ハリー・ポッターと魔法生物の王   作:零崎妖識

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魅力的な魔法生物案があったので、それに関する幕間。ヴィーラなどのように人に近い姿をした生物で、なんとキャラクター案まで!他の人もキャラクター案がある時がありますが、少々お待ちくださいませ。不死鳥編あたりからは出せると思いますので。とりあえず、夢幻月さん、面白そうな子をありがとうございます!

もしかしたら、活かしきれてないかも……。
あ、調べたらセブンスドラゴンのキャラだったんですね、イクラクン。セブンスドラゴンはそこまでプレイしてませんし、イクラクンのキャラは多分原作とは違っていますので、その辺りはご遠慮くださいませ。


幕間──双子の姉妹とエリザベート

イギリス南部、薄暗い森の中。人がほとんど立ち入らないような静寂の森を、二つの人影が駆けていた。その後方百メートルほどのところにも、数人の人影。後者は鉄の仮面を被っている。

 

「くっ……あんなのがまだ居るとは思ってませんでした……ごめんなさい、ムルムル。(せつ)の失態です」

 

「いや、ボクがうっかり偽装を解いちゃったから……お姉ちゃんの探してた薬草も見つからなかったし、踏んだり蹴ったりだよ」

 

前を走る少女たちはとても似通っていた。おそらく双子なのだろう。先に喋った方がモコモコの短髪でスカイブルーの宝石の首飾りを、後の方がサラサラの長髪でマリンブルーの宝石の首飾りをしていた。ちなみに、二人とも白髪(はくはつ)で青い目をしている。しかし、彼女たちの体で最も注意を向けるべきはそこではない。彼女たちの頭には狐のような耳が生えていた。

 

「拙たち──ルシェという種族はあまり人前には出ませんから、あんなのに狙われやすくなるんでしょうね。さて、もし捕まったらどうなることやら」

 

「ちょっ、お姉ちゃん、そんなネガティヴ思考辞めて!?」

 

 

「おい、こっちだ!〈麻痺せよ(ステューピファイ)〉!」

 

「っ!避けて!」

 

「ひゃう!」

 

姉妹の間を紅い光線が貫く。追手たち──死喰い人(デス・イーター)の残党に見つかったのだ。

 

「〈妨害せよ(インペディメンタ)〉!」

 

死喰い人の一人が放った呪文が姉と呼ばれた方──イクラクンという──に直撃し、転ばせる。慌てて彼女は立ち上がろうとするが、上手くいかない。

 

「お姉ちゃん!」

 

「拙のことは置いて早く逃げてください、ムルムル!」

 

必死に姉を助けようとする妹。しかし、死喰い人たちはすぐそこまで迫っていた。

 

「解呪……なんとかしないと……!」

 

「逃げられるとでもぉ?」

 

真上から聞こえる声。ムルムルが顔を上げると、そこには鉄の髑髏面があった。姉を抱き抱え後ずさるムルムル。死喰い人はじわじわと差を詰めていく。

 

「ルシェはアメリカとか闇市場(ブラック・マーケット)で高く売れるしなぁ。ひっさびさに知り合いと集まったらこんな儲けがあるとは!」

 

「お姉ちゃんはボクが守る!〈撃て(フリペンド)〉!」

 

ムルムルの手に魔力が集まり、一番手前の死喰い人の腹にぶつかる。姉の魔力も混ぜたのだろうか、五メートルは離れた木の幹に死喰い人は激突した。

 

「てめぇ!」

 

「よくもアンドラスを!」

 

残りの死喰い人四人が一斉に杖を二人へ向けた。姉妹は身を寄せ合い、 目を固く瞑った。……が、しばらく経っても、呪文が放たれた気配がしない。恐る恐る目を開けた二人の前には、重なって倒れた死喰い人とその上に座る女性がいた。

 

「どうもー。無事かしら?」

 

ニッコリと笑って気軽に挨拶する女性。ムルムルはホッとしていたが、イクラクンはまだ警戒を解いてはいなかった。

 

「……誰です?拙たちを助けてくれたことにはお礼を言わせていただきますが、無償で死喰い人たちを倒してくれるとは思えないです。拙たちに、何を要求する気ですか」

 

「お姉ちゃん、この人はボクらを助けてくれたんだよ?」

 

「ムルムル、物事の裏には何かしらの思惑が付きまとうものです。この女性には、拙たちを助ける理由もメリットもない。あるとすれば、拙たちの身柄だけです」

 

ムルムルを守るように立つイクラクン。だが、女性はニコニコしてるだけで何もしない──いや、死喰い人たちを亀甲縛りで木に吊るす作業はしていた。

 

「私はただ見かけたから助けただけだし、こいつらを捕まえる目的もあったからなんだけど……それじゃ納得はしてくれないわよね?」

 

「勿論です」

 

「うーん……なら、私たちの家に来ない?私はエリザベート・クリミア。魔法省神秘部所属のホグワーツレイブンクロー寮出身。家にはメイドもいるんだけど、彼女だと使用人って感じだから、娘の友達になってくれる人が欲しかったの」

 

「……娘さん、ボッチなの?」

 

「いや、まったく?ペット大好きだし、ホグワーツにも友人はたくさん居るわよ?でも、家の近くには他人の家がほとんどないから、夏休み中会える友達が居ないのよ。それに……あなたたちも宿が欲しいでしょう?」

 

イクラクンとムルムルは確かに宿無しである。この日の朝に宿をチェックアウトし、この日は森で野宿の予定で、親も似たような生活だったために定住できる家も無い。

 

「だから、私たちと家族にならない?見た所研究者っぽいし、研究用の部屋とかもあげれるけど?」

 

「……それは」

 

「あ、いきなり追い出したりとかはしないから。一度受け入れた以上、私は責任を持ってあなたたちの面倒を見る。研究とかを手伝ってもらったり、剣を打ってもらうこともあるかもしれないけど」

 

「……どうするの、お姉ちゃん」

 

「拙は、ムルムルと一緒に居られるのなら何処でも良いです」

 

「ボクもだよ。てことで、お世話になります!双子の妹、ムルムルでーす!」

 

「……妹が奔放で済みません。拙は姉のイクラクンです。よろしくお願いします」

 

「はい、よろしくね。空き部屋の片付けはサクヤちゃんにお願いして、私たちは夕食でも作りましょうか」

 

森を抜ける三人と、放置されその後闇祓いに回収される死喰い人。だが、死喰い人たちはここで捕まって正解だったかもしれない。

この森はクリミア家のすぐそばの森。通称、迷いの森。この森の奥ではバジリスクやヌンドゥが闊歩し、自らを狩ろうとする、もしくはクリミア家に手を出そうとする人間たちをいつのまにか狩っている。おそらく、死喰い人たちが彼らに出会ってしまったのなら、朝を迎えることはできなかっただろう。




ルシェ
M.O.M.分類XXXX
男性はエルフのような長い耳、女性は頭の上に狐耳な種族。魔力を持ち、杖なしで魔法を扱うこともできる。ただし、触媒がない場合は見た目の偽装や〈撃て(フリペンド)〉など、大雑把な魔力コントロールでなんとかなる魔法しか使えない。
石の声を聞くことができ、鍛造に秀でている。武器としては最上級の剣を打つ。だが、某騎士王の聖剣(エクスカリバー)などの神造・星造兵器には劣る。
遥か昔に栄えた古代帝国の一族。古代帝国は真竜と呼ばれる存在により滅ぼされる。
稀に強い魔力を持つルシェが生まれることがあるが、ほぼ全てのルシェが姿を偽装し人間に紛れて暮らしている。

この作品上では真竜は古龍(エンシェント・ドラゴン)の一部と扱われる。


イクラクン
双子の姉。
ムルムル
双子の妹。

ルシェ族の少女たち。薬草採取のために入った森(迷いの森)で死喰い人たちに追われることに。リアスの家族兼友人兼ペット枠。ちなみに、リアスにとってはペット=家族。
二人とも容姿が似通い、髪の質感や長さ、ペンダントでしか、容姿での判別はできない。姉はモコモコの短髪でスカイブルーの宝玉のペンダント、妹はサラサラの長髪でマリンブルーのペンダント。二人とも白髪。しらがではない。
イクラクンの一人称は『拙』。魔法使いタイプの学者もしくは研究者。しっかり者。
ムルムルの一人称は『ボク』。学者もしくは研究者タイプの魔法使い。奔放。

種族、キャラ共に夢幻月さんのアイデアです。ありがとうございました!

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