コウと別れて、ジャック達の服を美遊と一緒に選び、貰ったお金で購入した。暖かめな服に身を包んだ彼女達も嬉しそう。でも、どうせなら選んで欲しかった。
「あれ、居ませんよ?」
「多分、別の買い物。待ってよう」
「そうですね」
こういう指示を出すのは苦手。言う事を聞く方が性にあっている。でも、年長者として頑張らないと。
「ねぇねぇ、アレなに?」
「魚さんの絵がありますから、魚屋さんですか?」
「?」
「あれは……」
「鯛焼きね。買って来るわ」
無難に待つ時間を潰す為にも、丁度いいわ。屋台に並び、少しすると順番が来たので注文する。
「お兄さん、鯛焼きをそれぞれ10個ずつ、お願い」
「こしあん、つぶあん、クリーム、宇治金時を10個だね。えっと、間違いないかい?」
「ないわ。お金はこれでいい?」
「ああ、大丈夫だ。はい、おつり」
40個も入った大量の紙袋とおつりを受け取って、皆の所へと戻る。
「はい、鯛焼き。四種類、あるから一人一種類ずつよ」
「わ~い! あま~い!」
「あったかいです。魚なのに甘いです!」
「魚の形にしているだけだから、魚じゃないよジャンヌ」
「そうなんですね……」
「食べ物、ですか?」
「そうよ。このまま食べたらいいみたい」
美遊達を見ながら、真似して食べる。鯛焼きなんて、孤児院じゃ食べられない。甘味類は贅沢品だから。それにしても、口の中に広がるサクッとした感触に温かい甘み……とっても美味しいわ。これだけでも、結婚して良かったと思えるわ。甘味類を自由に好きなだけ食べられるのだから。
難点はエッチな事をしないといけない事ね。まだ、身体の中をかき回されるのは慣れないわ。それに我慢しているけれど、やっぱり痛いわ。コウも最初は優しいけれど、理性が無くなると激しくなるから、痛い。傷はアヴァロンで直に治るけれど、痛みは感じるの。コウも私も始めたばかりだから仕方ないらしい。そうネットに書いてあったわ。もっと回数をかさねないと。それに練習も必要ね。私より身体の小さなジャックや美遊、ジャンヌともするのなら特に。私とシータでしっかりと練習して貰わないと可哀想。
「いる?」
「大丈夫よ。ありがとう」
「わぷっ」
ジャックが私にクリームの鯛焼きを差し出してきたので、逆にこしあんの鯛焼きを口に入れてあげた。そろそろ数も無くなってきたので、別の食べ物を買おうとポシャットにある財布を取り出そうとすると、別の袋が指にあたった。そういえば、BBから渡された薬を入れていたんだった。夕食に混ぜるように言われたのよね。内容は知らないけれど、良い薬らしいから悪い物じゃないと思うわ。
「君達、可愛いね。どう、俺達とお茶しない?」
「一緒に狩りでもいいからさ。俺達、強いから」
最後の鯛焼きを頬ばりながら考えていると、声をかけられたの上を向く。そこには金色の髪の毛をした男の人や茶髪の人達が居た。
「?」
不思議そうに小首を傾げながら回りを見渡す。ここには私達以外に居ない。でも、私達は違うはず。ジャック達も不思議そうにしているから、間違いない。
「いや、君達だから」
「なあ、なんでも奢るからさ。俺達と……」
「奢ってくれるの? 良い人ね」
「ちっ、違いますよ」
美遊が私を服を掴んでそう言ってきた。
「違うの?」
「いや、良い人だよ」
「そうそう。だから、俺達と一緒にいかないか?」
「らしいわ。そうね。取り敢えず、あのドネルケバブっていうのをあるだけと、あっちのアイスクリームを全部欲しいわ」
「「「え?」」」
奢ってくれるらしい。とっても嬉しいわ。
「違うの?」
「そんな量を食べられ……いや、奢るから向こうに行こうぜ」
「そうそう、あっちの路地に……」
「駄目ですよかなでさんっ」
「? ここから動くのは駄目よ。人を待っているから」
「そうです。だから、お引き取りください。ナンパは必要ないです」
「ナンパなの?」
「そうですよ。だから、かなでさん達は絶対についていっちゃ駄目です」
「そう、美遊は詳しいわね」
どちらにしろ、ナンパなら駄目ね。残念だけど、諦めましょう。
「いいじゃねえか」
「そうだ、行こうぜ」
男達の一人が、私と美遊の腕を掴んで来る。少し痛い。
「駄目よ。私には夫が居るの」
「え? まじで?」
「? 結婚しているわ。だから、ナンパは成功しないの」
「まあ、関係ない。いいから来い」
「やっ、やめてくださいっ!」
美遊と私は無理矢理腕を引っ張られる。回りを見ると、
「ん、転身」
呟く直ぐに服が分解されて、光の中で直に青いワンピースドレスが現れ、次に鎧と剣を身に纏い、転身が終わる。
「えっと、何をしているんですか?」
「? これが変身物のお約束だってゆりが言ってたから」
「かっこいい!」
「凄いです!」
「えっへん」
美遊には好評じゃなかったけど、ジャックとジャンヌは喜んでくれた。だから、胸を張る。
「アルトリア・ペンドラゴンだとっ!?」
「なら、あの注文の量も頷けるっ!」
「全て食い尽くす気か!」
「どちらにしろ、鴨が葱を背負って来てるんだ。連れて行ーー」
魔力放出で吹き飛ばそうとすると、嫌な気配がして急いで魔力放出で吹き飛ばし、美遊を掴んでいる人の腕を斬って美遊を抱きながら下がる。
「かなでさん?」
「動かないで。皆、隠れて」
直ぐに私の後ろに皆が隠れてくれたので、
「……防がれ、た……?」
その人は、とても、とても大きな胸をしていた。信じられない事に紐で乳首を隠している変態さんだった。
「……お母様の命令は、護衛……これ、要らないよね……ごみ箱、ポイしなきゃ……」
「っ⁉」
私は大丈夫でも、回り込まれたらまずい。直感が直ぐに逃げるかアヴァロンに籠れと言っている。でも、どちらも出来ない。
「ちょっと待ったっ!」
悩んでいると、コウが戻って来た。それも私と女の人の間に入った。危ない。
「……なんですか……?」
「お前、パッションリップだろ」
「……そうですけど……」
「俺はBBの弟子で、この子達は俺の妻とサーヴァント。敵じゃない。どちらかというと護衛対象に近いはずだ。BBに確認してみてくれ」
「……お母様に? 面倒……です……」
「こっちで連絡して、入れるようにいうから、ちょっと待ってくれ」
「仕方ないですね」
コウがなにかすると、相手の人が両手を下げた。
「お母様が護衛を任せるとの事です。私とメルトは面倒なので、力だけ貸すから……好きにして」
「え? ちょっ!?」
言う事を言ったのか、女の人は胸の中からクラスカードを取り出して、それを高速で美遊に投げた。そのカードは美遊の中に吸い込まれていく。
「死なないか、残念……」
彼女も光ってクラスカードになってしまった。そのカードは一人でに動いて、美遊の中へと入っていく。
「コウ?」
「ああ、なんだ。美遊が力を手に入れたと思ったらいいだけだ」
「コウがそういうなら、わかったわ」
良く分からないけれど、別にいいわね。それよりも、この死体。どうするのかしら? でも、おかしいわね。沢山あった死体が殆ど消えているわ。何故?
メルトリリスだと思った? 残念、パッションリップでした。
理由は簡単です。BBが配慮しました。メルトリリスがメインで行くと超危険ですからね!