Fate/VR   作:ヴィヴィオ

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第9話

 

 

 自宅に戻っていた俺は、背負っていたリュックサックを降ろして時間を確認する。そして、直ぐにバイトに出向いた。バイトが終わり、自宅に戻ってベッドに入る。次のログインは三日後で、それまでは入れない。なので、休ませてもらう。疲れていたのか、直ぐに眠りにつけた。

 

 

 

 

 気が付けばいつの間にか深い深い森の中に居た。周りを見渡せば四人の人影。そいつらの姿には見覚えがあった。それはあちらの世界で襲い掛かって来た四人のプレイヤーだった。しかし、その姿は爛れた顔のゾンビのような姿だ。

 

「よくも、殺してくれたなぁ~~~」

「お前も殺してやる~~」

「くっ、来るなっ!」

 

 急いで逃げる。しかし、何処まで行っても襲い掛かってくる。

 

「はぁっ、はぁっ……」

 

 体感で何十分も森の中を走っていると呼吸が荒くなり、木にもたれかかって息を整える。そんな事をしていると、地面から骨の手が出てきて、足を掴んできた。

 

「やっ、やめろっ!」

 

 もたれかかっていた木からゴーストの腕が生えてきて、俺の身体を拘束していく。森の奥からはゾンビやスケルトンがどんどんやってくる。

 

「よくも、よくも殺したなっ」

「お前も死ねぇっ」

「お前達が襲い掛かってきたんだろうがっ! くそっ、離せっ、離せっ! ジャックっ! どこだジャックっ!」

「そいつなら、あそこだ」

 

 指さした先では木に括り付けられて、バラバラに解体されたジャックの身体があった。

 

「嘘だろっ! ジャックをよくもっ! ジャンヌちゃんはっ!?」

「トナカイさんっ、助けっ!」

「っ!?」

 

 声がした方を向くと、そこにはシャドウサーヴァントに取り込まれてていくジャンヌちゃんが居た。そして、その直後にシャドウサーヴァントが影から実態を得て大人のジャンヌちゃんへと変化した。

 

「さぁ、亡者共。生きとし生ける者共に地獄を見せてあげなさい。憎悪をプレゼントしてあげるのよ!」

 

 亡者に身体が埋め尽くされ、生きながらに喰われ地獄の業火に燃やされていく。これで終わりなのか? そんなのは嫌だっ!

 

 

 

 

 

「っ!?」

 

 身体が跳ね起き、慌てて周りを見ると床に倒れていた。どうやら、悪夢に魘されてベッドから床に落ちたようだ。

 

「最悪の夢だな……」

 

 目覚めて、改めて冷静に考えると夢だと分かる。確かにあいつらを殺した。その事が心の負担になっていたのかも知れない。だけど、あそこで殺さなければ俺が殺されていた。それだけじゃなく、ジャックやジャンヌちゃんまで悲惨な目にあわされていただろう。なら、あれが正解だろう。そう、納得させる。

 

「っと」

 

 改めて回りを見ると、いつの間にかクラスカードが床に散らばっていた。ジャック・ザ・リッパーとジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィのカード、アーチャーのカードに加えて、武蔵坊弁慶のカードとエウリュアレのカード。そして、呪腕のハサン、カサエルのカード。それに何故かある黒髭のカードだった。他の四枚のカードはあいつらから奪った物だが……そういえばジャックが森で黒髭に出会って解体したと言っていたな。そのせいかも知れない。

 

「取り敢えず、汗を流すか」

 

 シャワーに入って、汗を流す。シャワーから出て改めて悪夢の事を考える。ジャック達と一緒に居た時は大丈夫だったが、もしかしてこちらじゃ寝れないのか? いや、まだわからない。最悪、薬を飲めばいいが……見なかった時との違いは何かあるか? まあ、まるわかりだ。ジャック達が居るか居ないかだな。

 取り敢えず、アプリを起動する。ログインは現在、できません。という表示とステータス画面があったので、そちらを見る。直ぐに画面が出てきた。項目は強化と売却、変換だった。取り敢えず、強化を選ぶ。

 どうやら、最初と同じでポイントで強化するようだ。売却はクラスカードを売る事によって、ポイントを得られるようだ。変換はポイントを現実の金に変換してくれるようだ。変換レートは1ポイント10万円という破格の値段。むしろ、英霊の力を得られるカードを売って作るんだから、安いのかも知れない。

 取り敢えず、エウリュアレを残してそれ以外はポイントに変換しよう。エウリュアレは売らないのかって? 女神様を売るなんてとんでもない!

 という訳で、ポイントに変換する。黒髭とハサン、武蔵坊弁慶が2、カエサルが3だ。なので、合計9点となる。売れば90万。一気に投資した金額が稼げる。しかし、生死が掛かっているのだから、先ずは自己強化に充てた方がいい。最低でも二人をちゃんと運用するために魔力は2000以上は欲しいしな。9点を全て魔力に突っ込む。変更したステータスを確認する。

 

 

 マスター:桜坂幸田

   筋力:1

   耐久:60

   敏捷:1

   魔力:109(1600)

   幸運:1

   SP:0

  スキル:召喚魔術(C2/2)

 クラスカード:アーチャー2枚(星5、星3)

 

  クラス:アサシン(限定召喚1000/1500)

   真名:ジャック・ザ・リッパー

   筋力:E

   耐久:E

   敏捷:C

   魔力:E

   幸運:E

   宝具:暗黒霧都(ザ・ミスト)

  スキル:気配遮断(C+)、情報抹消(D)

 

  クラス:ランサー(限定召喚600/1000)

   真名:ジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィ

   筋力:D

   耐久:E

   敏捷:E

   魔力:D

   幸運:E

   宝具:使用不可

  スキル:自己改造(EX)、かりちゅま(E) 、対魔力(EX)

 

 

 

 これでいいだろう。ステータスを確認し終わると、チャイムが鳴った。

 

「はい」

 

 インターホンに出ると、雨音が聞こえてきた。どうやら外は雨のようで、暗い。画面にはびしょ濡れの大きな荷物を持った女の子の姿があった。

 

「なんで、ここに……」

『入れて』

「わかった」

 

 ここはワンルームマンションなので、玄関の前にびしょ濡れの美少女が居たら通報されるかも知れない。急いで玄関の鍵を開けると、そこにはかなでが居た。

 

「取り敢えず、入ってくれ」

「んっ」

「先にシャワーを浴びてくれ」

「助かる」

 

 シャワールームへと案内して、入って貰う。その間に床を拭いて、着替えを用意する。流石に荷物を漁るのは不味い。取り敢えず、趣味と実益を兼ねてワイシャツを用意しておく。

 

「タオルと着替えを置いておくからな」

「ありがとう」

 

 かなでが出てきた後を考えて、お湯を沸かせてレトルトのコーンポタージュを用意する。粉の奴だ。

 少し時間が経つと、シャワールームの扉が開いてかなでが裸Yシャツで髪の毛を拭きながら出て来た。

 

「シャワー、ありがとう」

「気にするな。それより、傘はどうした?」

 

 取り敢えず、床に敷いてある絨毯の上にクッションを置いて座って貰う。

 

「自分自身のは持ってない。孤児院のは戻らないから、使えない」

「待ってくれ。戻らないとは……?」

「? ここに住むから」

 

 小首を傾げながら、そんなとんでもない事を平然と無表情で告げてきたかなで。

 

「住むって……」

「私はご主人様の奴隷で妻になったから、ここで住むのは当然だよ?」

「いや、それはだな……」

「それに護衛だから、近くにもいないと駄目。だから、はい」

 

 キャリーバックからかなでが取り出した紙を渡してきた。それは婚姻届けと書かれている。それにはしっかりとかなでの名前と印鑑もあった。未成年であるかなでの所には孤児院での保護者であろう人の同意に関する事まであった。

 

「これは……」

「婚姻届。後はここに名前と印鑑を押すだけ」

「いや、わかっているが……本当にいいのか?」

「いい。これが無いと私は死ぬから構わない」

 

 かなでが自分の手を胸に入れると、そこからエクスカリバーが鞘ごと出現した。そして、直ぐに身体の中に仕舞った。

 

「不束者だけど、よろしくお願い……その、出来れば、幸せにしてほしい」

 

 頭を下げてくるかなで。完全に嫁入りのようだ。

 

「わかった。頑張るが……よく保護者の人が納得したな」

「それは、生き残れる事を告げてないから。だから、本気だと思われていないかも知れない」

「じゃあ、後で連絡しないとな」

「お願い」

「それと名前で呼んでくれ」

「ご主人様は嫌?」

「来るものはあるが、名前で頼む。社会的に死んでしまう」

「わかった。コウでいい?」

「ああ、それでいい。しかし、色々と買わないと駄目だな」

「ん。制服と着替え、スマホは有る。それ以外は無い」

 

 コンポタージュを飲みながら、必要な物を考える。まず、歯ブラシとかドライヤーとか、様々な物が居る。ここのワンルームマンションは高校の時から貯めた金と親や祖父母からの援助で購入した物で、ワンルームにしては結構広い。といっても、二人で住むぐらいが限界だ。

 

「ベッドも買わないとな」

「? 一緒に寝るから要らないけど」

「……それもそうか」

「でも、シーツとかは変えたい」

「臭うか?」

「ん。まずは掃除」

「わかった」

 

 女の子に任せた方がいいだろう。男の独り暮らしなのだから、散らかっている。適度に掃除はしているのだけどな。

 

「でも、その前にご飯……お腹空いた」

「そうか」

 

 時間を確認すると、既に夕方になっていた。どうやら、思ったよりも寝ていたようだ。

 

「じゃあ、食事がてらに買い物に行くか」

「ええ、それがいいわ」

「いっぱい食べるよな?」

「もちろん」

「じゃあ、食べ放題だな」

「そんな素晴らしいお店があるの?」

「ああ、そうだ。焼き肉かしゃぶしゃぶか串焼きかになるが、どれがいい?」

「お肉ならどれでもいいわ。どれも滅多に食べられなかったから、大歓迎よ」

「なら、焼き肉にするか」

 

 嬉しそうな雰囲気のかなでを着替えさせ、準備してから一緒に出かける。傘が一つしかないので、相合傘で近くのショッピングモールへと歩いていく。

 

 

 

 

 


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