私の旦那さん   作:あんじ

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12月2日のワンドロの作品です。お題は「高町なのは」と「フェイト・テスタロッサ」でした。


私の思い出

「フェイトちゃん、今日は何の日か知ってる?」

「えっ…?」

 

突然の質問にフェイトちゃんは固まる。そして、慌てて色々と考え始めるが出てこない。というか、見たところ今日が何日か把握すらしてなさそうだった。なのでわざとおよよと泣き崩れてみる。

 

「な、なのは!?え、えぇと、今日は何の日なの?」

「今日は12月2日だよ…」

 

それを聞くと、カレンダーを確認して、テレビを付けて日時を確実にすると床に座っている私と頭の高さを同じにして、わざとらしく演技を始めた。

 

「ごめんよ、なのは。君に辛い思いをさせてしまった」

「フェイトちゃん、何か変だよ」

「ひどい!?」

 

という冗談は置いておき、フェイトちゃんが理解してくれたようなので提案をする。

 

「今日は休みだったよね。夜、ご飯に行かない?」

「良いけど、ヴィヴィは?」

「はやてちゃんがね、お友達とか呼んでそこにヴィヴィオも招待されてるんだって。だから大丈夫みたいだよ」

 

フェイトちゃんは、安心したのか胸を撫で下ろす。すると次はまた何かを考え始める。今回は先程のとは違いかなり長い間考え、熟考に熟考を重ねているのが分かる。何かの結論を出すのは5分ほど時間が経った頃だった。

 

「私、少し用が出来たから出掛けるね。お昼までには帰ってくる」

「ちょ、フェイトちゃん待ってよ」

「だーめ、なのはは着いてきちゃダメだからね」

 

出掛けようとするフェイトちゃんを、追いかけるために準備を始めた私を軽々とお姫様抱っこする。そのままソファに寝かせて、テレビを付けて毛布をかけてくれる。

 

「ゆっくりしてて。悪いことしてくるわけじゃないから安心して」

「ズルいよ、フェイトちゃん。そこまで言われたら動けないじゃん」

「お楽しみは分からないからお楽しみなんだよ」

 

そう言って颯爽と出掛け行った。

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

「ドレスコードなんて久しぶりだなぁ」

「オークションの時以来?」

「多分そうかな…?それにしてもフェイトちゃんのドレスコードなんてなかなか見れないから嬉しいな」

 

家の前に呼び出されていたタクシーに乗らされ、フェイトちゃんが連れてきてくれたのは高級レストランだった。完全なコースメニューしかない、予約限定のお店だ。

 

「予約してるなんて聞いてなかったよ?」

「だって今日予約したんだもん。ギリギリ1席相手から良かったよ」

「それにこのドレス、やっぱり高いよね?」

 

お昼出掛けたと思ったフェイトちゃんはお昼前にちゃんと帰ってきてくれた。そして彼女の手にはしっかりとした布に包まれた服を持っていた。それは薄いピンクを基調としたしっかりとしたドレスだった。

 

「大丈夫だよ。私のお給料の無理のない範囲で買ったから」

「にゃははは、そういう問題じゃないんだけどね」

 

婚姻届をまだ提出していないのだが一応私達は結婚している。結婚式は挙げてはいない。結婚をしているのだ。財産は共有なものな筈なのだが、どうやら彼女は分かってそうには無かった。

 

「もう10年以上も前なんだよね、私が戻ってきたのは」

「そうだね。私はまだ昨日みたいな感覚だけどね」

「私も、同じ感じ」

 

運ばれてくるコースメニューを食べながらゆったりとした時間を過ごす。もう10以上も前の事なのにまるで昨日のように思い出せる出来事。あの事件から帰還を果たした親友との再開の日。忘れることの無い、できない日だ。フェイトちゃんのように日にちを把握できてない場合もあるけど。

 

「ねぇ、私の旦那さん。それでお楽しみってなに?」

 

昼前に帰ってきたフェイトちゃんは、お楽しみはまだあると言っていた。それは食べ終わってからと聞かされていたので、触れずにいたがもう最後のメニューは出てきている。

 

「それじゃあ、サプライズだね。これ、受け取って」

 

渡されたのはピアスだった。ハートを半分で割った形だ。二対のタイプのようで、もう片方があるはずなのだがケースの中には見当たらなかった。

 

「これ、もう片方は?」

「ここだよ」

 

フェイトちゃんは自分の髪で隠れてた耳を見せてくれる。右耳には私に渡されたものの対のものだった。

普通はお互いがくっつく側で付けるようにしたり、1人で挟むようにしたりするものだが、私とフェイトちゃんのは2人を挟むように付けるようになっていた。

 

「これはね、私となのはとヴィヴィオ、それに皆を包むようにって想いの形なんだ」

「フェイトちゃん…」

「これでも旦那さんだからね。皆を包み込むくらいの懐がないと」

 

そう言って堂々と胸を張った。私だけじゃなく皆を包んでくれる大きな懐は暖かく包み込めるだけの大きさも備えていた。

 

「早く、結婚式挙げようね」

「うん、私もお仕事頑張るよ。だからなのはも頑張ってね」

「頑張るよ。フェイトちゃんとヴィヴィオの分も!」

 

2人で過ごしたゆっくりな時間はゆっくりとだけど速く流れていった。




2人が再会を果たした記念の日という事でなのフェイを書かせていただきました。時系列的には前回の続きです。2人の愛を確かめるお話にしようというコンセプトで作りました。

次回…何か結婚式に関わるようなお題が出れば書きたいと思っています。
他のワンドロ用の短編だったりを書いているので良かった読んでいただけると嬉しいです。

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