これからの事を決めたので、取り敢えず地図が無いか、宿の人に聞いてみよう。部屋から出てカウンターへと移動する。そこにはちゃんと店員が居る。
「すいません」
「なんだい?」
「この街の地図はありますか?」
「あるよ。ただし、売り物じゃないから映して貰うしかないけどね」
「わかりました。見せて貰っても?」
「いいよ」
地図を借りて、近くで皆と一緒に見ていく。地図には町の名前であるスノーウッドの名前が書かれている。右側に大きな川があり、北側には海がある。南側には草原で、南西には森がある。西には大きなクレーターが出来ている。街の中にも何ヶ所かにクレーターがある。田畑も結構多い。
「さて、何処から探すかな」
「森から?」
「なんでだ?」
「冬の森だから」
「え? なんで?」
「名前がスノーウッドだからだよね!」
「そうよ」
確かに町の名前はスノーウッドだが……冬の木。FATEじゃ、それはある街の事だ。冬木市。聖杯戦争が行われた場所であり、FATEシリーズ最初の舞台。こんな符号が合う場所が偶然のはずはない。
「これは左半分の場所か」
「どうしたの?」
「いや、探索は全員で行こう。目的地が決まった」
「は~い」
地図を返す為に店員に話しかける。
「ありがとうございました。ところで、このクレーターの場所ですが……」
「そこは近付かない方がいいよ。昔は寺だったみたいだけど、怖い怪物が出るらしいからね」
「ありがとうございます。気を付けます」
皆と一緒に行ってみる。向かう場所は聖杯が置かれていた場所だ。
崩壊した街の中を進む事、二時間。ようやく目的地の近くまでやって来た。三人は楽しそうに歩いている。
「エネミーが存在するみたいだから、気を付けるんだぞ」
「「は~い」」
「ええ。それよりも……」
「そうだな」
俺達を、正確にはジャックとジャンヌちゃんを見て驚いている。そして、じろじろとこっちを見て来るのだ。まあジャックは星5だし、ジャンヌちゃんは星4だから、レアなクラスカードを持っている事なんて丸わかりだから仕方ないだろう。それに近付いて来ないのは一重にジャックが居るからだろう。下手に近付いて解体されたら叶わないだろうしな。このゲームは本当に命が掛かっているのだから。だけど、何処にも馬鹿は要るようで、近付いてくる。
「なあ、どうやってサーヴァントを連れているんだよ。教えてくれよ」
ジャックは俺の後ろに隠れ、ジャンヌちゃんは俺の前にかなでと一緒に出る。
「Fateらしく召喚しただけだ」
「インクルードしか出来ないはずだろ?」
「サーヴァント召喚を行った。ただ、それだけだ。後は自分で調べるんだな。このゲームで情報公開はあり得ない。求められるのならば交換だ」
「だろうな。なぁ、金でジャックかサンタちゃんを譲ってくれないか?」
「捨てられるの?」
「うぅ……トナカイさん……」
「断る」
「そうだよな……わかった。ああ、クラスカードの話と同じだ。違うのはそこに会話できる化け物が居るってだけだ。これが変わりの情報だ。ありがとうよ」
男はそう言って帰っていった。二人は俺に抱き着いて、顔をぐりぐりと押し付けてくる。優しく二人の頭を撫でている。かなでも一緒になって撫でてくれている。
「サーヴァントの召喚が可能らしい。後は試行錯誤か、こっちもちゃんとした情報を寄越せってさ。スキルとクラスカードは機密情報だから、それ相応の代価を出さなきゃな」
「それに子供から親を取り上げるとか、ないわね」
「虐待されていたらまだしも、あの様子じゃあなぁ……ちっ、リア充め」
先程の男が野次馬に説明していく。それである程度、人が解散していく。男に目線で礼を言ってから、落ち着いた三人を連れて坂道を上がっていく。
結構長い道を歩いていくと、ジャックが肩車を要求してきたので、してあげる。開いた手はジャンヌちゃんと手を繋ぐ。ジャンヌちゃんの反対側の手はかなでと繋いでいる。まるで家族みたいな絵図等だ。
「ねぇねぇ、おっきな穴があるよ」
「あそこが目的地だ」
「降りるの?」
「そうだ。ジャンヌちゃんとかなでは大丈夫か?」
「平気よ」
「問題ありません」
「じゃあ、行くとしようか」
「でも、その……」
「どうした?」
ジャンヌちゃんが俺の服の裾を掴んで、こちらを見上げてくる。
「帰りは、私がそのジャックと……」
「わかった。帰りは肩車をしてあげよう」
「べ、別に肩車をしてほしい訳じゃ……」
「じゃあ、帰りもわたしたちだね」
「駄目です!」
「じゃあ、私?」
「うぅ、意地悪です……」
「帰りはジャンヌちゃんだな。ほら、行くぞ」
「は~い」
「ええ。帰りは一緒にね、ジャック」
「うん!」
「ほっ」
巨大なクレーターの中心部に移動すると、空間が入れ替わった。気が付けば洞窟の中に入っていた。これが男性が言っていたクラスカードの話という事だろう。クラスカード……エインズワースの工房に張られた結界と同じという事だな。
「洞窟?」
「そうだね~。でも、とっても嫌な感じだよ」
「ええ、ここは危険です」
ジャックが降りて、ジャンヌちゃんと一緒に警戒する。
「ここは危険みたいね」
「ああ、警戒を頼む」
「わかったわ。任せて」
かなでも鎧と聖剣を呼び出して、警戒に入る。そのまま奥へと進んでいくと、多角形の宙に浮かぶ物体があった。それを見た瞬間。視界にノイズが走って、何時の間にか全く別の所に居た。そこはスタジオのような場所だった。中心には紫色の髪の毛をした少女が立っている。
「今宵も新たなお客様が、このBBルームへとやって来ましたね。ここに聖杯が有ると思いましたか? 残念でした。ここの聖杯は既にBBちゃんが取り込んでいますよ。ですので、欲しければこのムーン・キャンサーたるBBちゃんを倒しましょう」
目の前に選択肢が現れる。内容はBBと戦うか、否かだ。当然、否を選ぶ。
「かなで、戦うんじゃないぞ」
「わかったわ」
かなでも否を選ぶ。彼女の正体はアルターエゴという複合英霊で、女神の力すら持っているのだ。たぶん、現状じゃ絶対に勝てない。なんせ、ラスボス級の力を持っているんだからな。
「賢い選択ですね。では、BBルームの説明を致しましょう。ここではスキルやクラスカードの買い物ができます」
スキルやクラスカードを買えるのはありがたいな。これからの強化の為には必須だ。
「ガチャ一回、10万円です♪ 1ポイントでも一回できますよ」
「高いわっ!」
「当然ですね。そんな簡単にクラスカードを手に入れられると思ったら間違いです。あの似非神父が安いのは最初だからです」
「稼ぐ手段は?」
「クエスト報酬ですね。私が発行するクエストを達成すれば、報酬として80ポイント差し上げます」
80ポイント。つまり、800万という事だな。
「内容は?」
「先輩の捕獲です♪」
「どこに居るの?」
「この街に居ますよ。衛宮邸ですね!」
「……」
「どうしますか?」
「他のクエストは?」
「そうですね~」
流石に簡単には受けられない。後が怖すぎる。
「パッションリップかメルトリリスに届け物ですね」
「はい、駄目」
「何故なの?」
「どちらも危険極まりない存在だからだ。序盤で会う奴じゃないよ」
「……もしかして、贈り物は私達、とか?」
「ちっ」
「舌打ちしたよ、このおば……」
「今なんて言おうとしましたか? このロリっ娘
「「ひぃっ!?」」
ジャックとジャンヌちゃんはあまりの恐怖に俺の後ろに隠れた。しかし、ジャックならばどうにかなる可能性があるな。取り敢えず、解体聖母を使える状態にして霧を出した夜ならば。逆に言えばそれ以外じゃ相手にすらならないだろう。
「今のはジャックが悪い」
「あうっ、ごめんなさい」
「お姉さんですよ。わかりましたね? 返事は?」
「はい、おねーさんっ!」
「でも、おねーさんも悪いような……」
「何か?」
「なんでもない、ですぅぅっ」
二人はすっかりと怖がってしまった。まあ、命が有っただけ儲けモノだろう。
「二人への届け物は俺達の安全が確実に保障されているなら頼まれよう」
「無理ですね。叩き潰されるか、貫かれるのがオチでしょう。今日はもう、何人も送ってあげてますからね」
やっぱりか。会えると思って行ったら、絶対に死亡する。間違ってはいけない。これはデスゲームであり、俺達は決して
「クエストは別の所でも受けられるの?」
「ええ、もちろんですよ、アーサー王」
「アーサー王じゃない。かなで」
「かなでさんですね。さて、他に質問は?」
「拠点が欲しいんだが……」
「それでしたら、購入するか、ダンジョンを攻略するかですよ」
「ダンジョンを?」
「ええ。ここだと一番近いのはアインツベルンのダンジョンですね」
アインツベルン……つまり、城か。確か、郊外にあったよな。というか、そこのボスって下手したらギリシャの大英雄様じゃないですかね? 12回くらい殺さないといけない。いや、もしくは……そう考えながらかなでをちらりと見ると、彼女は不思議そうに小首を傾げる。
「あそこは今、誰も住んでいませんから……攻略すれば貴方達の物に出来ます」
「クエスト発行場所を教えてくれないか?」
「……それは……まあ、いいでしょう。街中で生活している人達なら困っている事があれば、お金などで依頼してくれますよ。つまり、商店街や教会とかですね」
「それはつまり、住民でも構わないという事か」
「そうです」
「わかった。ありがとう」
「では、またのお越しをお待ちしていますね」
「暇なの?」
「ええ、暇ですね。あまり来ませんし、身の程知らずしかおりませんから」
「じゃあ、また会いに来ますね」
「いいのですか?」
「一人は寂しいですから」
「だね~おかーさん、いいよね?」
「そうだな」
二人は優しいな。あっ、そうだ。どうせなら、BBに聞いておくか。
「ログアウトすると、二人が人形に戻るみたいなんだが……どうにか出来ないか? 具体的にはここで預かって貰えるとか……」
「魔力切れの問題でしょう。そうですね、話し相手になってくれるようなら、いいでしょう。あまり、おいたをするならお仕置きしますけどね」
「し、しないもん!」
「そ、そうですよ!」
「なら、問題ありませんよ」
「ありがとう。それとこれはお礼だ」
リュックサックから食料を取り出して、缶詰を渡す。
「おや、缶詰ですか。なつかしいですね。来訪者は他世界から来ているのでしたね。でしたら、クエストを発行します。甘味類を持って来てください」
「わかった」
「報酬は聞かないのですか?」
「むしろ、二人を預かって貰うのなら要らないさ」
「では、それで行きましょう。っと、次の客が来たようですね。貴方達はもうお帰りください」
「またね~」
「また来ます」
「さようなら」
視界が入れ替わり、次の瞬間には住宅街のとある大きな屋敷の中に居た。
「ここは?」
「どうやら、飛ばされたようだな」
「ふえ~凄いね!」
「キャスターさんですからね」
周りを見ていると、屋敷の扉が開いて和服姿の美少女が出て来た。綺麗な長い黒髪に黒い生地に城と紫の花。それに紫の帯をしている。
「あの、お客様ですか?」
彼女は衛宮美遊。フェイトのプリズマ☆イリヤのイリヤのライバルキャラにして、その親友だ。
「えっとね、飛ばされたの!」
「すいません、BBさんにここに飛ばされました」
「ああ、あの人ですね。貴方達もお兄ちゃんを狙っているのですか?」
「違う」
「依頼は受けてない」
「なら、良かったです」
言葉とは裏腹に、やはり警戒しているようだ。そんな時、彼女の後ろからオレンジ色の髪の毛をした青年が出て来た。
「美遊、とりあえず入って貰いなさい。お茶でも飲みながら話そうじゃないか」
「でも……」
「大丈夫さ。それに美遊には同じくらいの友達が居た方がいいからな」
「わかりました……」
「どうぞ」
二人に案内されて、リビングでお茶を御馳走して貰いながら、BBの事やあちらの世界に戻らないといけない時の事などを説明していく。その間、子供達は遊んでいる。かなではこちらに居るが。彼女は子供ではないからな。
「桜が世話をすると言ったのなら、大丈夫だろう。だが、美遊とも遊んでやってくれ。代わりと言っては何だが、蔵を貸そう」
「いいのか?」
「女の子達が野宿しないといけないのは可哀想だからな。それにもちろん、無料じゃない。しっかりと働いて貰うさ」
「何をすればいいの?」
「買い物や食料確保だ。何故か、BB関係以外にも来訪者に俺は狙われていてな。俺と美遊はここから出られないんだ。今までは俺が無理して出ていたが、君達が買い物をしてきてくれるのなら助かるんだ」
衛宮士郎は有名だからな。それに80ポイントはかなり多い。
「わかった。かなでもいいよな?」
聞いてみると、しっかりと頷いてくれた。
「助かるよ。しかし、来訪者とは凄いな」
「何がだ?」
「いや、君の魔術回路の数がだよ。170本もあるじゃないか」
「そうなのか……」
170という事は、魔力10で1本なのだろうな。つまり、俺はシエルに届きうるという事か。他が全然だから、たいした事はないだろうが。逆に言うと、それぐらい魔力を生み出さないとサーヴァントを維持できないって事だよな。召喚コストは払って貰って、維持コストだけ支払っているんだから。とんでもないな、サーヴァント。納得だけど。
「私は?」
「君はちょっとわからないな。というか、インストールしているのかな? サーヴァントみたいだ」
「私は同調している」
「デミサーヴァントといった感じだろう」
「デミサーヴァント……聞かないな」
「人間とサーヴァントの両方の存在だ」
「なるほど。インストールした状態と同じか」
確かにデミサーヴァントって、常にインストールしているような存在だな。って、美遊の兄である衛宮士郎が居るんだ。だったら、頼もう。
「すまないが、俺とかなでに魔術を教えてくれないか? 俺は召喚魔術くらいしか出来ない」
「私は剣技を教えて欲しい」
「いいぞ。しかし、かなでの場合は中に居る英霊に聞けばいいのではないか?」
「もちろん、聞く。でも、戦闘経験も積まないといけない」
「まあ、模擬戦の相手くらいならいけるか」
「ジャック達も本調子じゃないからな。それに身体も鍛えないといけない」
「カードの力だけに頼るのはよくないからな。だが、厳しくいくから、覚悟しろよ」
「ああ、よろしく」
「お願い」
「任せてくれ」
俺達は握手を交わす。手に入れた力に頼り切るのではなく、使いこなせるようにならないとな。
魔術回路
シエルさんが三桁。
橙子さんが20ほど
士郎が27
荒耶が30
凛が70(メイン40でサブが30)
一般人のステータスはALL1