医務室で目を覚ました私を出迎えたのはマダムポンフリーと友人であるハーマイオニーとネビルだった。
どういう状況と聞けば、ロンとドラコが追い出されて私達だけでお見舞いよ、男の子って本当に馬鹿よねとハーマイオニーから返ってくる。
その横でおずおずと僕も男なんだけどとネビルが言っていたが小さすぎて聞き取れなかったのかハーマイオニーは気付いてなかった。
「目が覚めたようじゃな」
奥から響いた厳かな威厳に満ちた声、それに驚きハーマイオニーとネビルが私から離れる。
やってきた人物は、声からでも分かるようにダンブルドア校長先生だ。
ダンブルドアはお菓子の入った靴下を手にしてやってきた。
その出で立ちは憧れのサンタさんに見えたりもする。
「先生、それは……」
「うむ、君の崇拝者からじゃ」
「崇拝者?」
「君達の地下でのやりとりは秘密じゃ、秘密と言うことはみんなが知っているということじゃ」
そう言ってダンブルドアが席に座ると、マダムポンフリーが行きましょうと言ってハーマイオニー達を連れて行った。
二人きりにされた私達は無言でお互いを見る。
何か、話があるのだろうか?それとも私から何か話し出すのを待っているのかしら?
痺れを切らして先に口を開いたのはダンブルドアだった。
「さて、ハリーよ。今晩の事で何か聞きたいことはあるかね?」
「先生、クィレルはどうなりましたか」
「あぁ、それは、真に残念な結果じゃが……」
「やはり、死んでしまったんですね」
その確信を得たことで、私は人を殺したんだと自己嫌悪に苛まれる。
ヴォルデモートをどうにかするためとはいえ、犠牲にしてしまったからだ。
「仕方のない事じゃ。ユニコーンの血を飲んだものは、生きながらに屍となる。延命は出来てもボロボロの身体になってしまう。君のせいではないのじゃ」
「そう、ですか……」
「では、儂からも一つ。どうして、君はクィレルとあの場所にいたのか聞いても良いかね?」
えっ、と私が聞き返す一瞬のことだ。
ダンブルドアの瞳が酷く濁ったような冷たい物のように感じた。
だが、もう一度よく見れば無機質な瞳のままで見間違いのように思える。
ただ、その目は何も考えの分からない不気味な物だった。
「それが、先生の思惑だと思ったんです。私が動く事を先生は望んでいると……違うわ、たぶん調子に乗っていたんだわ」
「調子に?」
「自分が特別だと思って、それでみんなを救わなきゃって一人で動いた……んだと思います。えっと、だから、もっと人を頼るべきだったかなと……すみません」
「君は優秀じゃ。そう思うのは無理もないことじゃろう。儂もかつて自分の才能を活かしたいと思っていた頃があった。そして、その考えは間違っては居ない。ハリー、どうして君が助かったと思う?」
私はその質問に、少し考えて分かりませんと言った。
私に何らかの魔法があることは予想が出来ているが、それが何なのかまでは分かっていなかったからだ。
「お母さんのおかげじゃ、命と引き換えに君を守った。それが君に印を残した。目に見えない印じゃ。君の肌にそれが残っておる」
「目に見えないのに肌に残ってる?いったい、どんな印を?」
「愛じゃよ、ハリー。愛じゃ」
そう言ってダンブルドアは目を大きく開いて自分の額をトントンと軽く叩いた。
それは私の稲妻のような傷を示唆する場所だった。
私のコンプレックス、そこはヴォルデモートとの絆でもあり、そして……。
「そっか、お母さんの」
「君はヴォルデモートを退けた。だが、奴は再び君の前に現れることじゃろう。だから、儂は君を信じたいと思っている」
「信じる?」
「少なくとも、君は愛を知っているからの」
なんだか、今までコンプレックスだったその傷は、単純なことに誇らしい物にいつの間にか変っていた。
ダンブルドアは、百味ビーンズを食べて嗚咽を出しながら去って行く。
何を食べたのか分からないが、酷い味だったのは確かだった。
すっかり元気になった私はドラコとクラッブ&ゴイルと共に大広間に移動していた。
元気?そっちこそ、なんてやりとりをしながら、スリザリン記念すべき七年目の優勝を楽しみにしていたのだ。
私だけじゃなく、それはみんなも同じだった。スリザリンは先輩達の期待に応えるために新入生だろうと、努力して手に入れたのだ。そこに傲りや慢心はない、例え他寮に忌み嫌われようと結果さえ手に入ればという事だけを考え謂われのない言葉の暴力にも我慢した結果だ。
「ホグワーツ初めての快挙だ。クィディッチも優勝したし、二位のグリフィンドールとも90点差だ」
「そうね、500点越えだなんて流石スリザリンね!」
楽しい会話をしながら大広間の席に着く。
緑色の垂れ幕が設置されており、他の寮は悔しくて雰囲気は沈みがちだ。
それでも、これは戦いであって努力の結果なので仕方ない。
少なくとも他の寮は減点されないように気を使ったり得点されるように努力したりと言ったことは寮全体で取り組んでいたという印象はなかった。
むしろ、彼らの嫌味な言動や行動が、我がスリザリンを一丸にさせたと言ってもおかしくない。
最後に見返すという反骨精神の結果だ、ざまぁみろって奴である。
さぁ、いよいよ発表とのことでセブルスもどこか誇らしげであった。
他の先生達は大人なのに露骨に悔しそうにしていたが、結果が全てである。
最終的に勝てば良かろうなのだ。
特にマクゴナガル先生がセブルスの事を睨んでいたので、ハッフルパフのスプラウト先生を見習って欲しい。
そして、ダンブルドアが発表を始めた。
「それでは第4位……ハッフルパフ、352点!第3位レイブンクロー、得点は426点!第2位はグリフィンドール462点!そして第1位は552点でスリザリン!」
スリザリン生が立ち上がり盛大な拍手を打ち鳴らす。
セブルスも気恥ずかしげに軽く手を叩いて御満悦だ。
やった、私達の優勝だ。そう、思っていた。
「よし、よし、スリザリン、よくやった。しかしつい最近の出来事も勘定に入れなくてはなるまいて」
「えっ?」
それは誰の声だっただろうか、思わず全員が拍手をやめて呆然とした。
最近の出来事と聞いて、スリザリンが思い浮かべるのは第三次ダフネ襲撃事件だ。
ヤバっと私の顔に冷や汗が垂れる。
「校内での喧嘩は校則違反じゃ、なのでスリザリンは5点減点」
何だよ、ふざけんなよ、と笑いながら文句が飛び交う。
まぁ、多少の点数変動で90点の差は埋められないのだから当然である。
だが、追加の点数計算はそれだけではなかった。
「まず、ハリエット・ポッター!友と自らの名誉の為、その才能と頭脳を活かし見事結果を手繰り寄せたことを称えたい。スリザリンに60点!」
スリザリンから祝福の拍手が鳴り響いた。
セブルスなんか思わず席から立ち上がって固まっている。
ダフネやパンジーですら嫌そうではあるが拍手するくらいだ。
「だが、スリザリンだけではない。まず最初にハーマイオニー・グレンジャー。冷静に頭を使って見事仲間を危機から救った。50点!」
その言葉にグリフィンドールから拍手喝采が飛び交う。
なんと、スリザリン607点に対して512点と差を縮めたからだ。
だが、聡明なスリザリンは目敏く言葉の端を捉える。
まず最初に、それじゃあ……。
「次、ロナルド・ウィーズリー君。この何年間かホグワーツで見る事の出来なかったような最高のチェスを見せてくれた事を称え、グリフィンドールに50点を与える!」
スリザリン生から笑顔が消えた。
あるのは、更に加点し45点差になってしまったという事実。
「最後じゃ、敵に挑むこと大変勇気がいることじゃが、友を信じて命を賭ける事もまた勇気のいる事じゃ。その勇気を称えよう。ネビル・ロングボトム、50点!」
スリザリン生が膝から崩れるように席に座る、と同時に跳ね上がるようにグリフィンドールが喜びの声を上げた。
最後の50点、その結果スリザリンは5点差を付けられて負けたのだ。
「僕のせいだ」
「ドラコ?」
「皆すまない、僕が5点減点させてしまったから負けた。もしそれがなかったら、負けはしなかったが同点になったはずだ」
俯く私の横で、あのプライドの高いドラコが頭を下げていた。
違う、そうじゃない、原因は私なのに……。
皆、不平不満は漏らさないが視線は口よりも雄弁であった。
私だと、批判の対象にされかねないから?
ドラコの優しさに胸が締め付けられる、それと同時に私はダンブルドアを睨み付けた。
「許さない……」
「何か言ったかい?ハリエット」
「……来年こそ勝ちたいって、そう言ったのよ」
「そう、だな……」
初めてのホグワーツは私に黒い物を抱かせて終わりを告げるのであった。
ダンブルドア「コイツ、本当に大丈夫か?」
ダンブルドア「どうやら大丈夫そうじゃな」
セブルス「今年は優勝、やったぜ」
ダンブルドア「いつから優勝できると錯覚していた?」
セブルス「なん……だと……」
ハーマイオニー「やったぁ!」
ロン「やったぁ!あれ?」
ネビル「やったぁ!あっ……」
ハリエット「許さない、絶対に絶対にだ」
御辞儀「呼んだ?」
ドラコ「ここでドラコ選手ハリエットの身代わり、これは高得点間違いなしだ!よしっ!」
セブルス「グリフィンドールの優勝?」
マクゴナガル「何を言ってるのセブルス、みんなダンブルドアのおかげじゃない」
セブルス「みんな、何を言ってるんだ!」
ダンブルドア「終わりよければすべてよしじゃな」
※本編と後書きは世界線が違うから、関係ないです。
変更点
スニッチ?何だぁそれはぁ……。
大幅減点、原因のドラゴン?知らない子ですねぇ……。
寮での喧嘩で減点、悔しいでしょうねぇ……。
ダンブルドアのヘイトが貯まった。