実家に帰るために新幹線乗って移動する。当然、俺の隣にはかなでがいる。白いワンピースにジャケット。それに帽子といった感じだ。それで俺達は現在、ホームにいる。片方の手には着替えなどが入ったキャリーケース。もう片方の手にはかなでの手がある。
「あれ、欲しいわ」
「はいはい」
「いらっしゃい。可愛らしい妹さんですね」
「違うわ。夫よ」
「え!?」
まあ、かなでと俺じゃあ、かなり年齢が離れている。親子とまではいかなくても、年の離れた兄妹くらいにはなる。
「で、どれを買うんだ?」
「全種類。二個ずつ」
「いや、いくらなんでも……」
「頼みます。お金はこれで」
「わかりました……」
おばちゃんが驚いているが、気にせずに支払いを終わらせる。このお金はBBから貰ったものを換金した奴なので問題ない。お金を支払って大量の駅弁を購入して新幹線に乗る。
「ここね」
「窓側に座るか?」
「いいわ。そっちに座って」
「わかった」
荷物を上の棚に入れて窓側に座る。
「よいしょ」
「おい」
かなでは隣のかなでの席に駅弁を置いて、俺の膝の上に座ってきた。
「だめ?」
「駄目じゃないが……」
「普段はあの子達がとってるから、今は私」
「そういうことなら仕方ないか」
かなでを膝に乗せていると、周りの視線が色々とやばい。しかし、そんなことを気にせずにかなでは駅弁を食べ出していく。本当に我が家のエンゲル係数はやばくなる。
新幹線が発進し、俺はかなでの身体を抱きしめて固定しながら、窓の外をみて過ごす。ときたま、かなでがあ~んをしてくるのでそれを食べるくらいだ。
「なんだか二人きりだと新婚旅行みたいね」
「あながち間違ってないんだよな」
「そうね」
食事が終れば他愛ない話をしながら進んでいく。携帯からアプリを確認すると、向こうの映像がでてくる。皆のステータスと、今何をしているかだ。
「楽しそうに遊んでいるわね」
「ああ、いいことだ」
「あっ」
「どうした?」
「宿題をしておかないと」
「そうか。教えてやろう」
「御願い」
宿題を格闘しながら終わらせるころには目的に到着していた。ここからバスで一時間、かなりの時間の移動となるので、途中でかなでが眠ってしまった。まあ、仕方ないので肩を貸して到着まで暇つぶしをしておく。
バスターミナルでかなでと一緒に降りる。ここからタクシーで移動になるかな。もう近くだし、問題ないだろう。
「ねえ、あれ買ってもいいかしら」
「宝くじか? 構わないが……」
「ありがとう」
かなでが宝くじ売り場へと走っていく。そこで何かを指定して書いていく。覗き見するとビックやロトだった。
「まさか……」
「勘よ。食費は稼がないと」
「気にしなくていいんだがな……」
まあ、かなりきついが頑張ればどうにかなる、と思う。立ち入り禁止店は増えていくだろうが。
「終った」
「それじゃあ、いこうか」
その後も大量に食材や出来合いを買ってタクシーで乗って実家の前で降りる。料金を支払ってから扉を開けて中に入る。
「お帰りなさい。って、なに染めてるのよ! それに縮んだ?」
「ただいま。なんでかわからないんだがな。髪の毛は染めたよ」
玄関に入ると両親が向かえてくれて質問攻めだ。まあ、髪の毛は仕方ないのだ。染めたことにしておく。
「そちらは……」
「この子はかなで」
「かなでです」
「その名前……もしかして、あなたが?」
「はい」
「ちょっとちょっとっ、どういうことよ! まさか、犯罪じゃないでしょうね!」
「違う。とりあえず、説明するから中に入れてくれ」
「そうね」
中に入って説明する。といっても、かなでが生き倒れていたところを拾って、飯を食べさせたことから始まり、天涯孤独で余命が残されていないかなでの世話をしたこと。彼女のお願いを叶えていくうちにもう一つ、結婚もしたいということで籍を入れた。その後も一緒に過ごしていて本当に結婚することにした。その後、色々としていたら運よくかなでの病が回復していっていることも伝えた。
「つまり、今は相思相愛と?」
「そう、です」
「ということで、犯罪とかじゃないから心配しなくていいから」
「まあ、そういうことなら。不束者な息子ですが、宜しくお願いしますね」
「こちらこそ、世話になりっぱなしで……」
「とりあえず、かなでを案内してくるから母さん達は……」
「お夕飯の用意をしましょう」
「たのむ。相当食べるから気を付けてくれ」
「あらあら」
量を伝えると驚かれたが、用意してくれることとなった。その後はかなでを部屋に案内して、近くの家の人にかなでを紹介していく。旧友にはロリコンとか、色々と言われたがなんの問題もない。
その後はかなでと散歩したり、観光して、両親と改めて挨拶をしてから一緒の部屋で寝る。やることは当然、やった。ただ、防音の魔術とかを色々とやってだ。
「ねえ、ここに住むのもいいかもしれないわね」
「確かにそうだな。田舎なら、人が増えても問題ないかもしれない」
ひょっとしたら、ジャック達は無理でもシータや美遊なら呼べるかもしれないしな。シータは受肉しているし、美遊はもともと身体がある。それに都会だと彼女達の容姿は目立つし、フェイトを知っている奴に見られたら大変だ。
「まあ、かなでが学校を卒業してから考えよう。認識阻害をすればどうとでもなるからな」
「魔術師らしい思考ね」
「まったくだ」
翌朝、食事をしていると両親から不思議な話を聞いた。なんでも、山の中にいつの間にか古い城が建っていたらしい。でも、誰もそこには辿り着けないのだとか。そもそも、見える時間が深夜からなので山の中で過ごそうという人は基本的にいない。見た人も狩人の人で迷って偶然にみただけらしい。妖怪の住む城とかも言われているらしく、子供が山に入らないようにも注意している。ましてや熊も結構いるみたいで危険のようだ。
「というわけで」
「探検ね」
俺達は当然のように山の中に入り、襲い掛かってくる熊を素手で貫き、心臓を抉って殺す。血で汚れた手を振るって軽く飛ばしてから手をみると……なぜか舐めたくなって舐めてみた。なんというか、微妙な感じだった。
「どうしたの?」
「なんでもない」
「そう」
かなでが掻き消えると、奥のほうで何かが倒れる音がする。そちらに向かうと熊の群れがかなでの持つ剣によって切伏せられている。
「異常ね」
「ん?」
「異常に繁殖しているわ」
「確かに……」
魔術で死体を調べてみると操られた痕跡がみつかった。それにかなでが剣を振るうと飛来した矢が斬られる。
「どうやら、ここは魔術師の工房か。現実世界でなにをやってんだよ」
「どうする?」
「城の全貌を確認する。親は守らないといけないからな」
「そうね。いい人だから、助けるわ。私の両親にもなってくれるし」
かなで服がセイバーのそれになる。手に持っているのは聖剣エクスカリバーとエクスカリバー・モルガン。二人で森の中を駆け抜ける。すると熊だけではなく、ゴーレムまで襲い掛かってきた。そして、城に近付けば近づくほど飛んでくる矢も無数に増える。
「これ、きついわ。二人じゃ無理ね。エクス、カリバー」
レーザーのような九本の矢をエクスカリバーの光線で消し飛ばす。
「撤退する。城は見えた」
「了解よ」
かなでが風を放ち、俺は影を操って囮を作り出して一斉に逃げる。どうやら、テリトリーからでたら追っては来ないようだ。一先ず安全が確保できただけよしとしよう。
いったい誰の攻撃なんだろうか