ハリエット・ポッター物語   作:nyasu

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マンドレイク

私の胸にあるのは深い失望と煮え滾るような怒りだけだ。

ベンチに深く腰掛け、道行く人々を眺めながらムスッとした顔で自分について考える。

穢れた血、その言葉はどこまで行っても私に纏わり付いてくる。

例え否定しようとも、事実は覆せずそこには侮蔑が存在する。

 

救えない馬鹿共だ。

血に知性は宿らない、血に力は宿らない、生まれ持っての全てがその後の人生を決めるのではない。

未だ血に拘る懐古主義者共に失望を禁じ得ない。

血が優れていれば努力する必要はない?生まれた時から勝ち組だとでも言うのか。

 

救われない程に周囲は愚かだ。

救えない程に私は愚かだ。

そんな奴らに見下される自分に怒りを覚える。

同時に、自分の惨めさに涙が滲む。

信じるべきではなかったのだ。

純血主義者共に期待するだけ無駄だったのだ。

 

「違う、違うわね」

 

認められないのならば認めさせれば良いのだ。

有無を言わせず、彼我の差を圧倒的に、侮ることを愚かだと断じるまでに、誰よりも優れていれば良いのだ。

さて、そのためには私は学ばなければならない。

 

「すみません」

「先生の方はすぐに迎えに来てくれるらしい。さぁ、ポッターさんココアでもサービスしましょう」

 

その日、考えに考えを巡らせて最終的に私は漏れ鍋にいた。

漏れ鍋の店主経由で、ホグワーツに連絡して貰うことを頼んだのだ。

しかも、泊まれることや内緒だけど魔法を使っても大丈夫だとのことで迎えが来るまで魔術の研鑽に努めることも出来た。

まぁ、やったことと言えば蛇をたくさん呼び出して愚痴を聞いて貰ってただけだけど。

 

一日遅れで、私の元にセブルスがやってきた。

その濡れたような癖毛に、高い鼻に彫りの深い顔、そこには心配するような感情と久し振りに会った事に対する喜びが見え隠れしていた。

 

「あぁ、これは久し振りだ」

「会いたかったわセブルス」

「君が来ないと聞いたとき、吾輩がどれほど心配したか。さぁ、ホグワーツに向かうとしよう」

 

セブルスと今度こそ壁に向かって進むと、ちゃんと9と4分の3番線に入ることが出来た。

その汽車の中に二人で入り、一緒にホグワーツに向かう。

 

「何を読んでいるのかね」

 

コンパートメントの中で向かいに座っていたセブルスが何の気なしに話し掛けてくる。

それに向かって私は、表紙をよく見えるように軽く持ち上げるとまるで苦虫を潰したような顔をした。

 

「君もその男が好きなのかね」

「まさか、でも小説としてはまるで見てきたかのようで面白いのよ」

「一応、ノンフィクションではあるが・・・・・・アレが本当にそれをなしたか疑わしい物だ」

「そんなにダメな先生なんだ」

 

他愛もない話をしながら、セブルスとの時間は過ぎていくのだった。

ホグワーツにつき、荷物を寮に運び込んで授業に備える。

その日、ドラコとの会話はなかったせいかいつもよりも長く感じた。

 

「おはようございます。2年生の皆さんこの教室は初めてですね。今日はマンドレイクの植え替えをやります。 誰かマンドレイクの根の特徴のわかる人?」

 

学校に来て最初の授業は、スプラウト先生の授業だった。

グリフィンドールとスリザリンが向かい合うように寮ごとに分かれて授業を受けている。

そして、先生の質問に手を挙げたのは私とハーマイオニーだけだった。

 

「それではグレンジャーさん貴方はマンドレイクの効果を、ポッターさんは植え替えの注意事項をお願いします」

「マンドレイクは姿形を変えられたり、呪いをかけられた人を元に戻す薬として使われます」

「植え替えの時、泣き声は聞いた人の命取りになります。取るときは犬を使うと書いてありました」

 

後は泣く瞬間に切ってしまえば大丈夫とも書いてあった。

アレは、マンドレイクの調理法という本だっただろうか。

スプラウト先生はお互いにチャンスを与えるというハッフルパフらしい気遣いで答えた私達に5点ずつくれた。

それにしても、こんなことも分からないのかと今まで気付かなかった事実に気付く。

純血という傲りがここまで人を堕落させているのかと不満が溜まる。

純血なのだから、家で教育を受けているはずなのにそれが身に付いていないのだ。

 

「無様・・・・・・」

「このマンドレイクはまだ苗なので泣き声を聞いても死にはしませんが、数時間は気絶するでしょう。ですから、安全のために耳当てを配ります。では耳当てをつけて・・・・・・まず、苗をしっかりと掴んで力いっぱい引き抜く」

 

次の瞬間、私の独り言は先生の抜いたマンドレイクによって掻き消される。

消し去った声は、黒板を掻き毟ったような音であった。

 

「寒くないようにパラパラと土をかけ、植え替えます。じゃあ、マンドレイクを掴んで、ハイッ!引き抜く」

「先生、ネビルが気絶しました!」

「あらあら、おかしいですね耳当てしてるのに」

 

まぁ、ネビルが倒れるという事件もあったが無事に授業は終わった。

朝食の時間、そそくさと食べ終えた私は席を立つ。

別に食事は栄養補給であって会話を楽しむ物ではないのだ。

擦れ違う際に、ドラコと目が合った気がしたがあっちが謝るまで話し掛けてやるつもりはなかった。

 

朝食と昼休みを利用して、必要の部屋で新しい呪文でも習得したり開発しようと移動しようとしたところで年下の男の子に呼び止められた。

 

「あ、あの・・・・・・」

「どうしたの?道に迷ったのかしら?」

 

視線を合わせるように軽く屈んでみせる。

そこまで身長差はないけど、何やら緊張している様子なので友好的な態度を示そうと思ってだ。

 

「ぼ、僕コリンクリービーって言います。そのマグル出身で、それでこれはカメラで、あと」

「ゆっくりで良いわよ。それで、カメラがどうしたのかしら?」

「写真を・・・・・・」

 

そう言って押し黙る彼の姿に、写真と小首を傾げる。

被写体はもしかしなくても私だろうか?

 

「偉大な貴方の事をパパとママに見せたいんです。出来れば、サインも」

「私はまだ偉大ではないわ、でもそうありたいとは思う。でもいいの、私スリザリンよ?見たところ、グリフィンドールでしょ?」

「僕にとっては、そんなの関係ありません」

 

まだ入りたての子だからこそ、スリザリンは悪という思想が根付いていないのか。

それともマグル出身だから、そういう考えなのか。

私が感じたのは若いって良いなってことだった。

仕方ないなと、満更でもなかったので写真を撮らせてあげようと思ったら、嫌な奴が来る。

 

「サインですって!?ポッター、貴方、サイン入り写真を配っているの?」

「口を閉じなさいパンジー。呪いでニキビだらけになりたくなければね」

「何ですって、何の権利があって――」

 

私は無言で杖を向けた。

そして、睨み付けて警告する。

規則では廊下での呪文は使わないように言われているが、だからどうしたというのだ。

言葉で分からないなら実力行使に出るまでだ。

 

「子供騙しの呪い程度なら作るのも身に付けるのも容易いぞ」

「廊下では使用禁止よ、それに生徒同士の――」

「レリンクレアクネ!」

 

杖から閃光が飛んでしまった。

そう、偶々呪文の練習をしていたら杖から魔法が出てしまって、しかもその方向にパンジーがいたのだ。

 

「きゃぁぁぁ!?」

「ごめんなさい、でも故意じゃないの許してくれるよね」

「あ、貴方!もう許さない!」

「許さない?ならどうするのかしら、純血の癖に私より劣っている貴方が私に勝てるとでも?」

 

お互いに睨み合っていると、騒ぎを聞きつけて生徒達の何人かが席から立ち上がる。

まったく、こんなことしている場合じゃないのに・・・・・・。

 

「失礼」

「デンソージオ!」

「プロテゴ!リクタスセンプラ!」

 

私が踵を返したタイミングで彼女は魔法を放ち、それを予期していた私は振り返りながらプロテゴを張る。

透明なバリアーのような物にぶつかって呪いの光が弾け、そして弾いた私が笑い続ける呪いを避けようと逃げるパンジーの方向に向かって放ち当てた。

逃げようとしても目で追うのは意外と得意だ。少なくともスニッチよりも簡単だ。

 

「プ、アハハ、プロテ、フフフ、習うのは、ウヒヒヒ」

「パンジー淑女が口を大きく上げて笑うなんて、はしたなくってよ。それじゃあ、今度こそ失礼」

「お、ウケケケ、覚えて、フヒヒヒ」

 

 

 

 

 




セブルス「会いたかった!いえすっ!」
セブルス「本より吾輩と話して・・・・・・」
ハーマイオニー「綺麗な顔してるでしょ、これ死んでるんだぜ」
ロン「気絶してるだけだよ」
コリン「年上の女の子って怖い(゜Д゜:)」
パンジー「笑うとニキビから飛び散る、死にたい」

※本編と後書きは関係ない。だから、ハッチャけてたり裏でコントがある事実はないよ。

変更点
車、見られなかった。
ロンの杖が折れなかった。
吠えメールが来なかった。
蛇と話せる自覚が友達が蛇しかいないのである。
新しい呪文、ニキビ出ろが使われる。なお、ラテン語、オリジナルの呪文。

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