XXXX年
俺の名前は桜坂幸田。バイトが終わって給料を貰った俺は、現在ネットサーフィンで見つけたFateシリーズのアプリゲームをダウンロードした。そのアプリの名前はFate/VRという有り得ない代物だ。ダウンロードは有料で、登録に一万円もかかる。
彼女も居ない、独り暮らしの俺はクリスマスのバイトで臨時収入を得たので、参加する事にしたのだ。そう、イチャイチャしているむかつくリア充共に貯められた恨みを晴らす為に。あと、何故か人数制限のあるアプリだったので、とりあえずやってみた。どうせ、グランドオーダーで諭吉ちゃんは直に飛んで行くのだから。
ダウンロードが完了し、アプリを機動してみる。どうせ、VRMMOなんて謳っていても、そんな訳なんてないんだ。
【新たなマスターよ、我が世界にようこそ。最初に注意事項がある。このゲームは聖杯戦争である。故に参加すれば死ぬ可能性がある。それを了承した者だけ、進むがよい】
画面に映し出された麻婆神父がそんな事を言って来る。どうせ、フリだろうから、同意するのボタンを押す。
【そうか。では、これより君のタイプを決めよう。基本的には一度だけだ。しかし、神は寄付をするのならばチャンスを与えてくれるだろう】
課金しろって事ですかい。まあ、そうだよな。
【さて、マスターが選べるタイプだが、戦士タイプと魔術師タイプがある。具体例を挙げると戦士は私や衛宮のような者達だ。魔術師は遠坂や間桐の連中だ】
選ぶのは決まっている。魔術師タイプだ。今までのゲームではも基本的に魔術とかを選んでいるし、なによりFateといえば魔術師だろう。
【魔術師タイプだな。では、次に戦う手段を教えよう。攻撃魔術と支援魔術。君はどちらを選ぶ?】
支援魔術一択。攻撃魔術も憧れるが、そんな物は英霊たるサーヴァントには効果がないだろうしな。例外は当然、居るだろうが。
【ふむ。純粋なマスタータイプか。では、相性の良いクラスを決めよう。クラスにはセイバー、アーチャー、ランサー、ライダー、キャスター、バーサーカー、アサシン、エクストラがある。君はどのクラスが好きだね?】
「エクストラで」
ジャンヌ・ダルク・オルタが一番好きだ。ジャンヌも好きだな。後はジャックも好きだ。
【エクストラクラスだな。では、次に得意な魔術を決めよう。支援魔術を選んだので、与えられる魔術は回復魔術のヒール、強化魔術のブースト、ランダムだ。前にも言った通り、ランダムでは寄付をする事で振り直しも出来る。ランダムの場合は様々なスキルを得られるだろう】
これはランダムだな。選択すると、次の画面が移り出した。攻撃魔術初級だった。これは要らない。だから、寄付を選択する。
【寄付をするのだな。寄付は千円、一万、十万とある。それぞれ、最低限のレア度が決まっている。一万は星4で、十万は星5が必ず出る】
取り敢えず、千円は一回。一万は十回。十万は百回だった。取り敢えず、一万だけ突っ込んでみる。
【では、ガチャを回すと言い】
「ガチャって言いきりやがった!」
ボタンを押すと、召喚の演出が行われる。星1初級攻撃魔術、星1初級回復魔術、星3ルーの光輪、星3愛の霊薬、星3雷光のトナカイ……などなど。そして、最後の一回は星4確定だ。光り輝く魔法陣から出たのは星5だった。その名は召喚魔術だった。当然、召喚魔術を選択する。愛の霊薬を作るのも気になるが、こっちだろう。
【召喚魔術を習得した。残りのカードはこの場において、使えぬのでステータスポイントに変換する。点数は星の数だ。故に汝は21点とする。初期のを合わせ、22点だ。では、次にクラスカードを呼び出して貰う】
「クラスカードって、プリズマイリヤかよ」
クラスカードは各サーヴァントの姿が描かれたカード。きわめて高度な魔術理論で編み上げられたもので、悪用すれば町一つ滅ぼせるほどの力を持つと言われている代物だったはずだ。
【基本的な戦闘方法は
これは
【次に汝のステータスを決める。初期にステータスポイントを5点与える。自由に割り振るがいい。後で振る事も可能だ】
表示されたのは筋力、耐久、敏捷、魔力、幸運だった。まんまサーヴァントの宝具無しのステータスだった。初期値はオール1だった。マスターのステータスはアルファベットではないようだ。それよりも名前が問題だ。
マスター:桜坂幸田
筋力:1
耐久:1
敏捷:1
魔力:1
幸運:1
SP:27
スキル:召喚魔術(D)
名前が本名という事は、スマホから抜かれているという事だ。今更ながら、怖くなってきた。だが、既に一万も使っているんだから、終わるまでいってみよう。
【では、次は戦闘指南だ。場所を移す】
その言葉と同時にスマホが光り、次の瞬間には全く知らない雪が降る森の中にある祭壇のような場所に居た。その祭壇の上には神父服の男性と、四体の人形がある。そんな事よりも、頬に感じる風や虫や鳥の潺など、どう考えても現実のような感じだ。
「まじでVRなのかよ……」
「ようこそ、新たなるマスター桜坂幸田よ。君にはこの二体を倒して貰おう。心して聞くがいい。さもなければ、そこに転がる不適合者達のようになってしまうのでな」
麻婆神父こと言峰綺礼の言葉に従って、よくよく見れば、回りには沢山の壊れた人形と
「まさか、死んでるのか? ひょっとして現実でも……」
「そうだ。最初に警告したはずだ。ここまで進んだ君達には命を賭けたゲームを行って貰う」
「うっ、嘘だろう……」
「契約書には同意している。もはや、戻る事はできん。何時までも惚けていないで、話を進める。心して聞くが良い」
「っ⁉」
急いで麻婆神父の言葉に集中する。彼の背後では二体の人形が立ち上がっている。それぞれ、剣と槍を持っている。
「本来なら、インクルードや攻撃魔術を教えるのだが……汝の場合は召喚魔術だったな。特別にその人形を依代にするがいい」
「あ、ありがとうございます」
「うむ。教えを請うのだから、それ相応の対応をするといい。さて、まずはクラスカードを呼び出す事から始めよう。これもガチャだ。代金も確定レア度も先程と同じ。ただし、十万の方は二枚までここより持ち出す事が出来る。残りは先程と同じだ」
つまり、十万を選んだ方が得という事か。二枚まで召喚できるという事だからな。いや、待てよ。これがフェイトと同じならサーヴァントを呼び出し、顕現を維持する魔力はどうなるんだ?
「質問があります」
「なんだ? 戦闘に関係のある事だけは答えてやる」
「サーヴァントを現界させる魔力はどうなりますか?」
「基本的に汝が支払う。呼び出す時のコストは我々が持つ。つまり、購入費は出すので、維持費は自分で支払いたまえ」
これは魔力特化にするしかないな。
「サーヴァントの維持に掛かるコストはどれくらいですか?」
「ふむ。一体に付き100だ」
「出鱈目なっ!」
「英霊だからな。能力を下げての限定召喚であるが故に、100から可能だ。基礎の半分で1000は要る」
「つまり、召喚するサーヴァントのステータスで俺の生存確率は変わるという事ですね?」
「うむ」
これは貯金も叩くべきだな。祖父母から生前贈与で100万を貰っている。それを使えば魔力をどうにか出来るだろうし、いいのが引けるだろう。
「では、交渉です。10万までしかないので、100万だします。なので、サービスをくれませんか?」
「ふむ。いいだろう。では、一体だけ、私が選んだ特別な者を与えよう。それと持ち出すカードは三枚でいい」
「ありがとうございます」
「では、振り込んでくれたまえ」
「はい」
流石に額が大きいので、振り込みになるがネットからいけるので助かる。100万を振り込むと1000枚のカードを引く事になる。
「1000枚は流石に面倒だ。一気にいくぞ」
「そうですね。上位のカードだけでいいです。後はポイントで」
「心得た」
1000枚ものクラスカードを引いた結果。星5が二枚。星4が八九枚星3が三五六枚。星2が二五四枚。星1が二九九枚だった。
「なんだこれ! なんだこれ!」
「うむ……気を落とす出ない。これを食べるといい」
「くっ……ありがとうございます」
貰ったパンを涙を流しながら、かぶりつく。その瞬間。口の中に広がる激辛の麻婆。
「からぁああああああああああああああぁぁぁぁっ!!」
「残すのは許さん」
忘れていた。麻婆神父が渡す食べ物は全て超激辛麻婆が入っているという事を!
「さて、どのクラスカードを選ぶのだ?」
「もちろん、星5二枚からだな……何が出たのか……」
「それは召喚してからのお楽しみとすべきであろう。ではこの人形二体を依代に召喚をするといい」
「そのまえに魔力に振ります」
「うむ。麻婆を完食した褒美に教えてやる。スキルを上げるのにもポイントが必要だ」
要らないカードを全て出して2231ポイントをゲット。27ポイントを合わせて、2258ポイント。全てを魔力に振り分ける。といいたいが、59ポイントを耐久に、500ポイントをスキルに振っておく。これで耐久が60で魔力が1700となった。召喚魔術はDからCへと上昇した。
マスター:桜坂幸田
筋力:1
耐久:60
敏捷:1
魔力:1700
幸運:1
SP:0
スキル:召喚魔術(C)
「では、いよいよ召喚だ。それだけの魔力があれば問題無く召喚できるだろう。召喚魔術がCなので、二体まで召喚できる」
「あぶねぇ……」
「では、儀式を始める。ふむ……この二枚か。ならばこちらがいいか。ああ、特別なサーヴァントを与えるのであった。この二枚からどちらかを選ぶがいい」
どちらも表示はわからないが、俺は直感に従って右を選んだ。
「では、二体にクラスカードを投入して願え」
「フェイトなら、やっぱりこれだろう」
俺は一枚は星5から。もう一枚は貰ったカードにする。
「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。
降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」
有名な詠唱を行う。すると、俺の中から膨大な魔力っぽい物が噴き出てくる。
「
繰り返すつどに五度。
ただ、満たされる刻を破却する」
クラスカードが二体の人形に吸い込まれ、光に包まれていく。
「―――
俺の
「―――告げる。
汝の身は我が元に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄る辺に従い、この意、この理に従うならば応えよ」
求めるのはただ一つ。嫁である。ロリっ娘であるならばなおよし。
「誓いを此処に。
我は常世総ての善となる者、
我は常世総ての悪を敷く者」
沖田さんでも、アルトリアでもいい!
「汝三大の言霊を纏う七天、
抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」
詠唱が終わり。二体の人形の姿は光の中で小さくなった。そして、光が収まるとそこには――
「アサシン。ジャック・ザ・リッパー。わたしたちをよろしく、おかあさん」
銀髪で黒い外套を着た身長134cmの小さな女の子。属性は混沌・悪。それに特技は解体という殺人鬼の危険な幼女。そして、もう一人も銀髪幼女であり、リボンと鐘をつけた露出過多な幼女。
「……私はジャンヌ・ダルク・オルタ・さんたりぃっ……痛いかんだぁ……」
「頑張って」
「じゃんにゅ……あうっ……サンタ・リリィ……聖夜に一人、かわいそうなぼっちのましゅたぁーを虐めるためにぃぃっ……」
諦めた。涙目になっている邪ンヌ・リリィことオルタちゃんと励ましているジャック。俺は二人の頭に手を置いて撫でてみる。
「わわっ」
「撫でるりゅなっ! ま、マスターだからって、気安くさわりゅなっ!」
「悪い。ジャックも嫌か?」
「ううん。わたしたちはもっと撫でて欲しい」
「そうかじゃあ……」
ジャックを集中して撫でていると、蹴られた。
「ちょっとっ、誰が撫でるのを止めていいっていったのよ……」
「にやにや」
「笑うなっ!」
「その辺でいいかね?」
「あ、ごめんなさい」
「ちょっと、埼礼。なんでアイツじゃないのよ」
「ふむ。彼がロリコンだからであろう。もう片方はアルトリアのオルタだったのだ」
「変態」
「おかーさん、変態なの?」
「違うよ、多分。それとおかーさんじゃなくて、おとーさんで頼む。俺は男だからな」
「なら、切り取っちゃえばいいの?」
「勘弁してくれ」
「どうでもいいけど、そろそろ怒り出すんじゃないかしら?」
神父の方をみると、祭壇から出ていた。
「では、戦闘を始める。殺レ」
人形二体が襲い掛かってくる。それに対して、槍を持っているオルタちゃんと短剣を構えるジャック。俺はステータスを見てみる。すると、魔力が残り100になっている。二人はそれぞれ800ずつ消費して呼び出しているようだ。
「言峰先生。俺もインクルードって使えますか?」
「使える。それだけの魔力があればインストールも使えるのではないか? 最低100必要だからな」
「なるほど。じゃあ、やるか」
残りの星5のカード。絵柄はアーチャーだ。
「―――告げる! 汝の身は我に! 汝の剣は我が手に!」
残りの魔力を使って変身する。
「聖杯の寄るベに従い
この意この理に従うならば応えよ!
誓いを此処に!
我は常世総ての善と成る者!
我は常世総ての悪を敷く者――!」
身体が変化していく。
「汝 三大の言霊を
纏う七天!
抑止の輪より来たれ 天秤の守り手――!」
最後の言葉を紡ぐ。
「夢幻召喚インストール!!!」
次の瞬間。身体は英霊と同化して作り変えられ、髪の毛が伸びて赤く変化し、
「やっぱりおかーさんだ!」
慌てて股間に手をやる。
「なくなってやがるだと!」
「ばかばっか」
襲い掛かる人形を蹴り飛ばしながら答える二人。どうやら、余裕のようだ。だが、俺は余裕じゃない。何せ、性転換してしまっているのだから。なにこれ、魔法少女はじめましたてきな? もしくは、俺、ツインテールになります? いや、同じ赤い髪の毛だけど、こっちは英霊なんだよな。それも、あの可哀想な人だ。こんな事を考えていると、二人に人形が瞬殺された。
ジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィは愛称、オルタちゃんでいいのかな?
主人公が変化したカードは分かるかな~? ちなみに未実装だよ! ヒントは○○○