Fate/VR   作:ヴィヴィオ

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2話目


第5話

 

 

 

 

 変身を解除してからオルタちゃんを撫でた後、少しして()()の人影が見えた。その中には先程の男性も居る。

 

「オルタちゃん」

「トナカイさん、お願いがあります」

 

 俺はオルタちゃんの口元に耳をやると、囁いてくる。その方法を聞いて、俺は納得したので、直ぐに実行する。

 

「おい、俺の獲物を奪いやがって、ただで済むと思ってねえだろうな?」

「あれは俺達の獲物だ。それに逃げたのだから、放棄したって事だろ」

 

 俺は前に出て、オルタちゃんを背後に隠す。オルタちゃんは、不満そうな顔をしている。

 

「ふざけんなっ!」

「落ち着け。どちらにしろ、渡さないなら奪うまでだ」

「それにそっちの女の子は俺達が貰ってやるから安心しろよ」

 

 相手は4人。これは普通のやり方じゃ勝てないだろう。それと――

 

「却下だ。この子は絶対に渡さん」

「おいおい、彼女としても俺達の方がいいだろう」

「嫌です。汚らわしいです、喋らないでください。空気が汚れます」

「てめぇっ!」

「それに私のトナカイさんはこのトナカイさんだけです。という訳でトナカイさん、行くわよ!」

 

 オルタちゃんが俺の手を引いて森の中へと入っていく。

 

「待てっ!」

「追うぞっ!」

「逃がすかよ!」

「待て、夜に森に入るのは……くそっ!」

 

 奴等を無視して、一緒にオルタちゃんと虫や鳥の音が響く、森の中を逃走する。走っていると、次第に暗い森に霧みたいな物が出だした。

 

「それで、どうするんだ?」

「わかりませんか?」

「まあ、わかるけどな。この()で」

「でしょうね」

 

 走っていると、木に止まっていた虫達が地面に倒れていく。そんな中をどんどん進んでいくと、スケルトンが現れる。しかし、スケルトンの骨は爛れており、オルタちゃんが槍を振るうと簡単に砕けて倒れた。

 

「待てっ!」

「逃げても無駄だ!」

「そうだぞ!」

 

 声が一つ減っている。オルタちゃんを見ると、にやにやと笑っていた。それだけで何が起こっているか、わかる。ラインからも何が起きているのかはわかる。

 

「待ちやがれ!」

「くそっ、鬱陶しい森だ!」

 

 また一人減った。そして、直ぐにまた一人。俺達はだるくなってきている身体を止めて、背後に振り返る。静まり返り、虫や鳥達の声が聞こえなくなった霧に包まれた森の中。そこには最初に出会った男性が居た。

 

「やっと諦めやがったか。おい、行くぞ……って、他の三人は?」

「気付かなかったようですね。お三方は既に解体されました」

「何を言ってやがる⁉」

 

 取り乱したのか、声を荒げる男性。その背後に滲み出るかのように、血に染まった短剣を持つ銀髪の幼い少女が現れる。

 

「熱っ⁉ 何が……痛っ、痛いぃいいいいぃぃぃぃっ⁉」

 

 幼い少女……ジャックによって素早く、手と足を斬られた男性。痛みに喚きながら倒れる。その傷口に霧が入り込み、腐食していく。そんな男性をジャックは仰向けにして馬乗りになった。

 

「うっ、嘘だろっ……じゃ、ジャック・ザ・リッパー……や、やめろっ、やめろっ!」

「止める事なんてないよ?」

「はぁっ、はぁっ……ほんとうか……?」

「うん♪ 解体するだけだもん♪」

「ひっ!? ぎゃぁあああああああああああぁぁぁぁぁっ⁉」

 

 ジャックが短剣で楽しそうに指を切断した。

 

「助けてくれっ、頼むっ!」

「くすくす、私を汚らわしい視線で視姦してくれた罪は重いのですよ」

「がっ⁉」

 

 オルタちゃんも蹴りを入れて、槍を突き刺してぐりぐりしていく。幼い娘達だからこそ、やっているのかも知れないが……いや、この子達は完全な悪側である、属性混沌・悪だからな。

 

「殺すな。聴きたい事がある」

「は~い、おかーさん!」

「仕方ないですね」

 

 俺は男に近付いて、質問する。

 

「名前と住所は?」

「だ、誰が教え――」

「そうか。ジャック」

「は~い。とりあえず、指からでいいよね? えっと、1,2,3,4……いっぱいあるし!」

 

 両手の指を使って数えていくジャック。

 

「もしかして、数えられないの?」

「ちっ、違うよ? そんな事ないんだからね? 本当だよ?」

「後でお勉強ね」

「うにゃっ⁉ おかーさん!?」

「勉強だな。流石に算数は覚えような」

「勉強嫌い!」

「だ~め。さて、いいから教えてくれよ。後、鍵の隠し場所とかもな」

「わっ、わかった! 喋るから命だけは助けてくれ!」

「ああいいぞ」

 

 それから、男の話を聞く。すると、どうやらさっきの四人はリアルの知り合いみたいで、ここで初心者狩りをしていたようだ。といっても、彼等も初めたばかりのようだが。話を聞きながら、身体検査をした結果。鍵であろう物も見つかったので、貰っておく。後口座の暗証番号とかも聞いておく。それが終れば、俺はクラスカードなどを回収して次の死体へと向かう。

 

「行くぞ」

「は~い。ばいばい、おにーさん」

「では、残りの人生をお楽しみください」

「た、助けてくれるじゃないのか!」

「命は助けた。後はどうなるかは知らん。だいたい、お前達は命乞いをした奴等を助けたのか?」

「も、もちろんだ!」

「そうか、優しかったんだな」

「そ、そうだ! だから……」

「だが、俺達には関係無い。精々、生き残れる事を願うんだな」

「待ってくれっ、待ってくれぇぇぇぇっ!」

 

 彼を無視して、森の死体の場所までジャックに案内して貰う。そこで必要な物を回収し、二人と一緒に森を抜けた。森の中から悲鳴が聞こえてきたが、知った事ではない。

 

「トナカイさん、良かったのですか?」

「何か駄目だった?」

「あいつらは俺を殺そうとした。これは正当防衛だ。それにな、殺していいのは殺される覚悟がある奴だけだって、偉い人もちょっと違うが、言っていたからな。自業自得だ」

 

 それにこっちでの殺人は罪に問われないしな。

 

「ああ、ジャック。情報抹消だけはしておいてくれよ」

「もうやってるよ~だから、後でいっぱい褒めてね」

「ああ、もちろんだ。むろん、オルタちゃんもな」

「ふん。まあ、嬉しくもないですが、どうしてもいうのなら、褒められてあげます」

「どうしてもだ。ありがとう」

「ふんです」

 

 可愛い嫁達と一緒に森を抜けた先で野営地を探していく。しかし、やっぱり800ずつ割り振るんじゃなくて、1000と600にしておいた方が良かったな。宝具が使えるというのはそれだけで大きい。今、ジャックには魔力を1100.オルタちゃんに500渡している。どうやら、500からスキルが使えて、1000から宝具が使えるようだ。そう、今回の作戦はオルタちゃんからの指示でジャックにある程度魔力を集める事だ。これによって、暗黒霧都(ザ・ミスト)によって視界を封じ、確実に暗殺する事が可能になった。弊害はこの森の動物達が死に絶えた事だろう。

 

 

 

 暗黒霧都(ザ・ミスト)

 

 ランク:C

 種別:結界宝具

 レンジ:1~10

 最大捕捉:50人

 ロンドンを襲った膨大な煤煙によって引き起こされた硫酸の霧による大災害を再現する結界宝具。

 魔術師ならばダメージを受け続け、一般人ならば数ターン以内に死亡する。英霊ならばダメージを受けないが、敏捷がワンランク低下する。

 

 

 


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