジリスクが出てくる。
『バジリスク、聞こえますか?私は継承者です』
「無駄だ、バジリスクは僕の言うことしか聞かない」
「何ですって?」
「アレは言うことを聞かないのでね。服従の呪文を使わせて貰った」
私はその言葉に違和感を覚える。
言うことを聞かない、という部分にだ。
バジリスクは継承者の言うことを、正確には秘密の部屋を開いた者の言うことを聞くはずなのである。
なのに、服従の呪文を使って従わせないといけないと言うことはバジリスクは継承者として認めていないということか。
「もしかして、貴方って純血じゃないの?」
「そこまで辿り着くとは、やはり君は脅威だ。僕のように孤独で、僕のような出生、僕のように偉大な才能を秘めている。僕達は似ている、だが似ているからこそ同じ場所まで上り詰められるという恐怖がある。そう、かつてヴォルデモートが抱いたようにだ」
「ヴォルデモート?」
「あの劣等生から話を聞いてずっと、僕は君に興味を持っていた。赤ん坊だった君が偉大な闇の魔法使い、ヴォルデモートを倒したことをね」
そう言いながらトムリドルは杖を振って自分の名前を書き始めた。
一体何が始まるのか、身構えていると文字が独りでに動き出す。
そして、そこには私はヴォルデモート卿であるという文章が出来上がっていた。
「そう彼は未来の僕であり、そして僕は過去の彼なのさ」
「ハリエット、どうしよう!バジリスクが来ちゃう!」
「任せて!フィニート・インカンターテム!」
「ハッ、しまった!?」
トムリドルが文字に気を取られている間に、私は呪文を石像に向かって放った。
石像の口上部からは蛇の頭部が見えていて、バジリスクがもう少しで出てくるということが分かる。
だが、目が合っていないのでまだ大丈夫だった。
「おのれ『僕に従え、バジリスク!』」
「『私こそ継承者よ、言うことを聞いて!』」
お互いにバジリスクに向かって話し掛ける。
どちらも秘密の部屋を開けた存在、故に資格は有している。
『黙れ!穢れた血共め!皆殺しにしてくれるわ!』
「説得失敗した!ネビル逃げて!」
「もう逃げてるよ!」
「クソ、忌々しい!なら、もう一度」
「貴方の相手は私よ!」
私達、トムリドル、バジリスクの三つ巴の戦いが今始まろうとしていた。
ネビル「しゅごい、蛇語喋ってる」
ネビル「秘密の部屋、意外、そこは女子トイレ!」
マートル「穴の中でスタンバってました」
トム「トムの勝ちデ―ス」
ハリエット「それはどうかな、開幕ブッパ!」
トム「不意打ちとは、流石スリザリン汚い!」
ネビル「ドボジデ、ウゾダドンドコドーン!」
トム「憧れは理解から最も遠い感情だよ」
ハリエット「貴方、半純血ですねぇ?」
トム「そこに気付くとは天才か」
トム「ドヤァ、かっこええやろ?」
バジリスク「うるせぇ!皆殺しだ!」
※ツッコミどころ満載が見れるのは後書きだけ!本編とは関係ないです。
変更点
ギルデロイ、いらない子。
ロン、杖は折れてないし現場にいない。
ジニーの杖、トムの物デース!
魔法解除発動、バジリスクのコントロールは元に戻る。