【艦これ】私立相談役と元ブラック鎮守府   作:泉井 暁人

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第23話 狂宴と救出

 

 「トラック泊地!!?」

 救出作戦で一番大事な部分、皆が囚われている場所を言うと長門さん達が驚く。

 「待って下さい!!あそこは一番ホワイトな鎮守府だって言われている場所で」

 「それさえ上層部の情報操作だよ。あそこが一番ブラックで同時に全鎮守府から連れてこられた艦娘がいる場所でもあるよ」

 霧島さんの言葉に即反論する自分。自分だって信じたくはなかった。でも、それさえ否定させて貰えない証拠が沢山あるから、行くしかない。

 「救出作戦で六人、海自のイージス艦を護衛して欲しい。志願者は?」

 言った途端に全員が名乗り上げる。けれど、自分は「ほとんどの人はだめだ。引き篭っていた上に精神的なストレスも抱えているのに出撃は禁止。これが終わったら定期的なカウセリングと実践に向けての演習とかのスケジュールを組むから」とバッサリと切り捨てた。

 「そんなぁ~…」

 悲しむ一同に自分は「戻って来たら甘い物でも作るからそれで手を打たない?」と提案する。すると夕雲さんに「提督、料理出来るの?」とハッキリと言われた。

 「出来る。ひとり暮らしが長かったから殆どの料理は出来るよ」

 「怪しいけど、解った。今回は手を打ちましょう」

 自分だけ納得出来ない言い方をされて対応に困ったが、気を取り直して「今回は加賀さん、初春さん、高雄さん、みらい、夕張さん、瑞鶴さんで」と言った。

 「わ、私達で……」

 「あぁ、大丈夫だよ。ただイージス艦を護衛してくれれば。後はこっちで処理するから」

 それに…、あんなものを見せられないしね……。

 「じゃ、残る人達はこの食堂の掃除をお願いします。皆が帰って来た時に安静にする場所を確保したいので」

 そう言いながら掃除道具を置いてお願いする。すると皆は道具を持っていくと掃除を始めてくれたので良かった。

 「じゃ、護衛お願いしますね?」

 『はい!!』

 護衛メンバーと共に鎮守府の波止場に向かう。

 

 「お待ちしておりました!!明斗海将補!!」

 「別にもう海自じゃないから敬礼はしなくても良いんですよ?」

 「いえ、上官に対する敬意と尊敬を込めての敬礼ですので!」

 そう言われてしまうと何も言えないので頭を掻く。

 長門さん達は呆然としたまま「明斗……。少将だったのか?」と聞く。

 「元ね?それに自分は陸自だけど、臨機応変に様々な場所に赴くから『特別将補』と言う本来は存在しない階級を手に入れたんだけどね?」

 長門さんにそう言うと自分は改めて、

 「これより、トラック泊地に乗り込む!!途中で深海棲艦や脅迫されて攻撃してくる艦娘も想定されるだろう、それらを突破して作戦を遂行する!!君達の実力を期待するよ」

 『はい!!提督(司令)!!』

 敬礼した皆の姿、前に見た覚えがあると思ったら母さんの時だと想い、少しだけ嬉しく想った。

 「出航だ!」

 自分はイージス艦に乗り込み、皆は艤装を展開、海の上に立つ。

 そして、トラック泊地に向けて出航する。

 

 「きゃあああああああああ!!!」

 「痛いよぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 阿鼻叫喚の状況の中でその人は平然と拳銃の引き金を絞る。艦娘じゃなくて、提督達に……。

 「自分は君達の救助に来た!!外には自衛隊が待機している!!他に囚われている艦娘が居るならば誰か案内して欲しい!!」

 その人は大声で言うと他の皆は一気に入口に走り出す。それを聞いた提督達は「出鱈目を!!」と叫び、他の艦娘に向けて発砲しようとする。でもその前にあの人が提督達を射殺する。

 「君、案内できる?」

 いつの間にか横に立っていたその人に聞かれた私は、「は、はい……」と答えた。

 「じゃ、案内を頼む。他の子は自衛隊に任せれば大丈夫だから」

 その人に言われた私は地下牢に案内する。地下に降りる途中で確かに海上自衛隊と名乗る声が聞こえた。

 下に降りるにつれて嫌な臭いが充満する。慣れていたと思っていた匂いに改めて吐き気に襲われる。

 「つらいなら、先に戻っても大丈夫だよ。自分ひとりで行くから」

 「い、いえ。大丈夫です」

 心配してくれるこの人に私は何処かで出会った様な気がして尋ねた。

 「あ、あの……。前に何処かで」

 途中で言葉が途切れた。最初は何が起きたのか解らなかったけど、男性の呻き声と何かが吹き出す音が聞こえたのと同時に顔に血が飛び散った。

 彼の足元を見ると首から血を流す男性が倒れていた。男性の手には血まみれのナイフが握られていた。

 多分、襲われそうになった私を庇って男性を殺したのだと私は理解した。

 「すまない、これを使って」

 この人はポケットからハンカチを私に渡してくれた。私は素直に受け取ると顔を拭く。

 この人の顔にはベットリと血が付いているのに気にもせずにいる。

 「さぁ、行こう。時間が惜しい」

 「え……。あ、はい」

 歩き出した彼の後を追いかけて地下牢に案内する。

 牢には衰弱している娘も居れば、死んでいる娘もいる。

 それでも彼は牢の鍵穴をナイフで壊していく。

 「さぁ、逃げ給え。君達の枷は何一つない。外に逃げ出し、外の空気を吸うのだ」

 彼が言った瞬間、牢屋の扉が勢いよく開かれると一人の艦娘が手に硝子の破片を手に握りなから彼に体当りした。

 「死になさいよ!!」

 「悪いけど、それは出来ないよ横浜鎮守府所属川内さん?」

 彼が川内の名前を出して私は驚いた。川内の雰囲気が何一つ残っていなかったのもあるけど、彼女は彼に憎悪を抱いている。すると、彼は高らかに、牢屋にいる艦娘に言った。

 「自分は横浜鎮守府提督に着任した材原明斗少将!!君達の救助に来た!!君達をここに連れてきた提督や関係者は一生塀の向こうに住む!!君達は自由になった!!」

 それは、とても信じられない事実だった。

 だって、目の前にいる人が新しい提督だなんて……。

 「う、嘘でしょ……?」

 「嘘じゃないですよ。自分が新しい提督です。川内さん?」

 川内にそう言った提督は私に近づくと着ていた外套を私に着せた。

 「皆が帰りを待ってますよ。戦艦大和さん?」

 その言葉に、私は涙を流した。

 


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