後片付けや水中人の女首領マーカスとの打ち合わせとかを終えて寮に帰ると、談話室ではハリーのお祝いパーティが行われようとしているところだった。
「おう、お帰り、リアス!」
「今回出番なかったけどなー」
「いやいや、出番あったら大変なことになってるからな?そこんところちゃんとわかってるよなフレッジョ」
「「わかってるさ、リー!」」
相変わらずのフレッジョを尻目に、机の上に乗せられている金の卵を見る。マーカスたちが込めた音までは知らないけれど、多分、開けたら、普通の人にはすごくうるさく聞こえるはず。
「よーし、ハリー!卵開けろよ!」
「おお、そうだな。中身はなんだ?」
「ちょっと、二人とも!ハリーは一人でヒントを見つけることになってるのよ。試合のルールでそう決まってるのよ?」
フレッジョとハーマイオニーが卵のことで言い争う。私は中立。なるようになれ。だって、卵を開けようと開けないでいようと、何も教えるつもりはないからね。
結局、卵は開けられることになった。
「それじゃ、開けるよ」
ハリーが卵の周りについてる溝に爪を立ててこじ開ける。その中身は空っぽだったけど──代わりに、大きなキーキー声が──聴こえる人にとってはとても綺麗な歌声が──部屋中に響き渡った。
『捜しにおいで 声を頼りに
地上じゃ歌は 歌えない
探しながらも 考えよう
我らが捕らえ──』
「それを黙らせろ!」
バチンと音がして、卵が閉じられる。残念、もうちょっと聞きたかったのに。
閉じられたから最初に口を開いたのは、シェーマス・フィネガンだった。
「今のは何だ?バンシー妖怪の声みたいだったけど……」
「だ、誰かが拷問を受けてる声に聞こえた!」
「いやいや、あれはパーシーの歌声だぜ。それも、風呂の時に歌ってる声にな」
「そうだな。奴がシャワーを浴びてる時に襲わないといけないんじゃないか?」
シェーマスに続いて、ネビルとジョージ、フレッドが思い思いの意見を口にする。そして、一通り話終わったところで案の定あたしの方に目を向けた。
「そうだ、リアスはこの声について知ってるよな?こっそりと教えてくれないか?ハリーやハーマイオニー、ロニーには絶対に教えないからさ」
ジョージの問いに、あたしは首を横に振ることで答える。
「そうかい。そりゃ残念」
フレッドがヘラリと笑う。そのタイミングで、クリームサンド・ビスケットを食べてたネビルが大きなカナリアに変身した。
「おっと、忠告するのを忘れてた。それじゃ、また明日」
あたしは一人奥へと進み、フレッジョが発明したカナリア・クリームの宣伝を聞きながら寮室へと戻った。ダンスパーティの相手を誰にするかを頭から締め出して。