Fate/VR   作:ヴィヴィオ

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第19話

 

 

 

 BBによって転移させられると、衛宮邸に到着した。外は雪も降って来ているようだ。俺達が到着すると、待っていたのか、邸宅の扉が開かれて、着物姿の士郎と美遊が出て来た。美遊は紺色で花柄の晴れ着を着ている。髪の毛も結われていて項が出ている。

 

「せんぱ~い♪」

 

 BBが士郎に向かって嬉しそうに走って、だきつこうとする。しかし、その間に美遊が身体を滑り込ませてBBをブロックする。

 

「美遊、どいてくれないかしら?」

「お兄ちゃんに何の用ですか?」

「それはもちろん、先輩と一緒に初詣に行くんですよ。ですよね、先輩」

「そうだな」

 

 BBは美遊と睨み合いながら、後ろ手でこちらにサインを送ってくる。すると、ジャックとジャンヌちゃんが駆けだしていく。

 

「美遊~初詣、行こ~」

「行きましょう~」

「え? え? ちょっとっ、待ってっ!」

 

 ジャックとジャンヌちゃんの二人が、美遊の片手をそれぞれで握りつつ連れていく。

 

「わたしたちと、行くのは嫌なの?」

「その、私達は一緒がいいのですが……」

「でも……」

「こっちはいいから、行っておいで。俺達も後ろから一緒に行くから」

 

 士郎が美遊を後ろから押し出すと、二人と一緒に進みだした。BBは士郎と腕を組んで進んでいく。BBは満面の笑みだ。

 

「コウ」

「マスター」

 

 俺の方もかなでとシータが腕を絡めてくる。そのまま古びた寺院へと向けて移動していく。

 

「わたしたちはお祭りって初めてなんだ~」

「私は祝祭なら経験した事があります。えっへん!」

「おぉ~」

「えっと、元旦はお祭じゃありませんよ。もともとは年籠りといい、家長が祈願のために大晦日の夜から元日の朝にかけて氏神の社に籠る習慣で……」

「お祭じゃないの? 出店は?」

「ありません」

「わたあめは?」

「ありません」

「そんなぁ~」

「リンゴ飴……」

「甘酒はあります。あと、お守りと御神籤じとかもあるので……」

 

 美遊が落ち込んだ二人を一生懸命に励ましている。俺達保護者は先を歩いていく三人を見守りながら、進んでいく。

 

 

 

 寺院には既に何人もの住人やプレイヤーの人達が集まっている。そのプレイヤーの人達の目当ては丸わかりだ。それは可愛らしい巫女さんが居るからだろう。そう、巫女さんがメディアなのだ。当然、隣には神主の服を着た葛木宗一郎先生も居る。二人は幸せそうだ。この二人を引き裂く事は流石にプレイヤー達はやらないだろう、多分。おそらく、プレイヤー達の狙いはもう一人の女の子。娘なのかは知らないが、巫女服を着たメディア・リリィが居るのだ。

 

「わたしたち、甘酒が飲みたい~」

「甘酒……」

「私は破魔矢が気になります」

「絵巻に興味があります」

「先ずはお参りだ。それと逸れたら大変だ。もし、逸れたら入口にある鳥居に集合だぞ」

 

 飛び出していきそうな子達に注意する。シータもアーチャーなだけあって、破魔矢に興味があるようだ。メディア謹製の破魔矢……普通に使えそうだ。

 

「俺が並んでおくから、皆で楽しんでおいで」

「では、私は先輩と並んでいます。いいですよね、先輩?」

「ああ、そうだな。じゃあ、悪いが頼む」

「いや、こっちこそ悪い」

「気にするな」

「そうですよ。さっさと行ってきてください」

「わかった」

 

 幸せそうなBBにせかされて、俺は五人を連れていく。取り敢えず、近場からおみくじを引きに行く。御神籤の売り場は絵巻なども売っているのだから、丁度いいだろう。

 

「わくわく、わくわく」

「何が出るか楽しみですね」

 

 並んでいると、順番が来てメディア・リリィが売り子をしている。というか、何故かリリィがいっぱい居る。おそらく、式神だろう。

 

「何をお求めですか?」

「取り敢えず、御神籤を人数分頼む」

「わかりました。神のご加護がありますように……」

 

 そう言って、差し出されてくる御神籤の入った箱。一回1000円と高い値段だ。だけれど、人数分頼む事にした。

 

「わたしたちから引くね! えいっ!」

 

 ジャックが引いたのは吉だった。

 

「吉だ~。えっと、願いが叶うでしょう? じゃあ、おかーさんとえっふぐっ!?」

「何を言おうとしているんですか、この馬鹿娘さんは」

「ぶ~じゃあ、いっぱい解体できますよ~に?」

「というか、それはあちらですから、違います」

「そっか~。で、ジャンヌと美遊は何がでたの~?」

「私は……小吉です。うぅ……あんまり良くないです。美遊さんは?」

「わ、私は……その、だっ、だ……」

「「だ?」」

「……大凶……でした……」

 

 ずーんという感じで沈んでいる美遊。大凶……原因はわかる。BBだろう。それとも、これからの運命か? かなりやばいようだ。内容も物騒な内容だ。選択肢を間違えると絶望の淵に沈むとか、大切なものを失うとか。悪い事ばかりだ。

 

「大丈夫だ。どうにかなるだろう」

「はい……」

 

 美遊の頭を撫でて落ち着かせる。

 

「俺達が守ってあげるからな」

「そーだよ!」

「守ってみせます!」

「あっ、ありがとうございます……」

 

 俺も引いてみよう。俺も小吉だった。シータとかなでは中吉だった。その後、絵巻を士郎達の分も買って、甘酒を貰ってBB達と合流する。破魔矢は後回しだ。嵩張るからな。

 

「そう言えばプレゼントがあったな。開けてみるといい」

 

 ジャンヌちゃんの宝具で手に入れたプレゼントを配っていく。楽しそうに開ける子供達。入っている物は様々だったが、御神籤の良さに連動しているような感じだった。こんな事をしていると、俺達の順番がやってきた。

 

「先輩と結婚できますように……」

「皆が幸せでありますように……」

「お兄ちゃん達が健やかに過ごせますように……」

「おかーさん達とずっと仲良く過ごせますように……」

「皆さんに祝福がありますように……」

「マスターのお役にたてますように……」

「今年も無事に皆で生きられますように……」

「どうか、皆を幸せにできますように……」

 

 それぞれの願いを神様に祈っていく。何時までも、こんな風にしていられたらいいのだが……そうはいかないだろう。今も、大衆の中から俺達に、俺に向けられる憎悪の籠ったような嫉妬の視線がいっぱいあるからな。

 

「さて、これからどうする? 食事にでも行くか?」

「あ、俺はシータと破魔矢を買って来るんで、先に帰っててくれていいですよ」

「いえ、それなら皆で買い物をしてきてください。私と先輩で破魔矢を買ってきますから。街の案内は美遊にさせれば大丈夫でしょう」

「そうだな。それで、どれだけ買うんだ?」

「お、お兄ちゃん?」

「美遊なら街の事は詳しいしな。護衛も問題ないだろうから、行っておいで」

「はい……」

「で、どれだけ買うんだ?」

「破魔矢の効果次第だけど、不死者とかに特攻があるなら大量に欲しい」

「わかりました。買っておきましょう」

 

 BBがそう言った瞬間、脳内に念話が届いた。

 

『私は先輩とデートしてくるので、美遊の事を任せますよ。代わりにいっぱい買ってあげますから。返事は要りません。頷くだけで結構です。後、これを美遊に飲ませてください。大丈夫です、元気になる物ですから。むしろ、いい感じになりますよ』

 

 BBは直に俺のポケットに何かを入れてきた。取り敢えず、頷いて心配そうにしている美遊を連れて、ジャック達と共に町へと繰り出した。

 

「先輩、せっかくの二人っきりです。楽しみましょうね」

「そうだな……他の連中も……」

「先輩?」

「いや、なんでもない。それで、何処か行きたい所はあるのか?」

「はい、もちろんです♪」

 

 俺は一瞬振り返って、ソレを見た。BBと士郎の回りに隠れるように霊体化した存在により、二人に声をかけようとした奴等が密かに殴り飛ばされたり、蹴り飛ばされたりしているのを。その姿は巨乳にかぎ爪の腕を持った女性と、スレンダーで刺々しい靴を履いている少女だ。最強の布陣でデートを挑んでいやがる。一瞬、BBと目が合うと、目だけで邪魔をしたら殺すと言われた。俺は大人しく、皆と初売りの店へと出かけていく事にした。殺されたらかなわん。

 

 

 

 




士郎君の明日はどっちだ!

BB 
危険度:EX 
ステータス:不明。好きな物を作り出せる。先輩との逢瀬を邪魔する者には地獄の苦しみをプレゼントです。
メルトリリス
危険度:S 
ステータス:カンスト。基本的になんでも溶かして吸収する。でも、下がる男とワカメだけは勘弁ね。
パッションリップ
危険度:S 
ステータス:攻撃力限界突破。基本的になんでも壊せる。キュッとして、バンッ、ですか?


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