ハリエット・ポッター物語   作:nyasu

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ユニコーンの血

そこは深い森の中、目の前には血を流す白銀の馬がいた。

既に生気はなく、しかし至って不自然な所はない。

その姿は健康そのものに見えるが、しかし命の鼓動は終わりを告げていた。

 

『さぁ、血を啜るのだ。早くしろ、クィレル!』

「あぁ、ご主人様。わか、分かりました」

 

杖先が見える。

それが輝きを放つと、白銀の馬に傷口が生まれ血が流れる。

それを、私は吸っていた。

 

違う、これは私ではない。

これは夢?でもクィレル先生を呼ぶ声を、私はどこかで聞いている。

 

『ハァハァ、これで延命は出来るだろう。賢者の石を手に入れるまでの辛抱だ』

「生きながらの死が、ユニコーンの血をストックしなくては……」

「誰だ!貴様、ユニコーンを!」

『いかん、排除するのだ!早くしろ!』

 

視界が揺れる、目に映るのは弓を持った人の姿だった。

いや、人じゃない足が四つの身体、半人半馬の偉丈夫。

アレは、ケンタウロスだ。そうに違いない。

 

「アバダ――」

「貴様!」

 

それは許されざる呪文に違いなかった。

 

 

 

思わず、私は叫んだ。

 

「ダメ、やめて!」

「ッ!?」

 

暗い部屋の中、悲しそうな顔をしたセブルスが目の前にいた。

ここは、セブルスの部屋だろうか。

見たこともない場所、少し薬品臭い場所だった。

えっと、そうだダンブルドア校長先生と話して……

寝てしまった、というよりは眠らされたと思われる。

 

「どうしたリリー、あぁ……」

 

ふと、気付けば私はいつの間にか抱きしめられていた。

それが気恥ずかしいのと、ちょっと痛かったのも相まって肩を何度か叩く。

 

「セブルス、離して。私は大丈夫だから、ねっ?」

「ハ、ハリエット……違う、これは……」

「ちょっと状況が分からないから説明して、お願い」

 

ゆっくりとセブルスが拘束を解いて、私から離れていく。

今までの行いが恥ずかしかったのか顔が少し赤いが、取り繕うように咳払いをして私の頬に手を添える。

 

「君がいけないのだ。急に苦しみ出すから、吾輩は心配して」

「私、苦しんでいたの?」

 

言われてみて薄らと汗が出ていることに気付き、嫌な所を見られたと泣きそうになる。

よりによってセブルスに見られるなんて、死にたくなった。

そんな私の憧れの人は私の顔を見るなり慌てて薬を用意する。

それも、大量にだ。

 

「どこか痛いところがあるのか?どこだ、頭か、それとも腹か?」

「だ、大丈夫だから。貴方らしくないわよ、その、慌てすぎ」

「しかし……いや、だが……本当に大丈夫なのか?」

 

心配してくれるセブルスの顔は、どこか迷子の子供のようで不安なのだと嫌でも分かってしまう。

それに、私のことをリリーって言ってた。

いつもお母さんと私を重ねて見ていることを知っている私は、彼の不安が手に取るように分かった。

だから、私はセブルスの頭を抱きしめるようにして言葉を紡ぐ。

 

「大丈夫、私は大丈夫だから……私はいなくなったりしないから」

「ッ!?やめろ!」

「あっ、ご、ごめんなさいセブルス」

 

突き放すようにセブルスが離れ、そして言いにくそうに淑女が容易く抱きついてはいかんと文句を垂れる。

先に抱きついたのはセブルスの方なのに、子供みたいな反応にクスクスと笑いが漏れてしまった。

 

「大丈夫よセブルス、ちょっと夢見が悪かっただけなの」

「夢見が……まさか、いやあり得る」

「セブルス?」

 

セブルスは恐ろしい物を見るようにして、私の両肩を掴みどんな夢を見たのだと質問してきた。

私はそれに、ユニコーンの血を啜る何かの夢だったことを告げる。

 

「ハリエット、君はユニコーンの血がどういうものか知っているのか?」

「知らないわ、私には分からないの」

 

その質問に、私は分からなかったので頭を横に振る。

セブルスは、やはりとか校長に報告せねばと頭を悩ませているようであった。

その様子に、何か悪いことをしてしまったのかと思い萎縮する。

 

「起きてそうそう悪いが、ハリエット。吾輩と一緒に校長室に」

「ど、どうして校長室に」

「君が見た夢を報告しなければいけないのだ」

 

そう言って、私はセブルスに手を握られて校長室に向かうことになった。

先導するセブルスに、待ってと言いながら何とか着いていく。

いったい、何を焦っているのかと聞かずにはいられない尋常じゃない様子に不安が掻き立てられた。

校長室には、カエルチョコレートの一言で入り口が出てくるというふざけた仕掛けが施されていた。

その仕掛けを処理して、階段を進むといつか見たハグリッドとダンブルドア校長が話していた。

 

「どうしたのじゃ、セブルス」

「校長、事件です。恐らく禁じられた森でユニコーンが殺されました」

「どうしてお前さんがそれを知っちょる。今、ダンブルドア校長に報告しとった所だ」

「まさか!そうなのか、セブルス!」

「えぇ、そのまさかかと」

 

驚いた顔で、ダンブルドア校長が私の顔を見る。

そして、痛ましいような拙い事が起きたような顔で頭を押さえる。

やっぱり、アレは良くないことだったのか。それに、ハグリッドが言ってることが正しいなら……

 

「アレは、現実なの……」

「ハリエット……」

「嘘、じゃあアレは、誰の」

「ハリエット、落ち着くのじゃ。儂の目を見よ、よいな」

 

落ち着け、落ち着けですってそんなの無理に決まってるじゃない。

だって、アレは間違いなく。

 

「アバダケダブラよ!アイツはケンタウロスを殺そうとしていたわ!」

「落ち着け、落ち着くのじゃ!」

「ハリエット、大丈夫だ。吾輩が守る、だから深呼吸をするのだ。ほら、どうだ?」

 

セブルスが私を抱きしめて、背中から軽く何度か優しく叩いてくる。

ゆっくりと深呼吸することで、気持ちが落ち着いてくるのが分かる。

私にはおかしいくらい取り乱していた。

でも、両親を奪った魔法をこの目に見たのだから正気ではいられない。

 

「ハリエット、よく聞くのじゃ。よいか、お主が見た物、それは紛れもない現実じゃ」

「先生、アレは何なんですか?」

「恐らく、繋がったのじゃ。その傷が、それを作った者との絆になっておるのじゃ」

「絆、まさか……」

「ヴォルデモートじゃ、お主が見たのはホグワーツに忍び込んだ奴の者じゃ」

 

どうして、ヴォルデモートがホグワーツにと思わずにはいられない。

それよりも何よりも、私がヴォルデモートの見ている物を知っていることが恐ろしかった。

 

「お主は今、とても危険なのじゃ。ホグワーツの古き魔法は、その守りで呪いの類いを防いでおる。じゃが、心が弛緩した時、奴はお主と繋がるのじゃ。深淵を覗くとき、深淵もまた覗くように」

「私が見ているとき、彼方からも見えている」

「そうじゃ、早急に対処しなくてはいけない。閉心術をセブルスから習うのじゃ」

 

ダンブルドア校長がそう言って、私を頼むとセブルスに頼む。

だが、それよりも大事なことがあるはずだった。

だから、私は声を大きくして言った。

 

「先生、そんな場合じゃないです。ヴォルデモートは、賢者の石を狙ってる!」

「どうしてハリー、お前さんがそれを知っちょる」

「夢で見たの!奴は、そうか三階よ。彼処に行こうとしている」

「ハリエット、心配はいらんのじゃ。だから、今日はセブルスと寮に帰りなさい」

「でも、奴をどうにかしないと誰かに被害が出てからじゃ」

「大丈夫じゃ、セブルス」

 

さぁ行こうとセブルスが腕を引く。

どうして、凄い魔法使いなんでしょ、どうして動かないの。

ダンブルドア校長が動かないなら、ヴォルデモートが野放しになってしまうと言うのにだ。

 

「大丈夫だ。校長にも考えがある」

「そう、そうよね。そうであるべきだわ」

 

本当にそうなのだろうか、私にはそうは思えない。

任せて平気だろうか、でも、もしもの時を考えたら……

 

「さぁ、寮まで送ろう」

「ありがとう、セブルス」

「チョコレートだ、心が落ち着く」

 

私が、奴を倒さないといけない。

クィレルを止めなくてはいけないのだ。




御辞儀「貴様、見ているな!」
クィレル「ユニコーンをリリースし、ライフポイントを回復するッ!」
ケンタウロス「おい、デュエルしろよ!」
クィレル「魔法カード、相手は死ぬ」
セブルス「やっべ、リリーと間違えた」
セブルス「やめろ、私はロリコンじゃない!」
セブルス「野郎、覗きやがって!ぶっ殺!」
ハグリッド「ゆにこーん……」
ダンブルドア「ダメだコイツ、早くどうにかしなきゃ……」
ハリエット「野郎ブッコロッシャァー!」

※という夢を見たのだ。本編とは関係ないです。

変更点
御辞儀さんとシンクロする。
クィレル脅されて、計画を早める。
セブルスとの秘密の補習(閉心術)フラグが立つ。
罰則で禁じられた森に行くことがなくなる。
ダンブルドア、闇落ち濃厚に怯える。
ハリエットのダンブルドアの評価が下がった。
ハグリッド、凹むも慰められない。

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