ハリエット・ポッター物語   作:nyasu

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闇の魔術

私はその日の夜、クィレルと共にホグワーツ八階に来ていた。

こんな高い場所に何の用なのかと思えば、廊下を三回ほど往復する。

 

「何をして、これは……」

「さぁ、来なさい」

 

クィレルが促し、私は思い出したかのように従い部屋に入る。

私は開け放たれた扉の中から見た様子に驚いていたため、呼びかけられるまで動けなかったからだ。

 

「こんな部屋がホグワーツにあったなんて」

『ここは俺様しか知らない部屋だ』

 

底冷えする掠れた声がクィレルからした。

その声は、夢の中で聞いた男の声だ。

 

「い、今のは」

「ご、ご主人様……」

『早くしろ、クィレル!』

 

怒鳴られ、クィレルが鬱陶しいターバンを外していく。

すると、なんと先生はハゲだったのだ。

いや、現実逃避するのはやめよう。

なんと後頭部に人の顔が浮かび上がっていたのだ。

クィレルは後ろに振り返ると、その顔と目があった。

 

『俺様が誰だか分かるか?そう、ヴォルデモート卿である』

「あ、貴方が……」

 

夢の中で私が見ていた光景は、クィレルを通しての物だと思っていた。

だから、クィレルの中にいると思っていたのだが、まさか後ろにいたとは知らなかった。

 

『光栄に思え、この俺様が直接教えてやるのだ。俺様に教わることが出来たのはベラトリックス・レストレンジくらいの物だ』

「この部屋は貴方様が作られたのでしょうか?」

『まぁいい今は気分が良いので答えてやろう。これはホグワーツに掛けられた魔法により出来ている。偉大なる俺様が見つけた。あのダンブルドアでさえ知らない、必要の部屋だ』

「必要の部屋?」

 

私の質問に、望む物を出す部屋だと奴は言った。

確かに、そう言われて部屋の中を見渡す。

全体的に薄暗く、本棚には多くの本が置かれている。

材料棚と思わしき場所には瓶詰めにされた生物の死骸、何かの液体、骨などが保管されていた。

部屋には大きな鍋が一つ、フラスコやビーカーなど実験も出来そうである。

 

『ここは自由に使うが良い。ただし、誰にも言うのでないぞ!』

「畏まりました」

『さて、まずは闇の魔術について心構えを教えてやる。賢者の石を手に入れられる程度には使い物になって貰わねばならないからな』

 

奴はクィレルに指示を出すと、古本を取ってこさせた。

革張りの古本、タイトルもなく中身は誰かの手記のようだった。

 

『クィレルが動けないときはそれを読め。さて、まずは闇の魔術がそう呼ばれる由縁を教えよう』

「なんだか楽しそうですね」

『……下らないことを今度言ったら磔の呪文を掛けてやるぞ!』

 

掛けるのはクィレルだと思うけど、言ったら怒られると思ったのでやめておいた。

奴は意気揚々と語り始める。

闇の魔術の、そう呼ばれる由縁についてだ。

 

『そもそも魔法とはなんだ?何故、呪文がなければ使えない?最初から無言呪文でも良いではないか』

「分かりません」

『我々は呪文がなくとも幼いときには魔法を使っている。そう、感情の起伏だ。魂の動きだと言ってもいい』

 

そう言われて、昔の事を思い出す。

ホグワーツに来る前、嫌な事があるとまともじゃないことが起きていたことをだ。

 

『呪文とは魔法力の矛先を定める道標、補助である』

「道標?」

『熟練の魔法使いは無言呪文を扱える。これは道標がなくても道を進めるような物だ。何度も通れば覚えるように、呪文を使い続けることで無言呪文が使えるようになる』

 

それこそが呪文の成り立ちに対する考察であると、奴は言った。

そして、ここからが闇の魔術の由縁とも言った。

 

『闇の魔術、それは人を害するために作られた。攻撃的で、負の感情を糧にする。誰もが簡単に許されざる呪文が使えないのが、その証明である』

「負の感情ですか……」

『言葉には意思が込められ、そこには感情の動きが封じ込められている。闇の魔術を使う上で貴様の心得ることは感情を込めることだ。殺意、憎悪、怒り、軽蔑、嫌悪、ありとあらゆる負の感情を込めながら杖を触れ』

 

その言葉を聞いて、納得することが出来た。

何故なら、闇の魔術を扱う者は多くの者が死喰い人などのテロリストになるからだ。

闇の魔術を扱うのにそんな負の感情が強い者ほど得意になるというのなら、犯罪を犯す素質があるということだからテロリストになる訳である。

 

『インセンディオと悪霊の火では同じ炎を扱うのに、扱いが変わってくる。前者は物を燃やす事を目的に作られ後者は物も焼き尽くす為に作られた。違いは分かるか?』

「悪霊って事ですから、負の感情が込められているのでしょうか?」

『及第点だ。そもそも、インセンディオは人に向けて発動することが出来ない。物だけを燃やすように、いわばセーフティーが掛かっているからだ。もし貴様が新しい呪文を生み出す気なら、インセンディオを元に人を燃やすことを目的として考えるなら、より強い炎を生み出せるだろう』

 

試しにやって見ろと言われて、私はクィレルに向かって魔法を放つ指示を出される。

杖を構え、教えられた呪文を何度も唱える。

そして、漸くと言った形で魔法が使えたが、普通に燃えた。

 

「あれ?」

「熱ッ!熱い!」

『愚か者、俺様はクィレルを燃やせと言ったのだ!服を燃やす事を考えたな!』

 

クィレルがちょっと焦げた服を見てから、恨みがましい目で私を見る。

悪いのはヴォルデモートよ、私は悪くないと言えたらどんなに良かった物か。

 

『まぁいい、見ろ。それほどの効果はない、せいぜい火傷するくらいだ。ディフィンドで人が切断されないような物だ』

「ディフィンドですか?」

『愚かな、切り裂く呪文だ。まぁ、擦り傷程度だがな』

 

ディフィンド、擦り傷が出来る程度の呪文。

何度も唱えたところで、致命傷になるほどではない。

だから、もし人を致命傷になるまで切り裂きたければ新しい呪文を作るしかないとのことだった。

 

『指導して分かったが、貴様は圧倒的に知識が足りない。まぁ闇の魔術は性質上、秘されることが多いため致しからぬことではあるが、いくら寛大な俺様でも苛つかされる。これからはクィレルに基本を習え、何かあればその都度口出ししてやろう』

「あ、ありがとうございます」

『賢者の石が手に入るまで待つことだ』

 

そして、その日に行われた訓練は終わる事となった。

必要の部屋から出る際、私は透明マントを使ってスリザリンの寮に戻る。

しかし、階段を降りる途中で廊下から声がした。

 

「クィレル!こんな時間に何をしている!隠れても無駄だ!」

「セ、セブルス!?ぁ、ぃ……いや、私は……」

 

その声は、セブルスの物だった。

セブルスは恐ろしい形相で杖を構えながら近づくと、逃げようとするクィレルを遮るように壁に手を押しつける。

左手は壁に、右手には杖が握られており、その杖先を喉元に向けていた。

 

「私を敵にまわしたくはないだろう?彼女はどこだ、貴様が何かしたのだろ!」

「は……話がさっぱり……」

「惚けても無駄だ、もし彼女に何かあったら恐ろしい目に遭わせてやる。アズカバンが天国に思えるくらいにな」

 

しばらくクィレルをセブルスは睨み付け、そして本当に知らないようだなと呟いてからどこかに移動する。

きっと、私を探していたんだと思った。

生徒が一人、自分の寮から抜け出したから心配になったのだろう。

セブルスは他の寮から嫌われてるが生徒思いの良い先生だからだ。

もしくは、減点させないため?

 

「くそぉ、なんで私ばかり……」

「…………」

 

その時、私の気持ちを言えば、何も言えねぇだった。

何というか運が悪いじゃないかな。

いるのかいないのか、透明マントで分かっていないクィレルから離れて、今度こそスリザリンに帰ったのだった。

 

 

 




御辞儀「俺様凄いだろ」
クィレル「ハゲがバレた!」
ハリエット「ずっと後ろ向いてるなぁ……」
クィレル「それにしてもこのごすじん、ノリノリである」
クィレル「熱ッ!この野郎、いつかお前ら燃やす」
セブルス「ふぇぇ、寮にいないよぉ……」
ハリエット「壁ドン!?壁ドンなのか、これが壁ドゥーン!」
クィレル「セブルス、まさか私のこと……」
セブルス「お前、本当に知らへんの?」

※本編と後書きの因果関係は存在しない。つまり、関係ないです。

変更点
必要の部屋が早くも知られる。
原作より闇の魔術に詳しくなる。
ダンブルドアの疑いがマッハ。
クィレルの友好度が下がった。
御辞儀様の友好度が上がった。
御辞儀様の評価が普通から弟子に上がった。
セブルスがクィレルのこちら側を選ぶ選択肢を放棄した。
セブルスがクィレルを完全排除しなくてはと心に誓った。

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